連載コラム『あなたの家計簿見せて! "給料減少時代"の家計診断』では、相談者のプロフィールと実際の家計簿をもとに、5人のFPが順番に、相談者の家計に関する悩みについての解決策をアドバイスします。
【相談内容】
この4月から社会人になりました。今までと違って毎月お給料をもらえるようになったので、貯蓄をしようと思っていますが、毎月の貯蓄額はいくらぐらい貯蓄にまわせばいいものでしょうか? また、どうせ貯蓄をするなら目標は大きく、30歳までに1,000万円貯められたらと思っていますが、そのためにはどうしたらいいでしょうか?
【プロからの回答です】
お給料をいただけるようになったので、「1,000万円貯めよう!」という心意気、頼もしいです。1,000万円貯まったら何をされるのでしょうか。貯蓄額は、収入に対し2~3割が理想と言われていますが、長野さんは実家暮らしですので、3割を目指したいところです。
家計調査の独身者の平均から見てみると、支出のうち食費が高いようです(平均は3万円)。歓迎会などお付き合いの飲み会などは落ち着いてきている頃でしょうから、今後は食費も減ってくるかもしれませんが、本気で貯めるなら、お昼はお弁当にする、飲み物は持参するなど、減らせられるところは徹底して減らしていきましょう。通信費もあと3,000円抑えられないか、など検討してみてください。
(※詳細は以下をご覧ください)
目標の明確化
就職おめでとうございます。今は、仕事や周囲の人にも慣れ、歓迎会なども落ち着いてきた頃でしょうか。お給料をいただけるようになったので、「1,000万円貯めよう!」という心意気、頼もしいです。1,000万円貯まったら何をされるのでしょうか。
貯蓄額は、収入に対し2~3割が理想と言われていますが、長野さんは実家暮らしですので、3割を目指したいところです。
現在の貯蓄計画を単純計算してみると、月3万円×12か月で36万円、ボーナスは年間90万円とのことなので、ボーナスの半分の45万円を貯めたとして合計81万円。年収に対し3割は77万4千円なので、貯蓄の割合はよいと思います。
長野さんは10年後1,000万円を目指すとのことですから、81万円×10年=810万円と計算すると190万円足りない計算になります。
今後、景気が上がり、金利が上がってくるとどうなるでしょうか。
たとえば、年1%複利で10年間運用できるとしたら、10年後に8,474,392円になります。3%で運用できたとしても、9,285,742円となり、あと一歩届きません(税金は考慮していません)。
逆に3%で10年間運用できるなら、年に87万円貯蓄できれば10年後に1,000万円は達成できます。1%での運用なら年に95万円必要になります。
支出の見直し
家計調査の独身者の平均から見てみると、支出のうち食費が高いようです(平均は3万円)。歓迎会などお付き合いの飲み会などは落ち着いてきている頃でしょうから、今後は食費も減ってくるかもしれませんが、本気で貯めるなら、お昼はお弁当にする、飲み物は持参するなど、減らせられるところは徹底して減らしていきましょう。通信費もあと3,000円抑えられないか、など検討してみてください。
ここまでは1,000万円を貯めるための技術です。第14回の相談で菅田さんが解答されているように、「貯めることに一生懸命で、人生が楽しくなければ本末転倒です。お金を貯めながら、たまには美味しい物を食べ、素敵な服を着て、温泉で癒されることなどは、生きていく上で必要」とは私もまったく同意見です。支出も突出して多いわけではないので、1,000万円を貯めることにこだわりすぎ、お付き合いを減らしすぎたり、好きなものを我慢しすぎたりはしないようにしてくださいね。
何で貯める?
では、貯蓄はどのように運用したらよいでしょうか。
財形貯蓄を会社がやっていれば、給与から天引きされるので一番貯めやすいと思います。会社によっては補助金を出してくれる場合もありますので、調べてみるといいでしょう。
勤務先で厚生年金基金、確定給付年金をやっていない場合に限りますが、確定拠出年金(日本版401K)もおすすめです。これは、自分の年金を自分で運用して増やす仕組みで、投資先は会社によって異なりますが、株式や公社債、投資信託や保険、預金などいろいろな金融商品に投資できます。その中からリスクのある金融商品を選んでいけば、投資の勉強にもなります。払っている間の掛け金は所得控除になりますので、税金も安くなりますし、受け取る時も税制的に優遇があります。ただし、60歳以降じゃないと基本的に取り崩せないので、それまでは貯蓄の一部にしておきましょう。
平成26年から「NISA(少額投資非課税制度)(※)」も始まることですし、リスクのある商品になれてきたら、お気に入りのブランドや好きなおやつの会社などに投資をしてみるというのもおすすめです。株式を買えるまでの資金がたまっていなかったら、月々積み立てるタイプの投資信託や、るいとうであれば、5,000円~1万円程度からはじめられます。経済指標の見方や日々のニュースのとらえ方が変わってくると思いますよ。
※「NISA(少額投資非課税制度)」は、毎年100万円を上限とする新規購入分を対象に、その配当や譲渡益を最長5年間、非課税にする制度です。
生命保険も特約を付けないシンプルな終身保険や養老保険であれば、保険料は掛け捨てにならず、さらに生命保険料控除の対象になるので税金も安くなります。払込終了後、解約返戻金が大きく増えるタイプの保険もあるので、貯蓄がなかなかできないと悩むようなら候補に挙げるとよいと思います。ただ保険は途中解約すると元本割れするというデメリットもあります。独身の今ならば300万円程度の死亡保障を備える保険で、保険料は5,000円以下を目安にするといいでしょう。
また、ケガや病気、冠婚葬祭などの急な出費に備えるために、3~6か月分の生活費は普通預金などの出し入れしやすい口座に用意しておきましょう。
ライフプランの変化に対応
女性は結婚や出産といったライフイベントがおきると環境が大きく変わります。結婚するとしたら、住む場所も変わるでしょうし、子どもを授かったら仕事を辞めるかもしれません。結婚に限らずとも転職するかもしれませんし、留学を望むかもしれません。20代はとくにその変化が大きい年代だと思います。その中で、やりたいことができたときに、お金がないからというだけの理由であきらめることのないように、貯蓄を頑張るのはとても良いと思います。
いろいろなことやものを経験して、いろいろな人に出会っていくのも財産になると思います。お金を貯めることだけにこだわらず、自己投資にもお金を使ってくださいね。
<著者プロフィール>
(株)プラチナ・コンシェルジュ ファイナンシャルプランナー 内田まどか
「万が一」のためだけではない、生きていくための保険の入り方から、住宅取得、転職、早期退職など、夢や希望を叶えるためのライフプランニングなど、シミュレーションを活用してアドバイス。個人相談を中心に活動している。