日経BPは、このほど『できるリーダーが「1人のとき」にやっていること マネジメントの結果は「部下と接する前」に決まっている』(1,980円/大野栄一著)を発売した。本書は、優秀なリーダーが持つ力についてひも解き、リーダーシップの質を高める「1人の時間」の重要性や過ごし方のヒントについて解説した一冊である。

  • 『できるリーダーが「1人のとき」にやっていること マネジメントの結果は「部下と接する前」に決まっている』(1,980円/大野栄一著)

【喚起力】思考の主語を変える

◼︎「自分が」「私が」で考えているうちは、 リーダーとしては半人前

リーダーとして成長するためには、自己中心的な視点から、他者の視点に立つことが重要です。具体的には、思考や発言の主語を「私」から「私たち」や「お客様」へと変えることで、共感と信頼を築くことができます。

「私が」「自分が」と自己中心的な視点にとどまっている限り、他者を巻き込む力は生まれません。会議ひとつとっても同じです。「私が提案したいのは......」と「私が」で切り出すよりも、「私たちが提案したいのは......」と言い換えることで、チーム全体の意識を高めることができます。

また、自分の考えや意見をお客様の視点から捉えることで、より的確なサービスや 製品を提供できます。たとえば、「私はこのデザインが好きだ」ではなく、「お客様はこのデザインを好むだろう」と考える習慣が重要です。

◼︎主語が変われば視点が変わる

日常会話においても、自分視点ではなく、お客様や部下の視点に立つことが求められます。会議などの正式な場では注意を払うものの、何気ない場面では「私が」「俺が」と自己中心的になりがちです。

1人で考えごとをしているときも、思考の主語が自分になっていないかを見直すことが大切です。思考の主語を「私」から「私たち」や「お客様」に変える練習をすることで、自己中心的な考え方を手放すことができます。

たとえば、「私はどう感じるか?」ではなく、「お客様はどう感じるか?」と問いかけることで視点が変わります。

自己都合の考えは他者に響かず、感動を与えることはできません。他者の立場に立ち、相手を思いやることが共感を生み出し、リーダーシップを高めます。

主語を変える方法

⚫︎ 「私」を「私たち」に変える

自己中心的な視点にとどまると、対立や争いが生じやすくなります。しかし、個人の視点から組織全体の視点に切り替えることで、協調性と連帯感が強化され ます。たとえば、「私はこのプロジェクトを成功させたい」ではなく、「私たちはこのプロジェクトをを成功させたい」と表現します。

⚫︎ 「私」を「この存在」に変える

「私」を「この存在は」「この存在が」「この存在の」に意識的に置き換えてみると、自分と自分が切り離されて、俯瞰して自分を見るトレーニングになります。

たとえば、「私はどう感じるか?」を「この存在はどう感じるか?」に、「私はリーダーとして成長したい」を「この存在はリーダーとして成長したい」に、「私はチームの成功を願っています」を「この存在はチームの成功を願っています」に変更します。

◼︎優れたリーダーは、「あなたのため」とは言わない

優れたリーダーは、「あなたのため」とは言わず、どこまでも相手の立場にたつ姿勢を持っています。「あなたのため」という表現は、一見他者を思いやっているように見えますが、実際には自己都合が含まれていることがあります。

「私がこれだけやっているのに、どうしてあなたはわからないのか」という、相手への非難と自己中心的な感情が含まれています。また、「あなたのため」と考えている限り、「私が」という主語から逃れることはできません。

思考は無意識のうちに生じ、その多くは、自分自身を主語とした内なる独り言で構成されています。

たとえば、「なんだよー……」といったつぶやきも、自分を主語としたものです。自分自身との内的対話は、自己中心的な視点に偏りがちです。

リーダーとして成熟するには、自己中心的な視点から他者中心の視点への転換が必要です。 主語を意識的に変えることで、共感と信頼を築き、効果的なリーダーシップを発揮できます。日常生活の中で、ぜひ「主語の転換」を実践してください。

・喚起力を高めるための「1人時間」の使い方③
「私」「自分」「としていた主語を「私たち」に置き換えてみる。


書籍『できるリーダーが「1人のとき」にやっていること マネジメントの結果は「部下と接する前」に決まっている』(1,980円/大野栄一著)

  • 『できるリーダーが「1人のとき」にやっていること マネジメントの結果は「部下と接する前」に決まっている』(1,980円/大野栄一著)

同書ではほかにも、リーダーシップを高めるために必要な力や、部下へのアプローチ方法について紹介している。リーダーの在り方に悩んでいる方は、チェックしてみてはいかがだろう。

イラスト: 村林タカノブ