本件では客の男性が、初日は110円のおにぎり、翌日には358円のサンドイッチとお茶、その2日後には780円のお弁当とビールを1円玉で買おうとしており、だんだんと行動がエスカレートしています。

高齢の方の場合、小銭を別の財布で管理しており、小銭を払うのに時間がかかってしまい、周りを気にしてなかなか小銭を払えず、小銭が貯まってしまうといったことも考えられます。しかし、店側としては、すべて1円玉で払われると会計に非常に時間がかかり、業務に支障が出てきてしまいます。今回の男性の行動は何らかの罪に問われないのでしょうか?

「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」は「同じ貨幣で20枚を超えて支払う人」を処罰するものではありません。店側が受け入れたら、そういった支払いも有効になるのですから、大量の貨幣で支払いを提示しても犯罪にはなりません。よって本件でも客の男性が処罰されることは基本的にありません。

ただし以下のような場合には、大量の貨幣によって支払いをしようとした客が処罰される可能性があります。

脅迫、強要

1円玉で支払いをしようとして店側が拒絶したとき、客が店側に対し「いい度胸してるな、ただですむと思うなよ」などと脅迫したり「受け取らないなら店の悪評をネットにばらまくぞ」などと言って受け取りを強要したりしたら、刑法上の「脅迫罪」や「強要罪」が成立します。

名誉毀損

帰宅後、ネット上のサイトやSNSなどで「〇〇に行って支払いをしようとしたら拒絶された。客のことを考えていない最低な店だから、みんな絶対に行かないように」などと投稿するケースも考えられます。このような場合、店を不当に誹謗中傷するものとして「名誉毀損罪」が成立する可能性があります。

業務妨害

客が店にやってきてしつこく大量の1円玉による決済を求め、店側に受け取りを強要したり受け取りを拒否されたときに、騒いだりネットに誹謗中傷の投稿をしたりする行為は「業務妨害」にも該当しかねない行為です。

本件の場合、男性客はそこまで悪質ではないようですが、きちんと法律を示して断らなければ、今後も1円玉で支払おうとしてくる可能性がありますので、店側としては、他のお客さんの迷惑にならないようにきちんと断る必要があるでしょう。

まとめ

最近では「キャッシュレス決済」が普及しており、現金が使われる場面が減っています。しかしツイッターで話題になった高校生のように、嫌がらせや悪ふざけであえて1円玉で支払いをしようとする客もいます。店側は「21枚以上は拒絶できる」ことを知り、自己防衛に役立ててください。客側の方も、あまり非常識な支払いかたはしないようにしましょう。

※記事内で紹介しているストーリーはフィクションです

※写真と本文は関係ありません