すいません。

正直に白状しますが、私はホビー情報を担当しているにもかかわらず、じつはガレージキットを作ったことがありません。

「ワンフェスも取材しとるのに、ワンフェスで売っとる物を作ったことがないとはどういう了見じゃボケー!」

と夢枕に立った海○堂の社長に大阪弁で怒られた気がするので、今回は「模型の王国 模型塾」にお邪魔して、フィギュア制作の基礎を教えていただくことにしました。

東京・西日暮里の貸し教室で毎週土曜日に開かれているフィギュア教室「模型の王国 模型塾」は今年で5年目。講師を務める東海村原八さんはフリーの原型師で、現在もメカから美少女まで第一線で幅広く原型を作成されている。代表的な仕事には大ヒットした『タイムスリップグリコ』もあるので、知らないうちに原八さんの作品を持っている人も多いはず。

1コマ目は「フィギュア原型工作入門」。この日はちょうど新シーズンの開始日ということで、新入生のみなさんに混じって講義を受けさせていただいた。教室に入ってみて驚いたのは、11人の生徒のうち7人が若い女性ということ。なんとなく「いやあ、原八っちゃん、先週のダブル○ー見た? ガッハッハ」という濃い人が集まる場を勝手に想像していたので、これには正直驚いた(よくよく考えれば初心者向けの教室に、そういう猛者が集まるわけないのだが)。原八さんによれば「女性の比率は年々増えてます。女性のほうが習い事やカルチャースクールに抵抗が少ないですしね。あと女性向けのフィギュアが市場に少ないからかもしれません」とのこと。

講義風景はこんな感じ。料金は1コマ3,000円(女性は2,000円)。シーズン途中でも空きがあれば参加可能なので、問い合わせはメールでお気軽にとのこと

講師の東海村原八さん。『TVチャンピオン』のフィギュア王選手権では準優勝、『日本オタク大賞』にも模型部門のコメンテーターとして参加。トップランナーです

生徒さんの主流は20代と30代で職種も様々。主婦、デザイナー、ゲーム会社勤務、秋葉原のショップ店員、ラーメン屋まで幅広い人たちが参加している。オタクな人の多い場だが、もちろんオタクっ気のない人もいる。なかにはこの教室に来る前には、仏師に木彫の彫刻を習っていたという人も。ひとまずは初回ということで、生徒のみなさんが作ってみたいキャラクターをスケッチしてもらう。原八さんにフィギュア化するキャラを選ぶ際の注意点をうかがった。

「あんまり『これ難しいからやめましょう』みたいなことを言ってもつまらなくなるんで、自由に選んでもらって構わないんですが、例えば難しいのは『サザエさん』。要はデフォルメが強いキャラほど難しい。『カイジ』なんかプロでも困るほどです(笑)。それと『クレヨンしんちゃん』とか『ノンタン』みたいに線がヨレヨレしてるやつ。フィギュアって最終的にかっちりした質感になるから、線がやわらかいキャラはうまい人が作っても『なんか違うな』ってなっちゃうんですね」

「基本的にはデッサンがしっかりしてるほど簡単です。鳥山明(のキャラクター)なんかわりと作りやすいですね。3Dのゲームのキャラも最初から3Dなので作りやすいです。それと流行ってるキャラクター。ほかに立体物の作例が多ければいろいろ参考にできますからね。誰も作ってないキャラを作ろうとすると、自分だけで考えなきゃいけない部分が大きくなっちゃうんです」

「ユニークな例では、以前『退職後の趣味にしたい』という年配の女性の方がいらしてて、その方はヨン様を作りました。おかしなものでメガネとマフラーをつけるとちゃんとヨン様に見えるんです(笑)。モノマネなんかもそうですけど、記号性が強いほどフィギュアには向いてるんですね。逆にメガネとマフラーなしでヨン様フィギュアを作るのは、すごく難しいと思いますよ」

原八さんと一緒に生徒さんの希望のキャラを見せていただく。こちらの方はマンガ『鉄腕バーディー』。「マンガものをやるときは原寸大でコピーを取っておくと便利です」(原八)

こちらの女性はゲーム『大神』の画集を前に思案中? 「この絵は毛筆っぽい線が味だから結構難しいかも。工夫しないと絵に負けちゃうんですね」(原八)

生徒には現役マンガ家の女性も。オリジナルキャラをスケッチブックに描いて持参。「自分の絵はどうにでもできる強みがあるので、オリジナルも十分アリです」(原八)

ひととおりキャラのスケッチが終わったところで、残りの時間を使ってポリエステル・パテ(=ポリパテ)という造型用の素材を練り、スライム型の練習用ブロックを作成することに。これを4回(=4週)かけて仕上げ、それから本番のフィギュア制作を12回、約3カ月かけて仕上げていくことになる。

まずは基礎練習として、ポリパテでスライム型のブロックを制作することに。初回はポリパテを練って大体の形に固めるところまで

こちらがポリエステル・パテ。東急ハンズなどで1缶1,300円ほどで販売されている。乗っているのはポリパテで作った原型見本

ナイフやヘラといった道具類の説明も。メモを取ったり、デジカメで撮影したりとみなさん熱心。「道具は最小限のものから始めて、少しずつ買い足すのがいいと思います」(原八)

動画
まずは原八さんがお手本を披露。古雑誌の上にポリパテを出し、オレンジ色の硬化剤を混ぜてムラがないようにヘラで練っていく

ポリパテが固まり始めたら裏返して、丸型定規を使い底面にマジックでガイドの線を引いていく

動画
チーズ程度に固まったポリパテを先ほどのガイドの線に沿って削る。プロの手業を見よ! 原八さんが横を向いたのは時計を見ただけです

原八さんのお手本に続き、生徒のみなさんもポリパテと硬化剤を練り合わせる。図工の授業で作った粘土細工を思い出します

固まった人からナイフで削っていく。「怪我をしないためには、刃の先に手を置かないことと、無理せず少しずつ削るのがコツです」(原八)

生徒のみなさんがスライムブロックを少し削ったところで時間が来たので、1コマ目の「フィギュア原型工作入門」はここで終了。次回掲載の2コマ目「はじめてのレジンキット」では、こちらも見ているだけではなく、実際にレジンキャストを流し込ませていただきます!