「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第185回のテーマは「いい甘えとネガティブな甘え」です。
息子も小学生になってくると、だんだんとあまりいいとは言えない態度を取るようになってきました。
小1って「もう俺たちは保育園児(幼児園児)みたいないい子ちゃんじゃないぜ! 」なんてことをアピールしたいお年頃なんでしょうか……? ちょっと悪い言葉を使ってみたり、悪い態度を取ってみたりしたいのかな? と思うことがあります。それ自体は成長ですし、今のところは許容範囲なのですが、どう対応すべきかというのは悩むところですよね。
そもそもわが家では、「やってくれて当たり前」という態度はNGです。「ねえ、見たらわかるでしょ? やってよ」みたいなお願いの仕方もNG。私がそれを受け入れたせいで、将来息子のパートナーになる人がそんなアプローチをされたらと思うと、責任を感じてしまいます。なので、親しい相手にも「ちゃんとお願いできる、ちゃんと甘えられる」人間になってほしいと常々思っています。
私達世代より上の男性って「おい」って言ったら、女性がなんでも察して動いてくれる。みたいなことが許されていたよな……と振り返って思います。ひと昔前は、「おい」って言われてわからない女は「察しが悪い」「気が利かない」と平気で言われる世界でしたよね。家庭内でも、男の子がぶっきらぼうだったり、母親とまともなコミュニケーションを取らなくても「男の子ってそんなもんよね」と許されたりしてきた時代があったと思います。でもそれって、男性が女性を「舐めている」ようでいて、女性は男性を「そんなもん」と舐めているというような、お互いがネガティブな甘えの関係だったんじゃないかと思うのです。
さすがに21世紀になってから20年も経って、今はそういう関係性は非常にバランスが悪いと思う人が増えたし、将来もそういった関係は今よりも「よくない」とされていくだろうと思っています。
そんなわけで、断固としてわが家では「ネガティブな甘え」行為は許さない……という姿勢でいます。前回、わが家では信頼関係を高めるために「常に相手の求めに応じる」という姿勢であることを描いたのですが、それと同時に息子にも「それに見合う態度」を取ってもらうようにもしています。
私がここをすごく気をつけているのは、いつもの通り初婚の失敗が元です。初婚の時は私がすごく「結婚したい! 」と思って、相手を説得してした結婚だったので、私からお願いすることがあまりできず、相手のことを常に察して快適に過ごせるように頑張る結婚生活をしていました。
しかしいくら焦っていたからって、経済的には自分で自分の分を稼いで払っていたのに、なんで一方的にこちらが尽くすという、非常にバランスの悪い関係を作ってしまったんだろう……? 私はこの先ずっと、誰にも甘えず頼らず生きていかなければならないのかと思ったら、あっという間に絶望してしまったのです。そしてそれに気がついてしまったら結婚生活を続けることはできず、たった3年半で離婚をしました。
元々フリーランスを長くやっている私は、仕事では「舐められたら終わりだ」と思ってるところがあって、仕事相手には常に気を張っていたのですが、なぜか親しい相手には「なんでもしてあげたい」となり、気がついたら一方的にやってあげる側……となってしまいがちでした。
そういった経験があるので、今は常に「相手から甘えられること」と「自分が甘えること」に対して、かなりセンシティブになっています。家族の中で一方的にどちらかが甘える関係になってしまうと、それが重荷になり関係を快適に続けられないと痛感しているからです。
とはいえ、まだ自分のこともすべて自分でできるわけではない子どもから物理的に「何かしてもらう」ということは難しい。でも、きちんと敬意を払ってもらうことは可能です。なので、常々「お願いするときはきちんとお願いしてね」伝えて「怒らないで言う」「ちゃんと言葉で言う」ということを実践してもらっています。
親が庇護下にある子どもに対して「感謝しろ! 」と強制するとハラスメントになりかねませんが、だからといって感謝や敬意が感じられない態度を許すわけにはいきません。家族のコミュニケーションが、子どものコミュニケーションの礎になると思うと「練習」を怠ってはいけないなあと思ってるのです。
でもこれって子どもだけが練習をしてるだけじゃないんですよね。親だって「正解」を持っているわけじゃない。子どもが成長するにつれて変わっていくので、親も「幼児向けのコミュニケーション」から「子ども向けのコミュニケーション」など、アプローチを変えていかなきゃいけない。徐々に変わっていくのに合わせなければならないので、もちろんうまくいかないときもあれば、失敗しちゃうこともある。なのでこちらもいつも「練習」のつもりで、やっています。
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著者プロフィール:水谷さるころ
女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)、『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。