「毎日のように怒ってしまう」「言うことを聞いてくれなくて困る」「夫(妻)と育児方針がかみ合わない」……などなど、育児に悩みは尽きません。特に、毎日忙しく過ごしている共働き夫婦なら尚更でしょう。

ここでは、育児中のマイナビニュース会員に"育児の悩み"についてアンケートを実施。寄せられたお悩みに対して"どのようにすべきか"を、NHKの育児番組でキャスターを務めた経験を持ち、現在は育児のセミナー講師や書籍執筆なども行っている天野ひかりさんに、アドバイスしてもらいます。

  • 子どもの「作り笑い」の対処法は?(写真:マイナビニュース)

    子どもの「作り笑い」の対処法は?


「子どもを認めて自己肯定感を育てましょう」とこの連載で繰り返しお伝えし、うれしいことに、みなさん「子どもを認める」ことを心がけてくださっているようです。しかし、一生懸命なお母さんほど「認める」ことが難しいと感じているように見受けられます。

先日あるお母さんから、「最近娘が苦手な犬に遭遇したときや、園庭で高いブロックに登らなければならない場面で、本当は怖くて泣きそうなのに、必死で笑顔を作って『泣かないで頑張った!』と言っていました。これまで私が『怖くないよ、泣かずに頑張って!』と言い聞かせ過ぎてしまって、無理をさせているのではないかと感じたんです」というお話を聞きました。

たしかに、"認めることば"は大切ですが、子どもに作り笑いをさせてしまっては親としては心苦しいですよね。

そこで今回は、「最近、作り笑顔をするようになった娘が気になるのですが、どのように認めたらいいのでしょうか」というご相談に親子コミュニケーションアドバイザーがお答えします。

子どもにとっての"認めることば"とは

過去の記事で、子どもの自己肯定感を育むために、親が指示したり禁止したりせずに、お子さんがしたいことをそのまま"認めることば"をかけましょうとお伝えしてきました。

今回のケースにおいて「認めること」とはなんでしょうか。このお母さんは、「泣かずに頑張ろうね」ということばかけはやめて、代わりに「泣いてもいいんだよ」と声をかけたそうです。

しかし、せっかくお子さんが「泣かずに頑張った!」と言っているのに、「泣いてもいいんだよ」ということばは、子どもにとって認められていると感じるでしょうか。

この場合は、「そうだね、泣かずに頑張ったね!」でいいのです。そう言われたお子さんは、認められたと感じます。

気をつけたいのは、「泣かずに頑張ったからお利口さんね」と、お母さんのジャッジが入ること。これは、そのまま認めることからずれており、お母さんにお利口さんと褒められたくて、これからも泣かずに頑張り続けて無理をしてしまう可能性があります。

同様に、「泣いてもいいんだよ」も、お母さんの判断が入っていると言えるでしょう。せっかく自分を奮い立たせて泣かずに頑張ったのに、泣いてもいいと言われてしまったら、お子さんも悲しい気持ちになりますね。

仮に思わず言ってしまったからといってあわてる必要はありませんし、場合によってはそれが救いのことばになる場合もあります。しかし、基本は親の価値観で良い悪いを判定せずに、お子さんの行動や言動を、そのまま認めることばをかけるだけでいいのです(命に関わるような絶対にしてはいけないことをした時は別です)。

そうすれば、その後もお子さんは、親の顔色を気にすることなく、無理をせず、思わず泣いてしまってできないことを素直に出せるように育っていくでしょう。その時も親は「泣いてしまったね」と言えばいいのです。親の価値観を押し付ける必要はありません。

親の価値観を押し付けないことが大切

認めることばをかけることで、子どもはその時々の自分に素直な行動をすることができるようになります。泣かないで頑張ることの気持ち良さも、泣いてできないことの悔しさも実感し、自分でどうすべきかを判断できるように育っていきます。これが、自分で考えて行動できるようになっていくことなのです。

親が、「無理しなくていいよ」とか「泣かずに頑張りなさい」とか「泣いてもいいよ」と言う指示する言葉は、一見子どもに寄り添っているように見えますが、そうではありません。実は、親自身がどうすべきかを考えて頭をフル稼働させているだけで、子どもが考えているわけではないのです。もったいないですね。

なんだか親にできることは何もなさそう……と思われたお父さんお母さん、そんなことはありません。上記で述べた「親の価値観を押し付けず、子どもの行動をことばにしていくこと=認めること」これが、親にできる一番大切なことなのです。

ある意味とてもシンプルなことですが、実はなかなか出来ている人が少ないので、是非挑戦してみてください。

親がお手本を見せ続ける

もうひとつ大切なのが、「子どもに伝えていきたいことは、親がお手本として見せていくこと」です。

今回のケースでいえば、お母さんもお父さんも、辛い時や悲しい時や怖い時、子どもの前で泣いてしまってもいいと思います。

たとえば、
ママ「あまりに○○が怖くて(不安で)涙が出たよ」
子「大丈夫?」
ママ「うん、大丈夫。怖かったから泣いちゃった! でも泣いたらスッキリするね!」

といったように、何かがあって泣いてしまっても最後には笑顔になることを見せれば、子どもも泣いてしまってもいいのだと見て学ぶことができます。

そして、その後親もくじけずに、さらに挑戦して乗り越えていく姿をお子さんに見せましょう。「乗り越えなさい!」「もう一度頑張りなさい!」といった、親から指示されてできる子よりも、自分で見て感じて考えてできる子になるからです。

決して一回でできるようにはなりません。日常生活の中で、こうしたコミュニケーションを続けていくことが大切です。