【あらすじ】
コマガール――。細かい女(ガール)の略。日々の生活において、独自の細かいこだわりが多い女性のこと。細々とした事務作業などでは絶大な力発揮をするが、怠惰な夫や恋人をもつとストレスが絶えない。要するに几帳面で神経質な女性。これは世に数多く生息する(?)そんなコマガールの実態を綴った笑撃の観察エッセイです。

妻のチーは基本的に夜更かしである。平日は会社勤めをしているため、毎朝8時には起床しないといけないのだが、それでも午前3時ぐらいまでは平気で起きている。食器洗いや洗濯といった雑務が終了するのが深夜0時前(山田家は全体的に時間が遅いのです)だとすると、すなわちチーはそこから3時間ぐらいは自分の時間を楽しむわけだ。

その夜もそうだった。深夜0時すぎ、チーはリビングのパソコンに向かって、キーボードを一心不乱に叩いていた。いったいなにをやっているのかと覗き込んでみると、自分のツイッターやフェイスブックに書き込むことに夢中のようだ。

そもそもチーには、こういったネット愛好会の癖がある。ツイッターとフェイスブックの他にミクシィやブログも更新しており、さらに他人のブログなどにもよくコメントするタイプだ。こういうことを暴露すると、あとで本人から血が出るほど怒られるのは間違いないが、それは覚悟のうえで執筆に踏み切ることにした。そもそも作家とは、どこかで蛮勇を振るわねばならない職業である。現在、僕の最新刊『神童チェリー』(アスキーメディアワークス刊)が発売中です。何卒よろしくお願いします(図々しい)。

しかも、外でのチーはどちらかというと控えめでおとなしいタイプなのだが、ネット上になると一気に饒舌で活発になる傾向がある。夜な夜な色んなサイトに出没しては、自分の意見や主張を堂々と書き込んでいく。チーのことを知る僕の友人も「チーちゃんは、夜中になると2ちゃんねらー的な動きになるね」とちょっと笑っていたほどだ。

過去にはそんなチーの性癖が遠因となり、僕とツイッター上で夫婦喧嘩を展開したこともあった。喧嘩のきっかけは、ある夜のチーの不注意である。以前、この連載でも書いたことがあるが、僕は他人から頭部を触られることに激しい不快感を覚える人間で、普段からチーにも「頭を触るな」と口を酸っぱくして言っている。しかし、その夜のチーはその禁を堂々と破り、リビングのソファーでくつろぐ僕の頭部を遠慮なくわしゃわしゃと触ったものだから、僕としては当然のように激怒したわけだ。(我ながら小さい男だ)。

怒った僕はリビングを出て、自分の書斎にこもった。酒を飲みながら、苛々が鎮まるまで時間をやりすごす。こういうときは、チーと別々の部屋に分かれるのが一番だ。

その後、なんとなくケータイでツイッター(@yamadatakamichi)を見ていると、妙なツイートが飛び込んできた。チーがツイッターに僕の愚痴を書き込んでいたのだ。

しかも、チーは「わたしの夫は頭部を触られることを嫌がる」と、僕の情けない秘密までネットを通じて世界中に晒していた。まったく、なんたる辱めだ。僕が人知れず薄毛に悩んでいるということが、世界中の民にばれてしまうじゃないか(僕自身、色んなメディアに堂々と書いたり、喋ったりしているけど)。

僕はますます腹を立てた。夫婦喧嘩をツイッターで晒すとは、ルール違反もいいところだ。そこで僕は、よせばいいのになぜか自分もツイッターでチーに反論した。すると、チーもまったく引くことなく、ツイッターで再反論。それ以降はお互い子供みたいにムキになってしまい、二人とも一つ屋根の下にいるにもかかわらず、別々の部屋からツイッターだけで赤裸々に意見をぶつけあった。世にも珍しい「ツイッター夫婦喧嘩」である。

その途中、お互いのフォロワーさんから、いくつかのリプライやDMが届くようになった。みなさん、僕らの「ツイッター夫婦喧嘩」を心配していたようだ。

僕とチーはそんなフォロワーさんたちの熱いリプライやDMを受けながら、さらに夫婦喧嘩を加速させたものの、ほどなくして二人ともようやく納得。これまたツイッター上でのやりとりだけで夫婦喧嘩を終焉させ、めでたく仲直りとなった。

果たして、その一部始終を見守っていたフォロワーさんたちも、ほっと胸を撫で下ろしていた。タイムラインやDMに「良かったー」「どうなるかと思ったー」「ドキドキしたけど、仲直りできたようで安心しました」などといったメッセージが届き、僕は今さらながら無性に恥ずかしくなった。山田家は真夜中になにをやっているのだろう。

とりわけ、コスタリカにいる日本人からも応援と励まし、安堵のリプライが届いたのには驚いた。彼は遠い異国から、僕らのツイッター夫婦喧嘩を観戦していたようだ。

時代は変わった。かつての夫婦喧嘩といえば、激しい怒声が近所に響くといった程度の辱めだったと思うが、ツイッターの出現により、世界中にリアルタイムで公開されるようになってしまった。もっとも、僕らが勝手に始めたことだが。

しかし、同時に「ツイッター夫婦喧嘩」の意外なメリットも発見した。世界中に晒されていると思いながら、妻と意見を交換し合うと、無意識のうちに羞恥心というストッパーが働くようになる。したがって、自分が悪いと薄々自覚しながらも感情的に罵声を吐くということがなくなり、冷静な対応と意見ができるようになるわけだ。

その結果、夫婦のいざこざが穏やかに解決されると思えば、あながち「ツイッター夫婦喧嘩」も悪くないかもしれない。あとで友達に笑われますけどねー。

<作者プロフィール>
山田隆道(やまだ たかみち) : 作家。1976年大阪府生まれ。早稲田大学卒業。おもな著作品に『雑草女に敵なし!』『Simple Heart』『阪神タイガース暗黒のダメ虎史』『彼女色の彼女』などがある。また、コメンテーターとして各種番組やイベントなどにも多数出演している。私生活では愛妻・チーと愛犬・ポンポン丸と暮らすマイペースで偏屈な亭主。チーが几帳面で神経質なコマガールのため、三日に一度のペースで怒られまくる日々。
山田隆道Official Blog
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