iDeCoは掛け金が全額所得控除という恩恵を受けながら60歳以降の老後生活費を効率よく貯めることができます。筆者は「iDeCoをやらない理由がない」と感じています。ただ、1つ気になる点は60歳まで引き出せない点があります。

もちろん、引き出せないからこそ、途中で使うこともなく、長期的に投資ができるという見方もできますが、iDeCoを始めようかどうか悩んでいる方や、毎月いくらぐらいの積み立てが妥当なのかと検討している方にとっては、「iDeCo以外の選択肢」もちょっと気になるところかもしれません。

  • 老後資金の準備をしていますか?(写真:マイナビニュース)

    老後資金の準備をしていますか?

つみたてNISA

非課税という点では「つみたてNISA」も魅力です。つみたてNISAの場合、iDeCoと異なり、積み立てた金額が全額所得控除になるわけではありませんので、その点注意してください。投資から生じる配当金や利益が非課税になる制度です。iDeCOも運用益などは実質非課税であるため、税制面だけで見た場合、iDeCoの方に軍配があがりそうです。

ただ、つみたてNISAは最長20年、毎年40万円まで投資をすることができます。今年投資した分は20年間非課税で運用できるため、老後資金への準備としても適しているといえます。しかも、つみたてNISAは金融庁が販売手数料無料、管理費用(信託報酬)といったコストが低いものなど、一定の基準を満たした投資信託が対象となっているため、つみたてNISAに選ばれているファンドはコスト面で優れていると言うことができます。

iDeCoの場合は運用リストの中に一部販売手数料がかかるものもありますし、アクティブ型のファンドなど管理費用(信託報酬)が比較的高いものもあります。そういったコストが高い分、優れた運用パフォーマンスが期待できる反面、コストが足かせとなり運用状況がさえないという展開も想定されます。

さらにはiDeCo自体、金融機関や国民年金基金連合会に支払うコストも考慮しなければなりません。このような見方をするとつみたてNISAも老後資金準備の柱の1つとなりそうです。

定期預金や年金商品

どうしてもリスクを取りたくないという人はiDeCoを始めることに躊躇することもあるでしょう。iDeCoにおいても元本確保型の商品が選べるとはいえ、年間のコストを考えればわざわざ口座を開設せず、銀行の定期預金や保険会社が提供する確定年金などの方が安心して向き合えるかもしれません。

全額所得控除という税務メリットも、当然一定の税金を払っている人が対象です。主婦、パートなどで収入が少ない方や住宅ローン控除など大きな減税効果を受けている人など、そもそも税金負担が生じていない場合は、よりそういった発想に及ぶこともうなずけます。

この場合はiDeCoが良いかどうか? という点ではなく、投資の必要性を感じているかどうか? ということにつきると思います。抵抗のあるリスクをわざわざ取る必要はありません。一定の収入があり、上手に支出管理ができて、いざという時の貯蓄も十分あるという人は、リスク商品に投資をすることなく年金と貯蓄だけでゆとりある老後の生活が描ける可能性もあります。

無理にiDeCoをはじめる必要はありませんので、リスクを取って長期的に資産を増やす必要性があるかどうか、じっくり検討してください。それからでも遅くありません。

株式投資

「やっぱり直接株を買いたい」という人も多いと思います。投資が好きな人は自分でどの銘柄が良いか分析し、買った株が大きく値上がりすれば、iDeCoで投資信託を買うより魅力に感じるでしょうね。指定された投資信託などでは、どうしても投資範囲は限られますし、株式のように短い期間で何倍、何十倍にも値上がりするといったこともあまり期待できません。

また、株式投資の場合、魅力的な株主優待制度もたくさんあります。老後資金という点では総合力でiDeCoが上回る印象がありますが、投資経験が長く、知識も豊富で、十分長期投資で成果を出す自信があるという人は株式中心に老後資金準備を行うことも1つのプランとなりそうです。

ただし、個別株は企業の破綻で価値がゼロになるリスクも。その点は投資金額の調整、複数銘柄に投資をするといった管理はぬかりなく。

自営業者は国民年金基金

iDeCoのベースとなっている確定拠出年金制度が始まったのは2001年。それ以前は、自営業者は国民年金基金や小規模企業共済などで自身の退職金準備を行うのが一般的でした。特に国民年金基金は第1号被保険者であれば誰でも加入できますし、掛金は全額社会保険料控除として税金の計算上控除することができることもあり、iDeCoとどちらにしようか? と悩むケースも想定されます。

国民年金基金とiDeCo、2つ合わせて月額68,000円まで加入できるため、それぞれ同時加入というのも1つの方法です。

国民年金基金は何と言っても1口目が終身年金であるため、公的年金同様、生きている限り年金を受け取り続けることができます。これは大きな魅力です。国民年金基金のホームページ上で1口目と2口目以降加入した場合の年金受取額など簡単に試算できますので事前に行ってみて、iDeCoと比較してください。

iDeCo同様、掛金が全額控除とお伝えしましたが、厳密にいうとiDeCoは「小規模企業共済等掛金控除」です。一方、国民年金基金は「社会保険料控除」です。控除名が違うとはいえ、どちらも全額控除。特に違いはないのですが、お子さんがいる場合は「児童手当」の所得制限を計算するうえで影響がでる可能性があります。

中学生まで1人1万円/月など子育て世帯には嬉しい「児童手当」ですが、一定の所得以上になると手当が5,000円に減額されます。所得制限は扶養親族の数等で細かく決まっていますが、審査所得は以下のようになっています。

審査所得=所得額-控除額-8万円(社会保険料控除等に相当する額として一律)

できるだけ児童手当を満額もらうためには審査所得を下げたいところですが、社会保険料控除は一律8万円という扱いになっているため、いくら控除が増えたところで、審査所得を下げる効果はありません。一方、iDeCoの小規模企業共済等掛金控除は上の式の「控除額」に算入できるため、掛金に応じて審査所得が下がることになります。

よって、iDeCoのおかげで児童手当が減らなくて良かった。ということも考えられますよ。

老後準備をバランス良く上手に

iDeCoは老後準備に適した方法の筆頭であると思いますが、それ以外の選択肢もそれぞれ魅力があります。iDeCoも上限額があるため、例えば会社員の場合、会社の企業年金制度の状況次第では年間240,000円、月額20,000円です。老後資金準備として少し物足りないという人もいるでしょうね。

「iDeCo以外は税務メリットがさほどないので、老後資金準備はiDeCoだけで」といったことは言わず、もしiDeCoの上限額以上に積立ができるのであれば、それぞれの特徴を踏まえ、上手にバランスをとって準備をしてくださいね。

筆者プロフィール: 内山貴博

内山FP総合事務所
代表取締役
ファイナンシャルプランナー(CFP)FP上級資格・国際資格。
一級ファイナンシャル・プランニング技能士 FP国家資格。九州大学大学院経済学府産業マネジメント専攻 経営修士課程(MBA)修了。