連載コラム『まるみえ家計診断! プロが教える改善のコツ』では、家計簿アプリZaim利用者の中から、家計やお金のことで悩む相談者の実際の家計簿データをチェック! お金の専門家が相談者へ改善のコツをずばっとアドバイスします。
【今回の相談者】
東京都にお住まいのヒロさん(34)。専業主婦の奥さまと、6歳・4歳・2歳の育ち盛りのお子さんとにぎやかな5人家族です。医師として勤務され、年間のボーナスはないものの、毎月の手取り収入は約100万円と一般よりも高所得と言えそうです。一方で現在の貯蓄は現金でおよそ300万円。掛け捨てではなく貯蓄型の保険に加入し還付金を見込んでいる、という現在のヒロさんの資産状況です。
【相談したい内容】
『手取り収入は変動がなく、安定しています。ただ医師という職業柄、学会の出張がとても多く……それに伴う費用は実は自腹。それが家計を圧迫しているので気持ち的には余裕がたっぷりというわけではありません。さらに来年からは海外留学を予定していて、1年ほど無収入状態になることがわかっています! 今年のうちにできる限り生活費を蓄えておきたいので、何かアドバイスをお願いします』
大家族だからこそ今のうちに引き締めるべき!
ヒロさんのZaimでの支出と収入データを確認したところ、食費や教育費などが圧倒的に支出のシェアを占める、5人家族ならではの少し変わったバランスです。今後無収入が続くと、確かに不安は大きいかも……。
そこで今回も家計の専門家にずばり相談。ファイナンシャルプランナーの堀之内千津先生にアドバイスを頂きました。まず気になったのはどの点でしょうか?
堀之内先生「やはり目を引くのは支出のおよそ1/4を占める食費の金額(17.2万円)ですね。無収入に備えてまず抑えるべきところはこのカテゴリ。しっかりとカテゴリを分け管理されているので、食費の中でもどういった内容に偏っているかは把握されていると思います。子供の成長に伴って食費は今後ますます増えていくことが考えられますし、現時点だと食料品については 1日あたりおおよそ2,000円までが理想的と考えられます。外食をふまえても、5人で1カ月10万円をひとまずの目安としたいですね。一気に切り詰めるのは難しいと思いますが、少しずつでも食費を見直しておくと家計への不安は減少します」
たくさんのお子さんがいらっしゃるご家族だからこそ、食費の管理を少し厳しく……ということですね。ご主人が海外留学中は外食の機会もコントロールしつつ、1週間ごとに食費を確認するだけでも効果がありそうです。他に気になるカテゴリはどこでしょうか。
堀之内先生「大型出費の内訳は旅行代とのことですが、これがもし毎月の楽しみになっているなら考えどころ。特に、来年からの留学を考えると日本への帰省代も上乗せされるので、それまでは少し控えることも必要かもしれません。また、実は水道光熱費(水道代)も3.6万円と少し高いのが気になります。使い過ぎはないか、少し意識して生活することも大切です」
ヒロさんのご家庭は旅行を"大型出費"として管理し、"エンタメ"のカテゴリからは分けて管理しているのですね。例えば、そういった暮らしの楽しみはひとつのカテゴリで予算化するなど、金額をまとめてしまうのも振り返りしやすいポイントです! 冠婚葬祭や家電の買い替えなど、どうしても予算を立てにくい特別支出を"大型出費"としておくと、1年の振り返り時にも確認しやすいでしょう。
将来に向けて備えるべき金額は想像以上に多い!
ヒロさんは、月払いや年払いなど含め生命保険に加入されているようです。月額の支払いだけでも支出のシェアは10%(6.4万円)と低くありませんが、こちらについてはどうでしょうか?
堀之内先生「収入に対する保険料としては、金額だけで見ると特に高すぎるとは思いません。ただ保険で大切なのは支払金額ではなく、プランです。死亡時だけでなく、医療費についてもカバーできるよう考えると良いですね。医療費の自己負担額が高額になった場合、一定の金額を超えた分が、あとで払い戻される高額療養費という制度がありますが、 2016年度から自己負担額は増額しています。お勤め先の制度も確認しつつ、家族構成にあった内容になっているかどうか、適時見直すことはもっとも重要です」
3人のお子さまの教育費はどうでしょうか。ヒロさんの現在のプランとしては、小中高と公立、大学では私学も選択肢の一つというお考えのようです。
堀之内先生「高校まで公立で進むのであれば、収入から考えて特に心配しすぎることはありません。ただし3人のお子さまが比較的年齢が近いこともあり、大学の入学費用や塾の費用などが2~3年ごとに3人分必要になることを考えると、貯蓄をふやしておく必要があります。また、ご自身が医療従事者ですし、お子さまが医大に進みたいと希望されることも十分考えられます。もし私学の医科大であれば、通常の4倍近くで大体2,000万~3,000万円の学費がかかります。進学プランはしっかりと考えておくと良いですね」
子供さんそれぞれが希望される進学プランに、ある程度選択肢が持てるよう今のうちに準備が必要ということですね。収入は多いものの、支出の変動が激しいヒロさんご一家。支出額が多い月でも最低限の貯蓄目標を決めておくのもおすすめです。Zaimなど家計簿アプリでは、各カテゴリに予算を設定できます。出張費などのイレギュラーな支出以外のバランスを整えて、家計の安定化を図れるとよいですね。
家計診断協力
堀之内千津
ファイナンシャルプランナー(CFP)・1級FP技能士。大手証券会社・トヨタグループ金融会社を経て、家計の総合相談センターに入社。東京・名古屋・大阪で、CFP・税理士・社会保険労務士などとともに、来店型相談センターを開設。また、トヨタ自動車、トヨタグループ各社のライフプランセミナー、上場企業向け確定拠出年金講師、金融機関主催のセミナー講師など多数担当している。誰でも身近で親しみやすいパーソナルファイナンスの普及を目指し、各種講師、執筆業務、相談業務などの活動をしている。
執筆者
綿島琴美
家計プランナー、2級ファイナンシャル・プランニング技能士。Android, iPhone, iPad や Webから利用できる日本最大級の家計簿サービス「Zaim」にてユーザーへの家計サポートを行う。レシート自動読取り機能や銀行とのデータ連携など、アプリを活用した家計の仕組みづくりを提案。初の監修本『Zaimのシンプル家計術』(ナチュラルライフ編集部編、税込み842円)が学研プラスより好評発売中。