次々に新しい料理や食材などが登場するとあって、『食のトレンド』は刻一刻と移り変わっていく。しかし、クライアントや職場の同僚と「あれ食べた?」という話になることはよくある。そんなときに「……聞いたこともない」というのは、かなりマズい。この連載では、ビジネスマンが知っておけば一目おかれる『グルメの新常識』を毎回紹介していく。第53回は「シュクメルリ」。

  • スンガリー新宿3丁目店「シュクメルリ」(税別1,900円)

「シュクメルリ」って?

聞き慣れない料理名だが、もともと「シュクメルリ」はコーカサス地方に位置するジョージアという国の郷土料理だ。ニンニクをきかせて生クリームやサワークリームで鶏肉を煮込んだもので、「ニンニクを世界一おいしく食べるための料理」とも称されるほど、インパクトのある料理なのだ。

ジョージアはかつてソビエト連邦の一部であったが、1991年に国家として独立。日本国内ではグルジアという国名で知られていたが、2015年4月以降はジョージアという呼称に変わった。ジョージアはロシアやトルコ等とも隣接した中継点であるという地理的な条件も相まって、豊富な食材やスパイスを使った郷土料理が風味豊かに発達しており、ジョージア料理は近隣諸国でも人気があるという。

昨年、日本国内でもシュクメルリのアレンジメニューやパウチ商品が登場し、ティムラズ・レジャバ駐日ジョージア臨時代理大使がその商品を食した様子がSNSでレポートしたことをきっかけに、シュクメルリの存在が広く知られるようになった。ご飯ともよく合い、日本人にも食べやすい料理だと今注目のメニューとなっている。

「シュクメルリ」はどこで食べられる?

ジョージア料理はロシアでも親しまれていることから、主にロシア料理店で楽しむことができる。例えば、都内では新宿に2店舗を構えるロシア料理専門店「スンガリー」でもシュクメルリは人気メニューの一つだ(記事冒頭写真)。

大きな骨付きの鶏肉を香ばしく焼き上げ、生クリームとニンニクをたっぷり加えて煮込んでいる。一皿に使われるニンニクは、およそ1株分。ニンニクの強烈な香りと味が前面に出ているが、まろやかな生クリームのコクと組み合わさっており、やさしい味。ホワイトシチューやグラタンにも味は似ているものの、ニンニクが強く香る点でインパクトが強い。

  • ロシア料理専門店「スンガリー」店内は異国情緒にあふれ、旅行気分が味わえそう

「シュクメルリをロシア料理だと思っている人もいるくらい、ジョージア料理はロシアで身近です」と、スンガリーを運営するインターダイングループ代表取締役 隅洋一さんは説明する。現地ではパンやハチャブリ(チーズや卵を乗せたジョージアのパン)等を合わせて食べることが多いという。

また、牛丼チェーン「松屋」では1月19日から2月末頃までの期間限定でシュクメルリを鍋料理にアレンジしたメニュー「シュクメルリ鍋定食」を販売している。

  • ファンの熱意を受けて復刻した、松屋「シュクメルリ鍋定食」(税込790円)

こちらはオーソドックスなシュクメルリをご飯に合うようにアレンジしたメニューだ。鶏とさつまいも、チーズをホワイトガーリックソースで煮込んでおり、さつまいもの甘さやトロリととろけたチーズの香ばしさで、よりご飯が進む味となっている。

松屋では昨年1月中旬~2月の期間限定で同メニューを販売したところ、これが大好評。先述のレジャバ氏がSNSに投稿するなどして話題になった。「販売終了後にも惜しむ声が多かったため、スーパーで買える食材でシュクメルリが作れるようレシピサイト『クックパッド』にレシピを公開しました。松屋史上初のことでした」と説明するのは同社応報担当 青木葉子さん。 その後、昨年6月に同社が行った「第2回松屋復刻メニュー総選挙」では、投票の結果「シュクメルリ鍋定食」が堂々の1位になり、今回の復活につながった。「予想以上の反響があり、シュクメルリ鍋をきっかけに松屋に初めて来たという人もいたほど。ガツンときかせたニンニクをぜひ味わってほしい」(青木さん)。イートインはもちろんテイクアウトも可能(テイクアウトの場合はみそ汁はつかない)なので、今の状況でも気軽に食べられそうだ。

「シュクメルリ」を食べてみた

コンビニエンスストアの「ファミリーマート」では、ご飯に合わせて手軽に食べられるパウチ惣菜の「お母さん食堂」シリーズより、昨年10月「ご飯にちょいかけ! シュクメルリ」を発売。手軽でおいしいと話題になっている。今回はこちらを試食!

  • ファミリーマート「お母さん食堂 ご飯にちょいかけ! シュクメルリ」(税込298円)

こちらは電子レンジでの加熱でOK。パウチ袋に蒸気口があるので、袋をあけず電子レンジ内に立てて置いた状態にし、500~600Wで1分20秒加熱。開封し、お茶碗一杯強の温かいご飯にかけて食べる。

  • 温めたシュクメルリをご飯にオン! パセリも添えてみた。ニンニクの香りが漂う

開封すると、一気にニンニクが香ってきて、食欲をそそる。クリームソースの中に鶏肉のブロックと細かくみじん切りにされたニンニクが入っている。ご飯に乗せた見た目はクリーミーなドリアのようだが、ニンニクが強く香るのが不思議な感覚だ。

ご飯と一緒にすくって食べてみると、クリームソースにニンニクがガツンときいていて、旨味が濃厚で元気が出そうな味! ご飯ともとても相性がよく食べやすい。香ばしい焼き目のついた鶏肉は柔らかくジューシーで、ゴロゴロと入っているので食べ応えがある。子供から大人までおいしく楽しめそうだ。

同社広報の樋口雄士さんは「国内のシュクメルリを提供している店を食べ歩き、レシピを研究・開発しました。ご飯にかけて美味しく召し上がれるように仕上げております」と説明する。「全体として想定の2~3倍の売上で推移していますが、メディアに取り上げられた際には通常の10倍近い販売がありました。発売時に駐日ジョージア臨時代理大使にもSNSで投稿いただき、非常に話題になりました」(樋口さん)とのこと。

店頭でシュクメルリを購入した人の中には一緒に食パンを買う人も多く、いろいろなアレンジで楽しんでいるそうだ。「長期間保存がきくロングライフ商品なので、冷蔵庫にストックしていただき、炊いたご飯が余った時などに利用していただけると便利です」(樋口さん)。

ニンニクが主役で、ご飯にも合うおいしさが魅力のシュクメルリ。外食がしづらい時期ではあるが、テイクアウトやパウチタイプの商品もあるので、いつもと違うおうちご飯を食べたいときにも良さそうだ。たっぷりのニンニクを食べて、免疫力アップを目指すのもいいかもしれない。

※緊急事態宣言が適用される期間中は、店舗の営業内容が変更になる場合があります。