「ダウンサイジングコンセプト」あるいは「ダウンサイジングターボ」「ダウンサイジングエンジン」といった言葉を、最近のクルマ紹介記事で目にすることが多くなった。

有名なところでは、フォルクスワーゲン「ゴルフ」がダウンサイジングを取り入れ、主力モデルのエンジン排気量は1.2リットルや1.4リットルとなっている。日本車でいえば「ヴィッツ」「マーチ」とほぼ同じということだ。歴代「ゴルフ」の中には2.8リットルや3.2リットルのエンジンを搭載したモデルもあったから、大幅な排気量の縮小といえる。

フォルクスワーゲン「ゴルフ」

このように、「ダウンサイジング」とはエンジンの排気量を小さくすることであり、目的はもちろん、燃費を良くすることにある。ただし、ダウンサイジングは大型車を小型車に縮小するということではない。ボディサイズはそのまま。ゆったりした車内もそのまま。パワフルな走りもそのまま。エンジンの排気量だけを縮小して、何の犠牲も払わずに燃費性能を飛躍的に高めようというコンセプトなのだ。

「そんなうまい話があるものか」と言われそうだが、そのうまい話を実現することが、つまりは技術の進歩というもの。日本に先んじてこの技術をモノにした欧州メーカーは、ハイブリッド技術で低燃費競争をリードする日本メーカーに追いつき、追い越す構えだ。

ダウンサイジングしてもパワーが犠牲にならないのは、ターボを追加しているから。エンジンに強制的に空気を圧送するターボは、飛躍的なパワーアップを可能にする代わりに、燃費も低下するというのが従来の常識だったが、欧州メーカーは燃料の直噴技術とターボをうまく組み合わせ、最新の制御技術なども駆使することで、燃費の問題を克服した。

ダウンサイジングコンセプトを採用したモデルは日本にも

ダウンサイジングエンジンの進歩は、メルセデス・ベンツ「Cクラス」を見るとよくわかる。2世代前のダウンサイジングを取り入れる前のモデル(W203)では、「C 180」は2.0リットルで129PS、燃費は10.2km/リットル(10.15モード)だった。ダウンサイジングを取り入れた1世代前のモデル(W204)は1.8リットルで156PS、14.4km/リットル(JC08モード)に進化。そして現行モデル(W205)はわずか1.6リットルで156PSを発揮、燃費は17.3km/リットルとなっている。

スバル「レヴォーグ」(1.6L車)。日本でもダウンサイジングターボを搭載したモデルが登場

興味深いのは、日本のハイブリッド技術は「いままでのクルマとは違う」ことを売り物にしているのに対して、ダウンサイジングコンセプトは逆に「いままでと同じ」ことが大きなメリットになっていること。いままでと同じ爽快な走りが楽しめて、車両価格も従来モデルと大差なし。それでいて燃費が優れていることを売り物にしている。

「いままでと同じ」であることのメリットは、じつは非常に大きい。ハイブリッド技術はそれを前提に開発したボディだけにしか搭載できないが、パワーユニットの形状や特性がいままでと同じであるダウンサイジングエンジンは、幅広くさまざまな車種にすぐに搭載できるのだ。たとえばプジョー「208」は1.6リットルのエンジンを搭載していたが、マイナーチェンジで一部モデルを除き1.2リットルにダウンサイジング。「208 シエロ」では、燃費は13.4km/リットルから19.4km/リットルに向上した。

ダウンサイジングコンセプトは世界的な広がりを見せており、欧州のほとんどのメーカーに加え、日本でもスバルや日産自動車が採用している(日産の場合はメルセデス・ベンツのエンジンを購入しており、自社開発ではない)。「ターボは燃費が悪い」というイメージが根強い日本でも、優れた欧州車の登場によってユーザーの意識が変わってきており、今後はさらに拡大する可能性がある。