「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第167回のテーマは「子どもに頭を冷やしてもらう」です。

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前回に引き続き、親離れ子離れの練習の話です。

私は、子どもが小さいうちは「能力的にできないことをやらせない」という方針でした。幼児期は前頭葉が未発達で、我慢や理性的な行動がまだできないと言われています。前頭葉が発達してくるのは5~6歳以降、ということでそれまでは息子にあまり我慢はさせていませんでした。

未発達な幼児期に、大人が大きな声を出して脅したり、恐怖で子どもをコントロールしたりすると、子どもの脳や心に大きく傷を残してしまうこともあるそうです。2歳児が飲み物を倒したり、興味本位でいたずらしたりてしまうのは、「親を困らせるため」ではなく、ただ未発達なだけです。

昔は「しつけ」という名で、子どもを強制的に言う通りにすることも許されましたが、今では許されることではありません。私はこれは「道徳的、道義的」というよりは「脳の発達に準じて訓練するべき」という、合理的な話だと思っています。感情のコントロールやできないことをできるようにするための訓練は、成長の段階に合わせなければ虐待にもなりかねないと思います。

というわけで、幼児期にはパートナーからは「激甘母さん」と呼ばれていた私なのですが、私は甘いわけじゃなくて「成長のレベルに合わせている」だけだったのです!

そんな息子も、現在は小学生になりました。保育園の年長さんから徐々にできるであろうことはやらせていましたが、今は小学生レベルに引き上げています。最近一番気をつけているのは、「感情のコントロール」です。

幼児期であれば、息子が感情的になればその気持ちを受け止めて、原因を解決してあげていました。しかし小学生になった今、ずっとそれを続けるわけにはいきません。

我が家では、デジタルデバイスの使い方を練習させるために「チケット制」を導入しています。デジタルデバイスを使用できるチケットは1枚20分。それをゲットするためのミッションがいくつかあり、チケットを計画的に使うようにしています。

とはいえ、小1男子にそんなことがうまくできるはずもありません。前頭葉の働きのひとつに、「後々のメリットを考えて、目先の欲望を我慢する」という選択ができる、というものがあるらしいのですが、6~7歳児は幼児よりは成長しているだけであって、大人ではありません。なので「目の前のチケットを早々に使ってしまい、やりたいことができない」という事態になることがあります。

本人が頑張れるときは、ワークをやったり本を読み切ったりと、「チケット稼ぎ」ができるのですが、「やりたくないワークしか残っていない」などどうにもならないときはあります。そうすると、癇癪を起こしてしまうことがあるんですね……。

幼児のときは、「まあいいか……まだ無理だもんね」と、泣けば許されることもありました。しかし、この先もそれを続けることは息子のためにはなりません。もちろん、「計画性」は小1が一人で訓練できることはないので、息子に「今、チケット使わないほうがいいんじゃない? 」「あのワーク進めておけば? 」「そんな動画見てチケット使っていいの? 」とか、声はかけています。漫画の中で息子が困っている事態は、それらの忠告を無視した結果なんですよね。

泣いても喚いても、その事態は解決しない。ということを体験してもらわないといけません。でも、正直泣いている子どもが目の前にいるのって……めちゃくちゃストレスなんですよね。子どもが親の前で泣き続けると、「目の前にいる母親にも、自分の悲しさをわかってもらいたい」ということになってしまう。本当に大変なときは一緒に受け止められますが、親の忠告を無視して息子が自分で引き起こした事態については、「その気持は受け取れません」となります。

ということで、最近はそうなったら別の部屋で泣いてもらうことにしています。原因がなんであれ、「私がストレスだから泣くな」と言ってしまうと、泣くことを抑圧してしまいます。泣いたり、悲しい気持ちを表したりするのはとても大事なことです。昭和育ちのパートナーは「男は泣くな」と育てられたせいで、自分の感情を自分で捉えることがとても苦手でした。だから、息子には存分に泣いてもらいたいし、感情を抑圧しないでもらいたいと思っています。

でも、母親がそれを全部受け止め続けることもできません。なので、一人で泣いてもらいます。……って、これ自分が子どものときも「お仕置き」で一人暗い部屋に入れられたことあるわ~と思い出しました。とはいえ、パニック状態になった子どもをクールダウンさせるために一人にする、ということは現在も子育てにおいては有効な手法とされているようです。

実際に一人になると、落ち着きを取り戻すことができます。落ち着いてから話をして、その後気持ちに寄り添うようにしています。パニックになって泣いている子どもを目の前にすると、自分も感情的な対応をしてしまいそうになるのですが、別室に行ってもらうようにしてからはこちらも落ち着いて対応ができています。

ちなみに息子に聞いたら「大きい声に対抗して大きい声を出してくるお母さん」と「冷静に寝室に仕舞っちゃうお母さん」どっちも怖いそうです。ちなみにお母さん側としてもどっちをやっても疲れます!

息子が感情をコントロールできるようになる日まで……がんばります。

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著者プロフィール:水谷さるころ

女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)、『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。