CG全盛の中で「あえて逆のベクトル」

――『サンデーモーニング』の特徴といえば、何と言っても「手作りフリップ」を使っての解説ですよね。

もう10年くらいやってるんですが、世の中がCG全盛で、どの番組も何でもかんでもCGで美しい映像をと競い合っていた中で、関口さんが「あえて逆のベクトルの方をやったら面白いんじゃないか」と言って、それで不思議な工作みたいなことをやったらとても反響が大きかったんです。最近はコメンテーターさんが黒板で解説してくれるんですけど、それも関口さんが「人が文字を書いてるというだけで面白い」って発案したんです。きれいなフリップを作ったほうが絶対楽なんですけど、「温かい感じがする」と評判で。そうやって、長年マンネリでやっているようで、実は他の番組があまりやっていないことをちょっとずつ工夫して取り入れてるんです。

他にも、私たちは「変な生き物中継」って呼んでるんですけど、お天気のコーナーで、きれいな花とかじゃなくて変な生き物を紹介して。この前なんて、日曜の朝からヒルを映してましたからね(笑)

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    手作りフリップ=番組30周年記念パーティーでの展示(TBS提供)

――関口さん発のアイデアって、他にもたくさんあるんですか?

スポーツコーナーの「喝」「あっぱれ」もそうですね。大沢親分が野球のひどいプレーを紹介した後、CM中に「あれは喝だな」ってつぶやいたのを、関口さんが拾って。じゃあ褒め言葉も欲しいなって言うことで「あっぱれ」も生まれたんですよ。(スポーツコーナー担当の)唐橋(ユミ)のメガネも、打ち合わせのときに「今かけてるメガネかけてそのまま出てみよう」って。

あと、5年ほど前に私が雪の日に転んで腕を骨折したとき、包帯が目立たないようにサポーターを巻いて洋服で隠してたんです。そしたら関口さんが「どうせ骨折してるんだったら、腕つるして出たら」って(笑)。複雑な気分で腕をつるして原稿読んだら、そこの視聴率が上がりました(笑)。さすが、貪欲にネタを拾いますよね。

――司会者という立場に加え、演出目線・プロデューサー目線で番組に接している部分もあるんですね。

そうですね。それで、その週のニュースを振り返る時に、大雪のために東京都内でケガ人が何人出ましたって伝える時に、私は出番じゃなかったのに横に呼ばれて、「その中の1人がこの人です」って(笑)。そんな感じで、スタッフと一緒によくアイデアを出されるんです。

「生読み」へのこだわり

――橋谷さんはトップのニュースと、最後の特集「風を読む」を担当されていますが、特に「風を読む」は生放送に長尺の生読みで大変じゃないですか?

生で読むのも関口さんのこだわりで、最初の頃にプロデューサーが「録音しましょうよ」って提案したんですけど、「それはダメ」と。なぜかと言うと、「スタジオで生で読んでるからコメンテーターの皆さんが真剣に聞いてくれるんだよ。事前に録音してナレーションの入ったVTRを流すと緊張感なく聞いて、その後のトークにも影響してくるから」ということなんです。それで生で読んでるんですが、7~8分あるので、結構苦労してますね。

――何回も下読みする時間はあるんですか?

生放送なので直前で原稿が上がってきますから、そんなにできないんです。だから、調子悪い時は噛みまくったり(笑)。この前、岸井(成格)さんが亡くなって、「風を読む」で特集することになった時は、「私、絶対泣くから無理です。録音にさせてください」って言ったんですけど、生でってことになって。何とか頑張って生読みしましたけど、きつかったですね。

――その感情も生読みすることで乗せるということなんでしょうね。

たぶん、そうだと思います。

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    「風を読む」本番中のスタジオ=2018年6月17日

――関口さん自身も、1週間の振り返りで原稿を生で読んでいますもんね。

あれも厳しいんですよ。「原稿は1回聞いて分かるものにしろ」とよくダメ出しされています。どうしても作る側って、何回も同じ資料や映像を見るのでどんどん理解しちゃうんですけど、視聴者の方は初見ですから、1回聞いて分かるような原稿にしようってすごく言うんです。あと、映像の編集に関しても、「視聴者の生理をまず大事にしよう」と言って、映像の順番も提案してるんですよ。

――それは若いスタッフも育ちますよね。

そうですよね。あんなテレビの神様みたいな人に直々に教わるんですから、贅沢ですよね(笑)

アナログの中で際立つ張本勲のバーチャル出演

――以前だったら岸井さんで、最近ですと青木理さんや、TBSの松原耕二さんが番組のエンディングで最後にコメントする順番ですが、その時に残り秒数を橋谷さんがジェスチャーで伝えてるんですよね。

あのコメンテーターさんの位置だと、スタッフが見えないんです。岸井さんがご存命の頃に「残り時間が分からないんだよ」とおっしゃるので、私が「こっそり出しましょう」ということになりました。それで、なんとなく岸井さんとつながってる感じがしていたんですよね。テレビの向こうで見てる方は、まさかそんな原始的な方法でやってると思わないでしょうけど(笑)

――先ほどの手作りのフリップや黒板も含めて、そんなアナログで愚直に守っている部分があるからこそ、それがオリジナリティになって支持されている部分もあるかもしれませんね。

そうですね。世の中がどんどん過激に派手になっている中で、安心して見てもらえるということかもしれません。

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――その一方で、張本さんが野球教室でスタジオに来られない時の「バーチャル中継」の技術は、本当にスタジオに座ってるみたいですごいですよね!

あまりに自然過ぎて、お年寄りの方が「張本さん、今日は顔色が悪いね」って局に電話してきたこともあるくらいなんですよ(笑)。

――やっぱり張本さんは欠かせないですよね。

はい、絶対欠かせないですね。メジャーリーグがプロ野球よりレベルが低いなんて、言える人いませんよ(笑)。大谷翔平さんにもイチローさんにも松井秀喜さんにも厳しいコメントをしていますが、実はすごく優しくて気配りの人なんです。テレビではああいう役割を演じていますが、本当は温かい人なんですよ。