会社に属せず仕事をしていると、会社員は自営業の人に比べてお金の面で何かと優遇されていると感じる機会がよくあります。厚生年金や健康保険などの社会保険においてもそうですが、会社の福利厚生制度もしかり。会社によって福利厚生制度の種類や内容は異なるものの、より良い労働環境のなかで従業員がイキイキと安心して働けるため、多くの企業ではさまざまな制度を導入しています。

便利に使える会社の制度の存在を知らないため利用せず、損していること自体にも気づいていない人も案外多いようです。本連載では、そんな「意外と知られていない会社のお得な制度」を紹介していきます。今回は知っていればお得というより、知っておかないと損をしてしまう「傷病手当金制度」を詳しくみていきましょう。

  • 傷病手当金は、会社員が業務上以外の事由による病気やケガで就労不能になるなど、一定の条件に該当した際に払われるお金を指します

これまで紹介してきた数々の会社の制度は、福利厚生制度として実施されているものです。ただ、一口に福利厚生制度と言っても、実は「法定福利」と「法定外福利」の2種類に大別できます。

法定福利は厚生年金や健康保険、介護保険など、法律で義務付けられている福利厚生制度です。一方の法定外福利は実施が法律で義務付けられておらず、会社が任意で実施している制度のことです。例えば、社内預金制度は、実施するにあたって法律上のルールはありますが、実施すること自体は法律で義務付けられていない法定外福利になります。

今回紹介する傷病手当金制度は、法定福利の一つでありながら、法定外福利の側面も持つ場合もある、特殊な制度です。後述しますが、実は4割近くの人はこの制度を知らず、利用できるのに利用しなかったという報告もあります。いざというときに利用できるよう、正しく理解しておきましょう。

標準報酬日額の3分の2相当額が得られる

会社員ならば、通常は健康保険に加入しているでしょう。病院などにかかった際、3割の自己負担ですむという健康保険はとてもありがたい制度ですが、そのほかにさまざまな給付もしており、傷病手当金もその一つです。

傷病手当金は、「会社員が業務上以外の事由による病気やケガで就労不能となり、療養のために続けて3日以上会社を休み、給料が支給されない」場合において、4日目から最長1年6カ月まで標準報酬日額の3分の2相当額を得ることができる制度です。

標準報酬日額とは、健康保険料や厚生年金保険料の金額を求める基になる金額(標準報酬月額=おおよその月給額)を30で割った金額です。仮に標準報酬月額が30万円として、病気で30日間会社を休んだ場合で考えてみましょう。

30万円÷30日×2/3≒6,667円(一日あたりの傷病手当金額)×(30日-3日)=180,009円

すなわち、病気で休んだ30日間に給料が支払われなければ、健康保険から約18万円の傷病手当金が支払われるということです。

有給休暇など、休んでいる期間も会社から給料が支払われている場合は、傷病手当金は支給されません。ただし、給料の支払いがあっても傷病手当金の額よりも少ない場合は、その差額が支給されます。