「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第189回のテーマは「尊重=言いなりではない」です。

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私は、子どもの意思を尊重する子育てを心がけています。

というと、なんかすごくいい親を目指しているっぽい感じなのですが、私が子どもに対して「子どもは別に生まれたくて生まれてきたわけじゃないんだし」と思っている、というのが一番の理由です。わが家は不妊治療で子どもを授かりました。お金と時間をかけて妊娠したわけですが、意識としてはかなり「親が子どもを欲しくて頑張って作った」と認識しています。

なので、子どもに対して「わが家に来てもらった」という意識がかなりあります。だったら快適に過ごしてもらいたいと思っているんですよね。

パートナーはそこまでは思っておらず、子どもは親に養育されているのだから、ある程度親の指示に従うべき、という規範意識で生活しています。なので、私の行動はパートナーにとっては「子どもを甘やかしている母親」というように感じられるようです。実際に甘いとは思いますが……。

しかし、一方的に何かしらの規範や親の都合を押し付けても、大人になってしまえば「自分がこうしたい」という人生を歩むものだと思います。実際にものすごく厳しく育てられ、本人の意思をほとんど聞いてもらえずに育ったタイプの人で、大人になってからの親子関係がよくないことも大いにありますよね。とはいえ、将来大人になった息子が親と仲良くしてほしいから甘やかしているという、わけではありません。「話を聞く」のは本人の自己肯定感にも大きく影響していると思うからです。

私は「休日何をする、どこに行くか」や「何を食べたいか」など、細かいレベルで子どもの要望を聞きます。ちゃんと聞かないとごねられて面倒……というのもあるのですが、私が子どものころあんまり聞いてもらえなかったので、「子どもの気持ちを聞いてあげたいな」と思っているのが大きいです。

私自身は4人姉弟で育ちました。さすがに4人もいたら子ども全員の意見を聞くのは無理です。その日どこに行くか、何を食べるかという細かいことに関してはほぼ聞いてもらえませんでした。もちろん、進学などの自分自身の問題に関しては要望を聞いてもらえたので、親には感謝しているし不満はありません。でも、日々の生活の細かいことを聞いてもらえたら……という気持ちを、ひとり暮らしを始め、社会に出てから感じることがありました。

そこに至るまで、自分が本当は何が好きで何が苦手か、細かくわかっていなかったんですよね。そして自己肯定感もすごく低かった。人から「自分の細かい要望を聞いてもらえる」と全然思っていなかったのです。もちろん、共同生活において、他者に合わせることはとても大事です。でも自分自身をよく知って、得手不得手を理解した上で協調していくほうが、人とはよりよい関係になれるのではないかと思うのです。

なので、小さいうちから息子が自分の好みや苦手を理解できるように、ひとつひとつ確認するように聞いてあげたいと思っています。

かといって、全部の要望を聞くわけではないです。子どもの価値観は狭く、その狭い価値観の中での選択だけで生きるような人間にもなってほしくはない。なので、親の意思や都合もきちんと聞いてもらって、他者に合わせることで自分の知らなかった世界を知ったり、きっかけを掴んだりしてほしいと思っています。……って、今回のエピソードは実際は息子を親の買い物に付き合わせるということに関してのやりとりなのですが!

いくら尊重するとはいえ、買い物くらい付き合ってくれ……息子よ! とは思います。お互いが大人ならば、時間の使い方を尊重するということでどこかで待っていてもらうんですが……。でも、興味がないことでも一緒に行動することで知ることも増えるわけですから、付き合わせることも大事ですよね。この日のお買い物のメインは「お皿を買う」でした。子どもはお皿買うことに興味がなくとも、将来お皿を買う時はきます。そのときに「お皿? どうやって選ぶの? 」ってなったら困りますし、「自分以外の誰かが買えばいい」みたいになるのも困ります。生活に必要な行為に関しては、子どもを付き合わせるのも大事だなあと思います、

どこまで個人を尊重して、どこまで人に協調させるかはバランスだと思います。今回は親の買い物に付き合ってもらったあと、本人が「やってみたい」と言ったボウリングに行きました。私自身はかなり久々のボウリング。子どもに付き合うと親の世界も広がるなと思いました。

親子間のコミュニケーションも一方的ではなく、常にお互いが尊重しあえる関係であるといいなと思っています。

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著者プロフィール:水谷さるころ

女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)、『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。