「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第15回のテーマは「違うタイプの2人が一緒にいるので」です。

  • なぜ、結婚するのか?

結婚って、どうしてするんでしょう?

といきなり根本的な疑問ですが、「結婚」というかパートナーと一緒にいることのメリットには何があるかなーと考えることがあります。

生活するうえで協力し合えるとか、役割分担するとか、一緒に子どもを育てるとか色々あると思います。私はパートナーといるメリットの中に「自分が苦手なことを担ってもらえる」があると思っています。

「そんなの当然じゃん」って思う方もいるかもしれませんが、そう思うのは、かなり幸せなことだと思うんですよね。なぜなら、私の初婚はそうじゃなかったので……。

初婚のときの自分の理想は「相手に多くを求めない」でした。20代のころの私は、付き合う男性をスペックで選ぶことがすごく「不純」なことだと考えていました。「お金持ち」とか「有名」とかそういうことで人の価値を決めるなんて、人としてつまらない! と思っていたのです。

「生活するうえで便利な相手」を選ばないというのは、一見「心根だけを見る」的な、いいような気もするんですが、たぶん若さゆえの「理想」とか「潔癖」な感じですよね……。それが理想だからってスペックを考え過ぎないのも問題があります。

私は初婚で何も任せられないと思う相手を選び、実際にほとんど何も任せませんでした。ひたすら、お世話するのが妻の役目、と思っていたのです。

今考えれば「なぜ?! 」と思うのですが、たぶん根本の自己肯定感が低くて、誰かの役に立っていないと不安だったんですよね。お世話をする限りは相手の役に立っているわけで、安心できます。それでどんどん勝手に世話をし、勝手に抱え込み、キャパシティを超えて勝手に自滅したと思っています。

それを反省して再婚のときは、「何かを任せられる相手」を選ぶことにしました。離婚という挫折を経て、素直に「弱い自分」を受け入れることができたのです。そして今は意識して「人に任せる」ことにしています。

もちろんすべて任せるわけではなく、自分が得意なことは自分が担い、自分が苦手なことを相手にお願いします。私とパートナーのバランス的に、とくに補い合えるなぁと思ってるところは「対人関係」です。

パートナーは基本的に人に対して警戒心が強いタイプで、私は警戒心が薄めです。そしてパートナーは人に対して「自分と同じくらいの能力」を期待してしまうタイプで、私は「他人は他人」とかなりドライなタイプです。つまり、パートナーは他者への評価がちょっと辛く、私は結構甘いです。

なので、対人関係で相手に苛立ったり怒ったりするのは、パートナーのほうが多いです。彼はそれを自分でも気にしていて、できれば怒らないようにしたいと意識しています。私は彼に比べると、他人に対しては怒ることが少ないので、いつも「見習いたい」と言われます。

でも、警戒心が強いほうがちゃんと人を見ているんですよね。私が「いいじゃんそれくらい」「大丈夫」と思って気にしていなかったようなタイプの人が問題を起こすことがあって、そういうときは「パートナーの感覚が正しかった……」と反省することしきり。

何回かそういうことがあったので、最近は迷ったらパートナーに相談して自分の行動を決めています(問題と言っても、誰と誰を何の遊びに誘うべきかとかそういうレベルの話なのですが! )。

初婚で失敗したころから比べると、自分の中の変化を感じます。

「信用したり、頼ったりできる相手」と一緒にいること。これが私の中で一番の「結婚のメリット」だと思っています。この先もお互いにとってそういう相手でいられるように、ケンカしたり話し合ったりして誤差を修正していきたいなあと思っています。

著者プロフィール:水谷さるころ

女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。