「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第201回のテーマは「『なんで〇〇しないの』って言わないで」です。

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何かをしてほしいとき。どうしてそれをストレートにお願いする言葉が出てこないのでしょうか。つまり「なんで『なんで○○しないの』って言うのやめられないの」というメタっぽい発言になっちゃうんですが。どうしてなんでしょうね……。

我が家では「ダメ出し禁止」「かわいくお願いする」というルールがあります(連載24回)。ダメ出しワードの筆頭と言えば、「なんで○○しないの」ですよね。「なんでもっときれいに掃除しないの」「なんでもっと早く言わないの」「なんでお風呂入れてくれないの」とか、日々の不満を伝える時ついつい言ってしまうのが「なんで○○しないの」です。日々のタスクだけじゃなくて「どうしてわかってくれないの」とかも同じですね。

これを我が家では禁止ワードにしていて、「○○してほしい」とストレートに要望を言うようにする、と決めています。

しかし、これを決めていてもそれがなかなかできないんですよね。年単位で達成できていない……! これ、数年で改善するものでもないのかもしれません。大人同士である夫婦間では意識をしていて、だんだんとできてきているのですが……子どもが成長してきて、「できる」ことが増えてきたので、「できない」ことを指摘するときに、ついつい「なんで〇〇しないの」を使ってしまうことがあります。

そしてパートナーが子どもにこれを多用しがちです。子どもはこれを言われると「だって〇〇だから」と必ず理由を答えます。すると「変な言い訳しないの」などと言うのですが……だったら疑問形でダメ出しするのをやめたほうがいいですよね。

本当に理由が聞きたいなら、まず「〇〇して」とストレートに要望を伝える。それでもできないという話になってから、「どうしてだろうね」と話をすれば「変な言い訳」ではなくて前向きな話ができると思うのです。

とはいえ、私も何度も言っていることをやってもらえないときはつい言ってしまいます……。「なんで○○しないの」は「なんで(何度も言ってるのに)〇〇しないの」なんですよね。つまり「なんで」は本当は「何度も言ってるのに」にかかっているんですよね。「何度も言ったんだから、さすがにわかってくれているよね」という期待が裏切られると、優しく「〇〇して」というのは難しくなります。

これ、私は子どもに対しては「まだ子どもだし」とかなり期待値を下げているので、「なんで〇〇しないの」はそんな頻度では出ないのですが、パートナーへは出てしまいます。つまり、相手に対してどれくらい期待しているかにもよるんですよね。

期待が相手の能力や年齢に沿ったものであれば、ある程度許されるかもしれない。でも、相手が子どもだったり、下手すると幼児だったりしても「なんで〇〇しないの」って言ってしまうのは危険です。能力的にまだできないことを期待して「裏切られた」というのは、期待している方に問題があることになってしまう。

じゃあどこまでがOKで、どこからが「過剰な期待」なのか……判断するのは難しいので、相手が子どもでも大人でもやっぱり「なんで〇〇しないの」はなるべく使わないほうがいいと思っています。

しかしこの言葉は、親から子どもだけでなく、子どもから親に言うケースも多発するんですよね。子どもも親に期待している。なので、子どももこういう言い方をしてしまいがち。子どもが言葉が使えるようになり「なんで○○してくれないの! 」と怒り始めたときに、そうか……これは自然に出てしまう言葉なんだ、と思いました。

だからこれは練習や訓練が必要なんです。なので「あ! 言っちゃった」と思ったら、修正して改めて「○○して」と言うようにしています。失敗したら、もう一回! みたいな感じです。

ただ、「○○して」というのも圧のある言い方だと思われると(連載49回)また話がこじれます。「命令された」と思うとまた人は防御反応を取ってしまい、素直に話が聞けなくなってしまうこともあるのです。なのでやっぱり何かしてほしいことがあるときは「かわいくお願いする」のが一番いいなと思っています。

ちょっとくらいの「なんで〇〇しないの」が許される関係というのも大事だとは思いますが、なるべく意識して言わないくらいがちょうどいいような気がします。

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著者プロフィール:水谷さるころ

女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)、『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。