「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第199回のテーマは「失敗しても怒らなくていい時もある」です。

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まず前提として、我が家は夫婦ともに在宅で仕事をしています。家計は夫婦割り勘で、家事も分担しています。パートナーが炊事、私が掃除やハウスキープを担当しています。大人が2人家にいて、子どもが1人なので、家事育児の負担はワンオペ育児に比べると少ないものだと思っています。

とはいえ、私も仕事が忙しくて睡眠時間を削って仕事をしたり、パートナーが長期で家を空けたりすると余裕がなくなります。なのでいつも気持ちに余裕があるわけではないのですが、それでも比較的子どものすることに落ち着いて対応できている環境だと思っています。

なのですが……。パートナーは息子が食卓でお味噌汁をこぼしたり、食べるものを落としたりすると、子どもに怒っていました。パートナーいわく「せっかく作ったものを台なしにされたらイヤだ」というのが理由だそうです。

我が家の食卓はちゃぶ台&こたつなのですが、冬の間はこたつ布団があります。なので、こぼされるとこたつ布団が汚れてしまうことがあります。それを防ぐためにカバーがかけてあるのですが、こぼれ方によっては布団も汚れてしまいます。その汚れたカバーやこたつ布団を洗うのは私の役目です。カバーはまだしも、こたつ布団を洗うのは結構な手間なので、タスクがパンパンのときに大きめの「こたつ布団を洗う」が足されたら「も~~! 」と怒る気持ちになっても仕方ないかなあと思うのですが……。パートナーは洗濯担当ではないので、タスクが増える負担はありません。なのになんでそんなに息子に怒ったり、叱ったりするんだろう……? と思っていました。

なので「こたつ布団洗うのは私なのに、なんで怒ってるの? 」とじっくり聞いてみると、「あれ……そういえばなんでさるころは怒らないの? 」という感じのことを言われました。私はまず、普段は食事を作っていないので「せっかく作ったのに」という気持ちはありません。とはいえ、自分が作った日にこぼされてもあまりがっかりしたり、怒ったりもしません。どうも、パートナーと私では「誰かのために何かをする」ということに対しての思い入れが違うようなのです。

パートナーはどうも潜在的に、「喜ばれたい」から相手のためにやっていて、私は「必要」だから相手のためにやっているようなのです。なので、私は自分が用意した食事をこぼされても残されても全く感情に影響がありません。でも、パートナーは「せっかく作ったのに」となってしまうんですね。

パートナーに「じゃあ私がお味噌汁こぼしたら、どういう気持ち? 」と聞くと、「そんなに怒らない」とのこと。それはたぶん、パートナーにとって大人がこぼすのは不慮の事故的な感じで受け止められるからだと思うのです。どうして子どもにもそう思えない? と聞くと、「わからない」とのこと。

私は大人も子どもも同じように、こぼしたくてこぼす人はいないと思っています。失敗したくてしてるわけじゃなくて、失敗してしまうこともある。という考えです。そういう話をパートナーとじっくりしたところ、パートナーはどうも「子どもが失敗したら叱る」という行動がパターン化していたようなのです。

でも、失敗したからといって叱る必要があるとは限りません。そもそも、子どもだって赤ちゃんでなければ「失敗してしまった……」と自覚していて、がっかりします。そこに追い打ちをかけるように叱らなくてもいいのでは? と私は思ってしまうのです。

「道路に飛び出す」など命にかかわるような失敗なら別ですが、視野が狭くて手先が器用でない子どもが何かを落としたり、倒したりするのはある程度仕方のないこと。もちろん「失敗しても全く気にしない」子どもに育てるつもりはないので、「次は気をつけてね」と声掛けはします。失敗しやすい行動バターンをしていたら「そこに置いたら倒れるよ」とも言います。

私は大きな声を出したり、キツく叱ったりするのはそれが必要な時だけでいいと思っているので、そういう話をしたらパートナーは「そうかもしれない」と共感してくれました。思考って、あるタイミングで「これはこういうもの」と認識してしまうと、パターン化しちゃうことがあるんですよね。

パートナーの中で、どのタイミングで「子どもが失敗したら叱る」という行動がパターン化したのかまではわかりませんが、改めて考えてみたら「それをする必要はないかも」と気がついたようなのです。そして気がついたら、子どもが失敗をしても必ずしも「叱る」わけではなくなりました。気がついたことで行動が変化したのです。

行動って、必ずしも「性格」「価値観」で決まっているわけではないんだなと思いました。自分にもそういう「こういうときはこうする」となんとなく思い込んでるパターンがあるかもしれない……と思うきっかけにもなりました。

子どもは親に対して言い返したり、理不尽なことを指摘したりすることがなかなかできないので、自分も気をつけていこうと思っています。

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著者プロフィール:水谷さるころ

女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)、『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。