会社に属せず仕事をしていると、会社員は自営業の人に比べてお金の面で何かと優遇されていると感じる機会がよくあります。厚生年金や健康保険などの社会保険においてもそうですが、会社の福利厚生制度もしかり。会社によって福利厚生制度の種類や内容は異なるものの、より良い労働環境のなかで従業員がイキイキと安心して働けるため、多くの企業ではさまざまな制度を導入しています。

便利に使える会社の制度の存在を知らないため利用せず、損していること自体にも気づいていない人も案外多いようです。本連載では、そんな「意外と知られていない会社のお得な制度」を紹介していきます。今回は「社内預金制度」を詳しくみていきましょう。

  • 自動的に預金できる「社内預金制度」の仕組みを理解しましょう(※写真と本文は関係ありません)

社内預金制度とは、会社が従業員の資産形成をサポートする制度の一つです。簡単に言うと、毎月の給与やボーナスから天引きして従業員の貯蓄を促す制度です。天引きした貯蓄分は会社が管理し、利息をつけて運用。従業員から払い出しの申し出があれば、それに応じて返還します。会社が銀行の役割をしているイメージですが、従業員から預かっているお金は会社の設備投資や事業の運転資金などとしての活用も可能です。

ただ、近年は福利厚生を充実させる企業が増える傾向にありますが、その流れに逆らうかのように社内預金制度は廃止方向に進んでいる状況です。厚生労働省が実施している「就労条件総合調査(平成26年)」によると、全企業のうち社内預金制度を実施している企業は、わずか3.6%にすぎません。平成11年には7.4%の企業で実施されていましたから、15年間の間に半数以上の企業が制度を廃止している計算になります。

社内預金制度を使うメリット

社内預金制度を廃止する企業が増えている状況を耳にすると、ネガティブなイメージを持ってしまう人もいるかもしれません。しかし、お勤めの会社に制度があれば、ぜひ利用したいメリットがあるのです。

■銀行預金とはけた違いの金利

福利厚生の一環とはいえ、社内預金制度は会社が自由に制度を作れるものではなく、労働基準法に基づき設定される制度です。制度の導入にはさまざまな制約があり、社内預金の金利に関しても規定されています。

あくまで会社の福利厚生ですから、会社によって金利の大小は異なります。それでも労働基準法第18条第4項の規定で、厚生労働省令で定める利率(下限金利)を下回ってはいけないというルールがあります。この下限金利は現在0.5%ですから、最低でも0.5%の金利になっているということです。

2018年11月現在の大手都市銀行の普通預金金利は0.001%。定期預金金利でも0.01%ですから、普通預金の500倍、定期預金だと50倍以上の金利がつく計算になります。非常に貯蓄性の高い預金制度と言えるでしょう。

■給与天引きで貯まりやすい

社内預金は給料やボーナスから天引きする制度です。お金を貯めようと思っても、よほどの強い意志がない限り、実行するのは案外難しいものです。社内預金を利用すれば、給料を受け取る時点ですでに天引きされているので、自動的に貯金が増えていくのは何よりのメリットです。

■必要なときに引き出せる

社内預金はいつでも出金可能です。出金は給与口座への振り込みとなる場合が多く、会社によっては払い出しの申し出から着金までに4日程度期間を要することもあります。ただ、従業員から請求されれば遅滞なく返還するよう、法律で規定されています。銀行の定期預金と比べても、流動性が高い預金です。