個人投資家には、小型成長株を好む人が多い。小型成長株は、うまく売買すると大きなリターンを得られるが、値動きが荒いので売買タイミングが難しい。成長ストーリーの崩れた小型株は、問答無用の売りしかない。放置すると、大きな損失を被ることになる。

私は、値動きの荒い小型成長株ばかりでなく、値動きが相対的に落ち着いている小型割安株にも分散投資した方が良いのではないかと思う。成長率が落ちて株価が急落した「かつての人気成長株」に、小型割安株として投資価値が高い銘柄がある。

株式投資の代表的スタイルは、2つある。1つは成長株投資、もう1つは割安株投資である。株式投資の初心者の方は、まず割安株投資から開始した方が良いと思っている。大型の好配当利回り株が、最初の候補となる。ただし、小型の割安株にも、おもしろい銘柄はいろいろある。

小型株には、値動きの荒いものが多く、売買タイミングが難しい。特に、人気の小型成長株は急騰急落を繰り返すので、要注意だ。

乱高下する人気の小型成長株 高値づかみすると大変! (イメージ図) 注:楽天証券経済研究所が作成

上の例では、黎明期・急成長期・成熟期がそれぞれ5年続く成長企業をイメージしている。黎明期は、利益はほとんど出ないが、将来の大きな夢がある時期だ。急成長期は、実際に売上高・利益が大きく伸びる時期だ。成熟期には、増益率が小さくなる。あるいは、利益が伸びなくなる。

こうした成長株を、高値でつかむ(グラフ中の赤矢印をつけたところ)と、株価があっという間に半値になることもある。長期投資では高いリターンが出ても、投資タイミングが悪いと、大きな損失を出すことになる。

では、こうした成長株に、黎明期から黙って長期投資していればいいと思うかもしれない。確かに、黎明期の成長株に長期投資すれば、最終的には大きなリターンが得られる。選んだ銘柄が、真の成長株ならそうなる。

上記の株価チャートは、成長株の成功例をイメージしたものだ。黎明期の後に、急成長期が訪れている。ところが、実際には、黎明期から脱することができず、鳴かず飛ばずのまま、終わる失敗例もたくさんある。成長期入りすることができないことがわかると、株価は暴落する。

真の成長企業を見抜く目があれば良いが、それは正直、とても難しい。私は、ファンドマネージャー時代は、成長株の候補をあえて絞り込まずに、多数の候補企業に分散投資した。急落する銘柄はどんどん損切りしながら、真に成長する企業を絞り込んでいった。「相場は相場に聞く」というやり方だ。

小型成長株は、チャートを頻繁にチェックし、強い売りシグナルが出たら、問答無用で売ることを徹底していた。成長ストーリーの崩れた失敗企業への投資を放置すると、大きな損失を被ることになる。

成長性の高い株は、往々にして人気が高く、株価の割安度をはかる代表的な指標であるPER(株価収益率)が30倍~50倍と高い水準にある。PER100倍を超える人気成長株もある。

一方、PERで10倍前後の割安銘柄の中には、成長性は低いが、堅実経営で収益基盤が安定的なものもある。配当利回りが2~3%あるが、成長性が低いために不人気で、株価が割安に放置されている銘柄も多数ある。それが、割安小型株の投資候補となる。

小型成長株が成熟期入りし、株価が急落した後、堅実経営の小型割安株として、投資魅力が高まることもある。ファンドマネージャー時代には、急落した人気小型株を調べに行き、買い始めることがよくあった。成長期の後、衰退期に入る銘柄は、「安かろう悪かろう」銘柄なので、投資を避けた方がいい。私が選ぶのは、成長性は低くても、収益基盤が安定していると考えられる銘柄だ。

以下は、私が持っていてもいいと感じる小型割安株である(売買推奨ではない)。参考までに、掲載する。

小型割安株の参考銘柄 (出所:配当利回りは会社予想1株当たり年間配当金を31日株価(終値)で割って算出。PERは会社予想1株当たり純利益を31日株価で割って算出。最小投資金額は31日株価で最小投資単位100株を買うのに必要な金額。楽天証券経済研究所が作成)

執筆者プロフィール : 窪田 真之

楽天証券経済研究所 チーフ・ストラテジスト。日本証券アナリスト協会検定会員。米国CFA協会認定アナリスト。著書『超入門! 株式投資力トレーニング』(日本経済新聞出版社)など。1984年、慶應義塾大学経済学部卒業。日本株ファンドマネージャー歴25年。運用するファンドは、ベンチマークである東証株価指数を大幅に上回る運用実績を残し、敏腕ファンドマネージャーとして多くのメディア出演をこなしてきた。2014年2月から現職。長年のファンドマネージャーとしての実績を活かした企業分析やマーケット動向について、「3分でわかる! 今日の投資戦略」を毎営業日配信中。

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