医療保険は、健康保険の対象でない支出に備える役割

医療保険は、病気やケガで入院したら「1日あたりいくら」という形で入院給付金が支払われ、手術した場合は手術の内容によって「1回いくら」という形で手術給付金が支払われる保険です。

日本では、すべての国民が何らかの公的健康保険に加入しており、病気やケガで治療を受けたり入院したり薬を処方してもらったりしたとき、患者が自己負担するのはかかった医療費の一部で、残りは健康保険から支払われます。自己負担割合は、70歳未満の人の場合3割です。また、1カ月の自己負担額には上限があり、どんなに医療費がかかっても70歳未満の人(高所得者を除く)は月9万円弱以上の支払いが生じることはありません。

このように、日本は世界的にみても公的健康保険が手厚いので、病気やケガで医療費の負担がものすごく重くなるということは、基本的にはありません。

ただ、入院するとなると健康保険の対象でない支出も出てきます。例えば、入院中の食事代の一部負担額、パジャマやタオルなどの日用品、雑誌やテレビカード代など。また、お見舞いに来る家族の交通費もあるでしょう。患者の希望で個室などに入った場合は、差額ベッド代もかかります(病院の都合で差額ベッドを利用したときは、差額ベッド代は不要です)。

医療保険はこうした支出に備える役割を果たします。

医療保険は商品によって中身がさまざま

「死んだらいくら」という形で保険金が支払われる死亡保険は、保険商品ごとの差が少ないのに対し、医療保険は商品によって中身がさまざまです。

例えば、入院給付金が支払われるのは、

  • 入院何日目からか

  • 1入院当たり何日までか

  • 通算で何日までか

が、商品によって違います。

手術給付金に関しても、保険会社が決めた(約款に記載された)手術を対象にする商品と、健康保険が適用される手術を対象にする商品があります。

保険期間は、10年など期間が決まっていてそれを更新していくタイプと、一生涯保障が続く終身タイプがあり、終身タイプの保険料の払込み期間は「60歳まで」「65歳まで」「終身」などから選べるようになっています。

それに加えて、さまざまな保障が上乗せされていたり特約でつけられたりします。例えば、

  • がん保障・特約:がんでの入院は入院給付金を上乗せ

  • 女性疾病保障・特約:女性特有の病気での入院は入院給付金を上乗せ

  • 三大疾病保障・特約:三大疾病(がん、脳卒中、心筋梗塞)で一定の状態になったら一時金を支払う、

など。

どういうときにどんな条件で給付金が支払われるのか、きちんと確認を

このように、医療保険は保障内容や商品の中身が複雑かつさまざまで、同じ条件で保険料を比較するのが難しいといえます。商品を選ぶときは、どういうときにどんな条件で給付金が支払われるのか、きちんと確認することが大切です。

国の医療費削減政策や医療技術の進歩で、1回当たりの入院日数は減る傾向にあり、「入院したらいくら」という今の医療保険は時代に合わなくなりつつあります。それにどう対応するかは、保険会社によって考え方が分かれます。

1つは、これからは通院による治療が増えるので、通院保障を充実させるというもの。もう1つは、心配なのは長期にわたって入院したときなので、入院が長くなりがちな病気は入院保障を手厚くするというもの。さらに、「1入院当たりいくら」ではなく、実際にかかった医療費(実費)を支払うタイプの医療保険も出てきています。

これからは、自分は何が心配で何に備えたいかによって、医療保険の選び方が違ってくるといえるでしょう。

執筆者プロフィール : 馬養 雅子(まがい まさこ)

ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。金融商品や資産運用などに関する記事を新聞・雑誌等に多数執筆しているほか、マネーに関する講演や個人向けコンサルティングを行っている。「図解 初めての人の株入門」(西東社)、「キチンとわかる外国為替と外貨取引」(TAC出版)など著書多数。新著『明日が心配になったら読むお金の話』(中経出版)も発売された。また、リニューアルされたホームページのURLは以下の通りとなっている。

http://www.m-magai.net/