人生における青春時代。その成長過程のまっただ中を、女子校・男子校で過ごした方も多いのではないだろうか。今回そんな女子校・男子校についてお話しいただいたのは、恋愛に悩む人をサポートする「失恋ホスト」などの活動を行う桃山商事の代表 清田隆之氏と、早稲田大学講師としても活躍するライターのトミヤマユキコ氏。青春時代の6年間を男子校・女子校で過ごしたお二人に、当時の学校生活を振り返っていただき、それぞれの学校の特徴や卒業後のキャリアに活かしていることなどを伺った。

左からトミヤマユキコさん、清田隆之さん

女子校・男子校の生態とは

――そもそも女子校・男子校を受験したきっかけは?

清田さん:母親の方針で中学受験をしたことがきっかけでした。でも、第一希望の学校に落ちてしまい……結果的に入ったのが中高一貫の男子校でした。

トミヤマさん:私は幼い頃から親の仕事の都合で引っ越しや転校が多かったので、学区に関係なく通える私立の中高一貫学校を選びました。

――実際に入学してみて、何か驚いたことはありましたか

トミヤマさん:もともと男子と仲の良いタイプだったので、女子だけで過ごすことの楽しさに気づくまで時間がかかりました。小学生時代は、男子とサッカーをしたり、木登りしたりとおてんばでした。男子を蹴り飛ばして泣かしたりとか、ガキ大将のような小学生で……(笑)。なので、中学に入って、めちゃくちゃ女の子らしい子とどうやって仲良くなればいいのか、"女子の喧嘩"はどうやるのかとか、全然わからなかったですね。乱暴に振る舞ってしまったり、言い方がキツくなってしまったりの繰り返し。最初の一年くらいはチューニングが難しかったです。

清田さん:僕が一番戸惑ったのは、同級生に"ボンボン"が多かったことです。入学式で初対面のクラスメイトに「これからよろしく」って握手を求められたときは、マジでカルチャーショックでした。僕は東京の下町育ちなので、「これはちょっと住む世界が違うかも……」って(笑)。そのほかにも、家の地下室にカラオケルームがある友達や、老舗料亭の息子で、家に帰ると従業員総出で「お帰りなさい、お坊ちゃま!」って迎えられる友達もいました。

トミヤマさん:いきなり握手求められるのは確かにすごいね(笑)。私の場合は、学校以外の場所で友達と遊ぶようになってから"お嬢様"がいるんだって気づきました。友達の家に行ったらシャワールームが親子で別々だったり、お手伝いさんが寝泊まりするための部屋があったりしたことも(笑)。同じ学校、似たような成績でも、家柄的なものはバラバラ。私はほんとうに庶民なんだと思い知りましたね。

清田さん:完全に似た境遇だね(笑)。

男子校・女子校の"スクールカースト"事情は?

――学校内でいわゆる"スクールカースト"はありましたか? 共学よりもキツくないイメージもありますが……

清田さん:それでも一応はありましたね。中学の頃は"イケメン" "頭がいい" "スポーツができる"みたいなやつが目立っていて、高校になると"女子にモテる" "ヤンキー" "オシャレ" "おもしろい"みたいな要素が重視されるようになりました。

トミヤマさん:女子校でもありました。上層にいたのは、雑誌『東京ストリートニュース』に載っちゃうようなオシャレな子や、勉強ができる子、おもしろい子。下層に位置付けられていたのは、地味でオタクな人。私はオタク寄りでしたね。当時『オールナイトニッポン』にハガキを送ったりしていて、サブカルが大好きでしたし、恋愛にも興味がなかった。どう考えてもカースト上層ではなかった(笑)。

――異なるカースト同士の人が交流するようなことはありましたか

トミヤマさん:交流してましたよ。カースト自体はあるけど、上層の人が下層の人を無視するとか、そういうことは全然なくて。6年間同じ空間にいるわけだし、クラス替えがあるから仲間同士で固まっているわけにもいかない。みんな普通にコミュニケーションを取っていました。男子校はどうだった?

清田さん:確かに目立つ人/目立たない人はいたけど、かといって"支配関係"みたいなものはなかった。お坊ちゃまが多かったこともあって、全体的にはおっとりしていたような気がします。

トミヤマさん:なるほどなー。私の学校で言うと、チアリーディング部に所属していて、カーストの上層にいるんだけど、お笑いや深夜ラジオも大好き、みたいな子は結構いましたね。そういう子と私はラジオの話で盛り上がるわけです。ふだん生息地が違っていても、何かつながれる共通点があれば仲良くできる。そういったカーストの"ゆるさ"はありました。

清田さん:僕はサッカー部で副学級委員だったので、クラスではわりと目立つ方のグループだったかもしれないけど、オタクっぽい友達の影響もめっちゃ受けてました。特に音楽の趣味とか、いつも隣の席になった友達のオススメにハマるという習慣があって、あるときはフリッパーズギターやピチカートファイブといった「渋谷系」好きの友達に染められたこともあったし、同じような感じでミスチルやリンドバーグにハマっていたこともあった。すべて隣の友達任せで、まったく主体性がない(笑)。

"同性"だけのメリットとは

――学生生活が、同性しかいない環境で良かったことはありましたか

清田さん:今考えると「恋愛が絡まない」というのは大きな利点だったと思います。男って常にうっすら"競争意識"みたいなものが抱えているような気がするんですが、これが例えば共学だったら、少なからず女子の目を意識したコミュニケーションになっていたと思う。もっとも、スポーツとか成績とか、ほかにも競争を意識させるものはたくさんあったけど、もしあそこに恋愛が絡んでいたら、男同士のコミュニケーションってもっと面倒くさかっただろうなって……。

トミヤマさん:私も同じですね。テストの点数で勝ち負けを決めるなど、成績で競い合うことは女子校にもありましたが、それは努力=結果なので、競争していてもおもしろい。でも恋愛は努力=結果ではないので、競争なんかしたら大変ですよね。恋愛が原因で喧嘩になることがなかったのは良かったです。

あと、女子だけで6年間過ごしているうちに、衝突の避け方が上手くなりましたね。「この人の前でこの話をするのは良くないぞ」といった判断が上手になるんですよ。たとえ全てを受け入れられなくても、"部分肯定の精神"で女子と仲良くするスキルが身についたのはすごく良かったです。