「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第91回のテーマは「お母さんに向いてると思ってなかった」です。

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最近、20代のころのことを振り返る機会があるのですが、20代のころは自分の40代が「子どもと猫と事実婚のパートナーと波乱はありつつも楽しく暮らしてる」とは思ってなかったな~なんて思うことがあります。

特に、自分が「お母さん」をやってるという事実に、たまに「すごい……お母さんやってるじゃん……」みたいな気持ちになることがあります。

私は初婚を焦ってた理由のひとつが「早く子どもが欲しかった」んですよね。でも世の中的には全然「お母さんタイプ」だと思われてませんでした。私が20代のころといえば、まだまだ「結婚=女子力」みたいな時代で、家事ができるとか、子どもが好きとかそういう「家庭的」と言われる女子がもてはやされていたわけで、私は仕事大好きだしまあ、全然家庭的なタイプではなかったです。

なので、私が今「お母さん」をやっていると「意外だったけど、すっかりいいお母さんになって」的なことを言われたりします。私自身もそれはそんな違和感はないです。自分もそうだよなーと思うので。子どもは苦手、人のうちのペットにも興味なし。友達や姉に赤ちゃんが生まれても抱っこできないタイプでした……。母性的キャラとはほど遠かったのです。

20代後半で、恋愛がうまくいかないときに「自分は甘えたいけど、人を甘えさせるのが下手」と思って、「弱きものを守る練習」としてフェレットを飼ったことがあります。基本的に小動物とかに興味がなかったけど、「このままではいけない! 責任持って自分より弱い存在と付き合う練習をしなければ!」というテンションで……。 

普通、ペットって「かわいい~~」と思って飼うものな気がしますが、私は生き物の世話が苦手でした。飼ってる間中ずっと「1カ月世話をしてなかったフェレットがケージの中にいる」という悪夢を度々見ました。ど、どんだけ苦手意識が強かったのか……!

しかし、フェレットのノロ蔵くんは8年生きて(フェレットにしてはまあまあ長生き)、大往生しました。「責任感で世話はできる!」と安心しました。そこまで苦手だってのに、なんで子どもを産みたかったのか? と言われると……動機は「好奇心」でした。子どもが欲しいというか、出産してみたかった……という感じでしょうか。

で、そんな私に結婚する前に「お母さんに向いてると思うよ~」と言っていたのが、現パートナー・ノダDでした。最近「なんでそう思ったの?」と改めて聞いたのですが……忘れてました。残念。そして実際に子どもを産んでみたら、私はまさかの「スーパー甘々」のいいなりお母さんでした。パートナーは「ここまで甘いとは思ってなかった」と言われました。

なんですが……「かわいくて許しちゃう」とかじゃ全然ないんです。実は。 いや、フェレットよりも全然かわいいとは思っています! でも「頼まれることが、苦じゃない」というだけなのです。

息子に「食べたくない」と言われれば「そうなんだ~」と思って受け入れる。「服を着替えさせてほしい」と言われれば「保育園では自分でやってるってことは、できないわけじゃない。甘えたいってことならまあいいか」と、とにかく「物理的に、心理的に可能」なので、断る理由がないって感じなんですよね。

これ、実は初婚に失敗して、離婚した経験が大きいんじゃないかな……と思っています。

初婚のときは「30までに結婚して早く子どもをつくらなきゃ」とか「結婚したら、毎日おいしい食事をつくらなきゃ」とか、全然家庭的でも母性的でもない自分なのに、勝手に「型にはまろう」としていたんですよね。それで、なんだかちぐはぐになって、苦しくなって離婚になってしまいました。

その後に「私が本当にしたかったことってなんだっけ」とか「自分が縛られてた規範って本当に正しいのかな」とか考え直したのです。この経験から、子どもに対しても「こうあるべき」みたいなものが無くなって、よくよく考えたら「食育にこだわって、子どもをしかりつけてご飯を食べさせるよりも、楽しく食事させたほうがいいんじゃない?」とか「大人になっても親に服を着せてもらうわけじゃあるまいし、まあいいか」とか許容範囲が大きくなったような気がします。

ちなみにこれ、今は息子だけでなく相手が友達だろうが猫だろうが同じです。昔は「甘えられるのが苦手」だと思ってたのですが、それはもしかしたら自分より上の立場の人に甘えられるのが苦手だった……のかもしれません。上の立場からの「甘え」って搾取とか、下に見られて敬意も感謝もないものがあったということが、年取ってからわかってきちゃったんですよね……。

我がパートナーとは最初は仕事相手で自分よりも上の立場でしたが、仕事の後に空手の後輩になってからのほうが仲良くなりました。下から上の「甘え」は感謝も敬意もあるので、精神衛生上受け入れやすいような気がします。自分が年取って「年上」の立場になって、スムーズにできるようになったというのもありそうです。

今も実際に「お母さんに向いてる」かどうかはわかりません。子育ての答えは子どもが大人にならないとわからないですよね。でも若いころの自己認識なんて、10年20年経って全然変わることがあるんだなと思うと、なんだか未来が楽になれるような気がします。20代のころにうまくいかなくて苦しんだことも、今の糧になっていると思います。

「向いてるか向いてないか」とかを自分で決めるよりも、「やってみたい」を大事にして日々試行錯誤するときっとそのうち「向いてる」ようになれるんじゃないかな? なんて今は思っています。

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著者プロフィール:水谷さるころ

女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)、『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。