「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第165回のテーマは「夫婦でSNS投稿の感覚が違う問題」です。

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我が家は、夫婦揃ってSNSをはじめとしたネットでの情報発信をしています。私とパートナーは、SNSは基本相互フォローです。世の中には家族とはSNSで繋がりたくないタイプの人も多いですが、我が家はお互いが営業用のオープンアカウントだったり、共通の知人が多かったりするので、お互いのネット活動が見られる状態になっています。

我が家は2人共実名顔出しアカウントなので、基本的にはかなりオープンなほうです。フリーランスなどの自営業者にとってはSNSは看板みたいな役割もあるんですよね。SNSでバズるとか、フォロワーをたくさんあつめて、という使い方もありますが、どちらかというと私たちは「開業してます」という看板を出す目的のほうが大きいです。

「この人に仕事を頼みたいな」と思った人がアカウントを見て、10年前で更新が止まってたら「あれ、この人に仕事頼んで平気かな……? 」ってなりますよね。そういった意味で、「今日も元気に営業中! 」みたいな用途としてSNSを使っています。

なので別にバズらなくてもいいし、活動告知や自分の興味のあることを「お品書き」のように適度に更新するような使い方をしています。夫婦ともにSNSの使い方についてはだいたい似たような感じなので、そこに齟齬はあまりありません。

とはいえ、問題になるのが「何をどこまで公開するか」という情報の線引きです。ここが微妙に違うんですよね……。

私からすると、パートナーはかなり「ゆるゆる」です。家の場所がわかるような投稿をしてしまうし、旅行中にリアルタイムに投稿もしてしまう。「こちらは知らないけど、私たちのことを知っている相手が見ている」という感覚がかなり薄いと感じます。この辺は個人の感覚にもよると思いますが、やはり男女差もあるんじゃないかなあ……と思います。

私は見知らぬ相手からの性的なからかいや、痴漢被害を受けた経験があります。「世の中にはこんなことする人がいるの?! 」と思うような体験をしたことがあるんですよね。自分の想像を超えるようなことをする人がいる、というのを知っている。これがあるのとないのでは、警戒心に差があると思います。

子どももできた今、守るべきプライバシーは自分たちだけではありません。できれば家を特定されたくはないし、そのヒントを大量にネットに残したくない。でも、いくら口でパートナーに「そういうのはやめてほしい」と言っても、してきた体験が違うので肌感覚が違うんだな……と思います。

とはいえ、本当に加害的な人に狙われた場合は、ネットは関係なく被害にあうときはあいます。なので「ネットをやめる」などは根本的な解決ではないと考えています。ネットやSNSのメリットを考えつつ、ネガティブな要素を減らしたい。

偏執的な加害者を想定して何もかもやめるのは、そういった人たちに負けているような気もしてしまいます。基本的には加害者が悪いのであって、必要以上に自己防衛したり、自分たちの落ち度を気にしすぎたくないし、できれば楽しく使っていきたいと思っています。

そのためには、やはりバランスが大事。何もかも無警戒に情報を漏らすのは危険です。そもそも、加害的な人だけが人の生活を侵害するとは限らないからです。「好意から」「よかれと思って」「嫌がられると思わなかった」という人が、「いつも○○というお店にいるって投稿しているので、来ました! 」みたいなことになったら? その人と気が合えばハッピーですが、全然気が合わない人だったら……? などと考えると、やはりある程度のプライバシーを守る感覚は必要だと思います。

ちなみに私も今まで、うっかりGPS情報付きの写真を公開していたり、テレビ番組に出たときにバックに自宅住所の番地がばっちり映っていたり……と、「ぎゃー」っとなるような体験があります。それでも我が家に勝手にやってきた人はいなかったし、具体的な被害にあったりはしていません。しかしそれは、ただ運がよかっただけだとも言えます。実際に、漫画家の方の体験談に「家にファンの人が来てしまった」というような話もあるので……。

とはいえ、私自身は顔出しして活動しているので、街中で「さるころさんですよね」と声をかけられたこともあります。今まで私に声をかけてくださった人たちは、みんな礼儀正しくよい人達ばかりで、「声をかけてくださってありがとうございます! 」という気持ちになりました。なので、情報を公開すること自体が悪いことだとは思っていません。

パートナーとしては、「その辺は大丈夫なのに、ここはダメなの? 」という線引きがわからないんですよね。なので、丁寧に細かく「ここは良いけどこれはダメ」と伝えていくしかないと思っています。

子どもの顔出しについても夫婦で話し合っています。我が家は、「顔が映ってなければOK」「リアルの友人限定ならばOK」ということにしています。ここの辺の線引きも、それが正しいとか安全ということではなくて、お互いが「これならいいか」というところを確認しあう感じです。

世の中には、「友人限定でも中にどんな人がいるかわからない」と、絶対に家族の写真を載せないという人もいます。それはお互いの感覚を尊重するべきで、どちらかが「自分の感覚と違う」ということでジャッジするようなことではないと思います。私を見て「なんでそんなに情報を出せるの? 」と思う人もいれば、私から見て「なんでそんなに情報を出しちゃうの? 」と思うような人もいます。

でも、みんなそれぞれの感覚でやっているわけです。なので、あくまでも「家庭内でのコンセンサス」が必要なのであって、家庭ごとのルール設定を尊重するのがベストだと思います。

ちなみに、パートナーの顔入りで投稿するときは必ず本人の了承を得ています。一緒に暮らしている人しか撮れない写真の中には、「こんな顔・こんな格好公開しないで」っていうのはありますよね。家庭内でのコンセンサスは子どもも大きくなってきたので、子ども本人も含めて話し合っていきたいです。

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著者プロフィール:水谷さるころ

女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)、『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。