「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第136回のテーマは「隣の芝生は青いけどなるべく気にしない」です。

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第48回「息子は将来ミュージシャン!?」でも書きましたが、私の息子は「読む」ことの発達が早く、何かを読むのが好きです。

1歳になって歩けるようになると、とにかく車のナンバープレートに近寄り、文字を指さしてました。なので、私は「0だよ」とか「1だよ」と、ずっと読まされていました。「車じゃなくて文字が好きな子どもなんているんだ……」と思っていたのですが、そんなことを繰り返していたら、2歳になる前に数字とひらがなを読み始めました。ナンバープレートには数字とひらがなが書いてあるので、ずっと見ていたらわかるようになったようです。

その後もどんどん読めるようになり、6歳の現在はおそらく小学6年生までの漢字はほぼ読めます。そしてローマ字と英語もそれなりに読めます。私自身は全然「読む」ことに興味のある子どもではなかったので、「読むのが好き」という子どもがいるということにもビックリしました。

文字が読めると、色々なことを認識するのが早いんですね。時計やカレンダーも読めるようになると、世界に時間の概念があることや曜日があって月があることもかなり早い段階で理解していました。こうなると、わりと周りから「頭のいい子」みたいに扱われることがあります。

しかし、パートナーは「自分もそういう子どもだったけど、別に普通に育ったよ」と言っています。本を読み出すのが早いと、周りは「将来有望」と言うことが多いのですが、同じように3歳から本を読んでいたパートナーは「オレは別に学者にも大臣にもなってないじゃん。そんなもん」と言っています。

そんな息子を育てている私は、「子どもに先入観を与えない」ように細心の注意を払っています。私自身はあまり勉強ができないタイプの子どもでした。年の離れた姉に「なんでこんなこともできないの? 」と言われたり、親に「お姉ちゃんは勉強できたのにねえ」と言われたりして、「ああ、私は勉強できないんだ。バカなんだ~」と思ってしまったんですよね。

息子を産んでから、子どもの学習方法に関する本を読んだら、「得意なことととても苦手なことがあるのは当然で、苦手なことをどう補うか」という話が書かれていました。それを読んで、「私も早く気が付きたかった! 」とすごく思ったんですよね。私は自分が、「別にバカじゃない」「得意と不得意があるだけ」と気が付くのにかなり時間がかかりました。学生時代は「私はバカなんだな」と思ってしまい、苦手意識が大きくなり、色々なことを乗り越えるのにとても苦労をしてしまったのです。

そんな自分の経験から、「子どもって、わりと簡単に刷り込みされちゃうものなのだ」思っています。そして、それが自分のになったりしてしまう。でもそれはネガティブなことだけではなくて、「あなたは頭がいいね」というのも同じなんじゃないかな? と思うのです。今すでに息子は失敗を嫌がる傾向があります。「自分は○○なんだ」と思ってしまうことで、何かの可能性を阻んだりする状況を作りたくない。

逆に「息子さんはすごいですね」とか言われたときに、「いや~たいしたことないですよ」とか「そのうち普通になっちゃいますよ~」などを子どもの前で言うのもNGにしています。過大評価も過小評価もなし、ただありのままをそのままに……! ということに心を砕いています……が、難しいです。

親としては、人より発達が早ければ期待はしてしまいます。それに「私がもっとちゃんと評価してたら、この子はもっとできたかもしれない」と、チャンスを潰していないかどうかも心配になります。親が冷静に子どもを見ることは、本当に難しいなあと思っています。

と、ここまでは息子のできることの話なのですが……。もちろんできないこともあります。息子は保育園では絵を描くのですが、家で親と一緒にやっている「ワーク」で絵を描く課題が出ると、すごく嫌がるのです。これは私が結構気にしていることのひとつです。

最近息子を見ていてよくわかったのは、絵を描くことが苦手なのではなくて、「答えのないこと」が苦手なのだということ。つまりお手本があるものはうまく描けるし、何を描いたらいいかハッキリわかっているものは描けるのです。

「保育園でみんなで育てたお花を描きましょう」だったら、目の前に正解があるので描けるのですが、「大きくなったらなりたいもの」とか「自分の大好きなものを描きましょう」と言われると、とたんに「え? 何を描いたらいいの? 」となってしまいます。

私自身は、子どもの頃「正解」のあるものなどがむしろ苦手で、「自由にやっていい」と言われた時だけイキイキするタイプだったので、「正解がないとダメ」という事態に「どういうこと? 」と、すごくうろたえてしまうんですよね……。

なので私はついつい、自由な発想で絵をのびのび描いてる子などを見ると「いいな~」と思ってしまうのです。でも同時に、これは子どもの読解力に悩むお母さんだったら、うちの息子をみて「いいな~」と思うのかもしれない……とも思います。自分の子よりもできる子を見て「いいな」と思ってしまうのは、ある程度もう仕方がないのかもしれません。でも完璧な子どもがいたらむしろコワイですよね。

子どもにとっての、親の立ち振る舞いの「正解」は子どもによって違います。だから、模索していくしかないのだろうなと思います。親のエゴや欲を自制しつつ、子どもにとってよりよい環境を与えられるように、子ども本人ともよくコミュニケーションをして、試行錯誤していくしかないのかな……と考えています。

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著者プロフィール:水谷さるころ

女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)、『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。