SNS全盛時代にありながら、意外と見えない周りのお財布事情。この連載では、お金の学校ファイナンシャルアカデミーが、典型的な家計簿パターンを紹介しながら、明日から実践できる家計改善のコツを具体的に伝授します。連載第3回では「子なし共働きの30代カップル。ダブルインカムなのに何故か貯まらない家計簿」にメスを入れます。

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夫婦共働き「お金に困ってはいない、でも貯まらない」

横浜にお住まいのCさん(39歳)は、現在、賃貸のマンションに、2歳年下のご主人と2人で暮らしています。Cさんのご主人は昨年のはじめに、当時の勤務先であった印刷会社を自己都合で退職。すぐに別の就職先が見つかると思っていたのですが、タイミングが良くなかったせいか転職活動は苦戦。数カ月間の無職期間を経て、今の会社に就職が決まったそうです。

子どものいない「DINKS」という生き方を選択したCさん夫婦。現在、夫婦共働きのダブルインカムのため、毎月の生活に困るようなこともなく、日々を謳歌しています。しかし、お金は思うように貯まらず……。昨年は、転職活動期間に貯蓄をかなり使ってしまったこともあり、老後資金についても最近不安が募ってきたそうです。なお、住まいについては、ご主人の転職活動をきっかけに身軽な方が良いとつくづく感じたそうで、このまま賃貸暮らしを続ける予定とのこと。Cさん夫婦の家計は次の通りです。

給与
妻 30万円/月(手取り)
夫 26万円/月(手取り)

支出
56万円/月

ボーナス
妻 60万円/年(手取り)
夫 なし

貯蓄
夫名義 100万円
妻名義 200万円

手取り56万円なのに、貯蓄ができない理由

夫婦での手取りが56万円。家計簿上は、かなりゆとりがあるように見えますが、1年を振り返ってみると、ほとんど貯蓄が増えていないというCさん。ここで改めて認識してほしいのが、「年収と貯蓄額は比例しない」ということです。金融広報中央委員会のデータによると、年収1,000万円~1,200万円の世帯のうち、貯蓄ゼロは10.3%、1,200万円以上の世帯でも5.1%が貯蓄ゼロとのこと。つまり年収1,000万円超えでも、10人に1人は貯蓄がない、という現実があるのです。連載1回目で紹介した「パーキンソンの法則」が物語るように、人間は油断すると、あればあるだけお金を使ってしまう生き物だということですね。

Cさん夫婦もその典型。家計簿でも、何に使っているかわからない「使途不明金」が6万円にものぼる点が特徴的です。おそらく、ちょっとした買い物や外食などに、無意識にお金を使ってしまっている可能性が大。日々の生活に困っていないからこそ、気の緩みを感じます。逆に言えば、この点を見直せば、家計改善は意外と簡単に進むはず。王道中の王道ですが、給料が入ればまずに先取り貯蓄をし、それと並行して、使途不明金をなくすことを第一目標に、家計簿を始めてみるのが良いでしょう。

老後資金は、いくらかかるの?

Cさんが気になっているという老後資金。具体的に考えていきましょう。Cさん夫婦の場合、退職後に極端に生活を変えないためには、住居費を除いて、最低でも毎月20万円の生活費が必要になりそうです。これに、趣味や冠婚葬祭などの急な出費を想定して、1人あたり5万円ずつ、ゆとりをみておくことにしましょう。

住居費に関しては、退職後は実家に引っ越すつもりだそうで、固定資産税のみ年間10万円あれば良いとのこと。ただ、住み替えに際して実家をリフォームする予定とのことで、その費用が300万円ほど必要です。それ以外には、年間のレジャー費として30万円、病気や介護に備えて1人300万円のお金を準備しておきたいところです。

2人とも、65歳まで働きたいと考えているので、老後の生活が始まるのは65歳からだと想定します。平均寿命を参考に、仮に90歳まで生きるとした場合、25年分の資金について考える必要があります。

これらを踏まえると、以下がCさん夫婦の老後にかかるお金となります。

・毎月の生活費+α/毎月30万円×25年分
・固定資産税+レジャー費/年間40万円×25年分
・リフォーム費用 300万円
・病気や介護に備えるお金 300万円×2人分

退職までしか貯められない!

退職後の生活の支えは、公的年金や退職金です。Cさんの会社には退職金制度がなく、ご主人の会社には、退職金制度がありますが、中途入社の場合は勤続年数が短くなるため、思ったほどの金額にならないことも多くあります。ご主人の場合は、400万円がもらえる見込みのようです。

公的年金に関しては、加入状況や給与額によっても受取金額は変わります。Cさん夫婦の場合、このままのペースで働けば、2人あわせて年間360万円、毎月30万円ほどの年金が見込めます。これだけあれば、月々に関しては、プラスαを含めた金額が公的な年金で賄える計算になります。

そうなると自分たちで準備すべき金額は、25年分×40万円の固定資産税とレジャー費、300万円のリフォーム代、2人で600万円の病気や介護費用となり、これらの合計は1900万円となります。現時点で2人あわせて貯蓄が300万円あり、夫の退職金も400万円もらえる予定なので、差額の1200万円がこれから貯めなければいけない金額となります。

再雇用の60歳以降は、給与が大幅に減るのが一般的ですので、毎月の積み立ては60歳までに終えるのが吉。今から約20年で1200万円積み立てるとなると、毎月5万円ずつ積み立てる必要が出てきます。あればあるだけ使ってしまうタイプのCさんは、自分の意志で貯蓄しようと思っても挫折するのが目に見えているので、財形貯蓄や銀行などの自動積み立てを上手に活用するのが良いでしょう。

また、公的年金制度は見直される可能性もありますし、何より65歳まで2人とも今の会社で働き続ける保証はどこにもありません。そういった意味では、積立額をアップする必要が今後出てくる可能性は十分にありえます。気づいた時には、時すでに遅し、ということもありえますので、家計見直しから捻出したお金を、月数万円からでも、つみたてNISAなどにまわすことも考えるべきでしょう。

ファイナンシャルアカデミー

お金の教養を身につけるための「総合マネースクール」。2002年の創立以来、東京校・ニューヨーク校・オンライン校を通じて19年間で累計61万人以上が、貯蓄や家計管理といった生活に身近なお金から、資産運用、キャリア形成、人生と社会を豊かにするお金の使い方までを学んでいる。人生と切っても切れないお金の知識が丸ごと学べる『お金の教養スクール』では、WEBで受講できる無料体験セミナーも実施している。