「毎日のように怒ってしまう」「言うことを聞いてくれなくて困る」「夫(妻)と育児方針がかみ合わない」……などなど、育児に悩みは尽きません。特に、毎日忙しく過ごしている共働き夫婦なら尚更でしょう。

ここでは、育児中のマイナビニュース会員に"育児の悩み"についてアンケートを実施。寄せられたお悩みに対して"どのようにすべきか"を、NHKの育児番組でキャスターを務めた経験を持ち、現在は育児のセミナー講師や書籍執筆なども行っている天野ひかりさんに、アドバイスしてもらいます。

  • 家族で過ごす時間が長くなりイライラ……どうすればいい?(写真:マイナビニュース)

    コロナで家族と過ごす時間が長くなりイライラ……どうすればいい?


コロナで自宅にいる時間も長引いてきて、そろそろ疲れて来る頃ですね。家で過ごす遊びのネタも切れてきたという声や、兄弟ゲンカが激しくなってきて困っているという声も多くなってきました。

お父さんお母さんがイライラしていると子どももストレスを感じ、悪循環になってしまいます。では、こんな時どうすればいいのでしょうか。今回は、「コロナの影響で、自宅で家族と過ごす時間が増え、イライラしてしまいます」というお悩みに、親子コミュニケーションアドバイザーがお答えします。

感情を出せることは素晴らしいことと受け止めてみる

家族でずっと一緒にいると、楽しかったり、イライラしたりと、感情が表に出てくるのは当然です。しかし、その時間は悪くないなと思います。

怒りが爆発したり、お腹がよじれるほど大笑いしたり、泣きべそかいたり、なんだか悔しかったり、そういう感情の揺れは、人間にだけ許された特別な力だからです。

良くない感情を出すことを許しあえるのは素敵なことだと思いますが、さすがに、少しは穏やかに過ごす時間も必要ですね。

そこで、まずはお父さんもお母さんがひとりになる時間を大切にしましょう。子どもは、自分のことを認められたあとで、相手の立場になって考えられるようになるのですが、大人だって同様に、自分のことを認められて余裕ができ、相手や子どものことを認められるようになります。

自分で自分をほめてあげる

今は緊急事態なので、お父さんやお母さんは、子どものことを真っ先に考えて1カ月頑張ってきたと思います。しかし、そろそろ少しは自分のことを大切にする時間を持ってもいい頃だと思います。

もちろん、家族に優しくしてもらうことも大切ですが、自分で自分を甘えさせてもいいのです。ひとりになる時間や空間を作ること、部屋の片隅に「ママの時間中」と書いてこもるのもいいですし、早朝家族が寝ている時間にこっそり起きて自分のために美味しい紅茶を入れて飲んだり、夜中に星空を眺めたりしてみてはいかがでしょうか。

子どもの年齢や人数によっては、夫婦で協力しなければできないので、話し合って交代でできるといいですね。

そして、自分を褒めることが大切です。「私、がんばってるね!」と声に出して、自分の頑張りを認めましょう。少し後ろめたい気持ちになるくらい自分を甘えさせると、家族にも優しくできると思います。

子どもに家事を手伝ってもらう

とはいえ、子どもと一緒に何かしたいと思われる方は、子どものためにと考えることを少し休憩して、家事を一緒に応援してもらおうと考えるのはどうでしょうか。進めなければならない家事に、子どもを巻きこむ作戦です。

たとえば、洗濯物を一緒に畳んでみましょう。仮に、子どもが服を1枚畳む間に、残り全部ママが畳んだとしても、「手伝ってくれてありがとう! すごく助かったよ」と声をかけます。子どもは、ママの役に立つことが大好きなので、喜んで次もお手伝いしてくれるでしょう。

また、一緒に料理してみはいかがでしょうか。料理というと手間が3倍かかるから、と敬遠される方もいますが、「冷蔵庫から玉ねぎ出して」とか「玉ねぎの皮むきしてみよう」と、手伝ってもらっている間に、ママはトマトやキュウリを切り終えればいいのです。「レタスを手でちぎって、ボウルに入れてみようか」と一緒にサラダを作りましょう。下に古新聞紙などを広げておけば、皮が散らばっても丸めて捨てられるのでノーストレスです。

お手伝いは、全部やらせるか全くやらせないかの2択ではなく、ママが8割、子ども2割くらいでも、言葉かけ次第で、子どもの満足感や達成感は養えます。

ほとんどママが作ったとしても「ありがとう助かったよ! あなたが作ったサラダ、おいしそうね、食べるの楽しみだわ」と声をかけましょう。子供に"自分でできた"と思わせることが大切であり、それがお手伝いの秘訣なのです。

兄弟ゲンカには「通訳者」として振る舞う

この時期、子どももストレスが溜まってきて、兄弟ゲンカに頭を悩ませているお父さんお母さんも多いのではないでしょうか。

ケンカは、成長に欠かせない大切なコミュニケーションのひとつですから、怒って辞めさせず、自分たちで解決できるように放っておく、という方も増えてきたように思います。

とはいえ、ケンカが始まったら親としてできることは、「通訳」に徹することです。決して、「裁判官」にならないようにしましょう。良かったのか悪かったのか、どうすべきだったのかなどを判断するのは、親ではなく子ども自身です。

「ごめんなさい」を言わせて収束したかに見えても、その後、わだかまりが残って、またすぐにけんかが始まるのは、お互いに納得していないからです。納得するまで話し合いができるように、親が「通訳」してあげましょう。なぜなら、兄弟姉妹では、年齢や個性、性別の違いで、思いを言葉にできる力に差があるからです。

自分の主張をして、一方的に言い合うのはケンカではありません。必要なのは、相手の言い分にも耳を傾けることです。

正しいケンカの仕方を練習するために、親はお兄ちゃんの主張を整理して、弟にわかる言葉で伝えます。そして、弟の思いを聴いて言葉にしてお兄ちゃんに伝えます。

その繰り返しをすることによって、自分の思ったことをどのように表現すれば相手に伝わるのかを、子どもは学び育ちます。お母さんが間に入ることで、子どもも少し冷静になれますね。


お父さんお母さんが、穏やかな気持ちを取り戻せば、子どもも穏やかに変わっていきます。まずは、「自分を褒めて甘えさせる言葉」を声に出して言うところからはじめましょう。言葉には、力があるからです。