さて、西表島(沖縄県八重山郡竹富町)は2018年3月に国内では初めて(当時)となる星空保護区にも認定されている。そこで、島内で星空ナイトツアーを運営している望月達平氏にも話を聞いた。

  • 望月達平氏。自宅からは天の川銀河も南十字星も見えるという

普段、参加人数2人以上で約1時間半のツアーを4,500円から実施している望月氏。西表島が星空保護区に認定されるきっかけをつくった故 宮沢みゆき氏の意思を継ぐ人物でもある。

望月氏の強みのひとつは、星空がよく見えるスポットを熟知していること。天気予報がまったくアテにならない、天候が目まぐるしく変化していく西表島においては、ガイド付きのツアーを選ぶことで星が見える確率が上がる、と説明する。

「外に出たら雲が出ていた、そんなとき皆さんなら『これでは何も見えないね』と諦めてしまうかもしれません。でも実は、少し移動すれば晴れている、なんてことも多いんです。だから私のツアーでは『雨雲が来る前にあのスポットに行こう』『この雨雲をやり過ごしたらあっちのスポットに行こう』なんてことをやっています」。

西表島の夜空は、どのくらい素晴らしいのだろうか。たとえば、国際天文学連合が定める88の星座のうち84の星座を見ることができる。また一等星に分類される恒星は全天で21個あり、その全てを見ることができる。望月氏は「その昔、世界でも有数の星空がきれいな街として知られているニュージーランドのテカポから訪れた人が『自分の街と同じくらい星空が見えている』と驚いていました」というエピソードも明かした。

望月氏がツアーを開催するのは1年に100日くらい。夏場は毎日開催できるが、冬場は悪天候の日が多く、1週間に1回ツアーができれば良いほうだという。筆者が訪れたのは12月で、生憎の雨続き。星空を見ることはできなかったが、望月氏から写真を借りることができたのでここで紹介しよう。

  • 写真は、望月氏のブログ(motti西表島)から。タイトルは「癒しの夜空」。西表島では、風の音、カエル、フクロウなどの鳴き声をにぎやかに聞きながら、3,000~4,000個の星を見ることができるそう

「西表島では暦によって、色んな星空をご覧いただけます。たとえば3月、4月頃にお越しのお客さんには、我々の周りを数千匹のヤエヤマヒメボタルが飛び交うなかで星空を見ることができる。5月、6月でしたら南十字星が見えますし、梅雨が明ける6月から11月にかけては天の川銀河が綺麗に見えます」(望月氏)。

  • こちらの写真も望月氏のブログ(motti西表島)から。タイトルは「天の川でリラックス」

西表島の星空が特別な理由のひとつは、星が瞬かないこと。望月氏は「偏西風やジェット気流の影響をあまり受けない沖縄は、大気の揺らぎが少ない稀有な地域なんです。だからキラキラ星にはならず、星の光がそのままストレートに皆さんに届く。宇宙で星を見るときと同じような光り方をする、とも言えます」と説明する。

また同氏は、人工的な明かりが自然界に影響を与える「光害(ひかりがい)」という新しい環境問題についても言及した。

「卵から孵化したウミガメの赤ちゃんが、ちゃんと海に帰れるのは、満月に照らされた海がそこにあるから。もし外灯や自動販売機のほうが明るければ、そちらに行ってしまいます。また、外灯が明るすぎて米が作れなくなったという話も聞いています。やみくもに街を真っ暗にしろ、というわけじゃないんです。景観や周辺環境に配慮した形で、経済活動を阻害しない範囲内で光とうまく付き合っていけたら。人間が人工的な光を手に入れてから100年ぐらいしか経っていないでしょう? まだ使い方を改善する必要がある、ちょっと考えようよ、ということですね」。

  • 星空保護区に認定されて以降、島でも光害に対する意識が向上。不必要な外灯を改修したり、光量の少ないオレンジ色の外灯に交換したり、といった動きが出てきたそうだ

取材協力: 竹富町