4月下旬から、近所のスーパーにはニュージーランド産のキウイフルーツが出回り始めている。キウイブラザーズのぬいぐるみマスコットが、キウイには「食物繊維」や「ビタミンC」が豊富ですよ、とアピールしてくる。

  • ポカンと口を開けながら、キウイの健康価値を宣伝するキウイブラザーズ

健康が気になりだした40代の筆者は、思わずひとパックを手に取ってレジに向かった。栄養価の高い旬のキウイを食べて、少しでも健康体に近づきたい――、そんな切実な思いを胸に秘めて。ところでキウイの栽培について、皆さんはどこまでご存知だろうか?

  • サンゴールドキウイのパックを購入した

■いざ、ニュージーランドへ

というのも先日、ニュージーランドを訪れてキウイ業界の関係者に話を聞く機会を得たのだ。興味深い体験だったので、本稿で紹介したい。

当地にはAir New Zealand(ニュージーランド航空)の直行便で向かった。成田空港を飛び立ち、ニュージーランド北部にある同国最大の空港・オークランド空港まで約10時間半の空の旅。日本との時差はわずか3時間のニュージーランドだけれど、片道9,000km弱と、それなりの距離がある(余談ながら、これは東京からベルリンまでの距離に相当する)。

  • Air New Zealandの直行便を利用

  • 見えてきた、美しき島国!!

空港からクルマを走らせると、窓外には緑の大地が広がった。青く大きな空、放牧されている羊たち、風に揺れるパンパスグラス(シロガネヨシ)の群生。南半球のニュージーランドでは、いま、季節が秋から冬へと移ろいつつある。

  • 現地の季節は秋。とても気持ちの良い気候だ

■Growerに話を聞く

ニュージーランド産キウイフルーツの約80%が栽培されているという、北島のベイ・オブ・プレンティ地方。その中心都市であるタウランガでOrchard(果樹園)を経営しているアンドレ・ロシャさん宅で話を聞いた。

  • スイス出身のアンドレ・ロシャさん

タウランガ湾は、世界でも有数のサーファー天国。ロシャさん宅も庭とビーチが直結している。実際、彼に話を聞いている最中には、息子さんがサーフィンから帰宅した。いや、それにしても驚くほどの豪邸。Grower(キウイ農園の経営者)もトップクラスになると、ここまで儲かるのか......。

  • ウッドデッキからタウランガ湾を眺める。今日も良い波が来ている

  • 庭先から降りていくと...

  • どこまでも延々と続く、爽やかな白浜

ロシャさんが所有するOrchardでは、2.5haでグリーンキウイ、2.5haでサンゴールドキウイを栽培中。収穫したキウイは、すべてゼスプリ・インターナショナルに納めている。「キウイにもクラス分けがあり、日本には品質がイチバン良いclass 1のキウイを輸出しています。ニュージーランド国内で流通しているのはclass 2のキウイです」とロシャさん。

  • 形がいびつ、傷がついている、などの理由で輸出できないclass 2のキウイが自国で消費されている

キウイフルーツの栽培に関する春夏秋冬は、以下の通り。まず、冬の間にpruning(不要な枝の刈り込み)をしておく。春には芽が出て花が咲くので、受粉のため、ミツバチを果樹園に放つ。夏の間、雨と太陽がキウイの実を育てるが、病気にかかっている枝がないか、確認を怠らない。秋も深まる頃、果実はさらに重みを増す。収穫に備えて、地面の雑草を刈る。

キウイ栽培で難しいのはタイミングの見極めだ、と教えてくれた。「毎年、こちらでも出荷するまでのプランを立てるわけですが、キウイの成長スピードは年によって異なります。したがって、常に気を付けて観察を続けることを欠かしません。タイミングを見誤ると、すべての工程がズレてしまいますからね」。そのうえで「今年はよく実ってくれました」と、ホッとした表情を見せる。

  • 邸宅では、キウイをふんだんに使ったサラダがふるまわれた

  • こちらのサラダはゼスプリ・ルビーレッドキウイでアレンジしてある

このあとOrchardも見学した。広大な敷地が、背の高い防風林で綺麗に区画分けされている。湿気はなく、カラッとした風が心地の良い午後のひととき。日が照ると真夏のような紫外線が容赦なく照りつけるが、かと思えば、時おりスコールのような激しい雨が通り過ぎていく。ニュージーランドの天気は、目まぐるしく変化する。

  • ロシャさんのOrchardを歩く

「日本では、たとえ優秀なGrowerでも1ヘクタールで収穫できるキウイは30トンくらい。でもニュージーランドでは1ヘクタール平均で45~50トンくらい、Top Growerになれば60~70トンのキウイが収穫できます。なぜでしょうか。我々の技術が日本のGrowerより優れている、ということではありません。火山地帯の土壌、寒すぎない冬、たくさんの日光、適度な降雨量など、この地域の好条件の恩恵です」とロシャさん。

  • グリーンキウイの敷地には枝がたわむほどの多くの実。水はけが良い、それでいて栄養素をキャッチしてくれるこの素晴らしい土が我々のOrchardの自慢です、と話す

タウランガは6~8月(冬期)に、まれに気温が0度まで下がる日があるものの、おおむね温暖。12~2月(夏期)になっても最高気温は25度前後と、非常に過ごしやすい。一方、日本の冬は寒く、夏は暑すぎるそう。「キウイフルーツにとって、30度を超える気温は生育に良くない影響があります」と解説する。

  • 収穫時のイメージ。バスケットを前に抱え、中腰のままキウイをピッキングしていくのは、かなりハードな作業といえる

ちなみにGrower同士の交流も盛んだそうで「競争というよりは『皆んなで一緒に美味しいキウイを作っていこう』という思いの方が強いですね」。また大きい果樹園になると、収穫期には30~40人の人出が必要となるが、繁忙期にはPackhouseから人材も派遣してもらえる、と明かす。

Packhouseとは、農園から運び出したキウイの品質を検査し、品種・サイズごとに箱詰めする施設のこと。実際、どんな作業が行われているのだろうか?ぜひ、見学してみたい――。というわけで、Packhouseも訪れることに(次稿に続く)。