紫外線とアンチエイジングの関係性を医師が解説

紫外線とアンチエイジングの関係性を医師が解説

「紫外線は悪者」というイメージはありませんか? 特に女性は、シミの原因になりうる紫外線を大敵ととらえている傾向があるように思います。今回は人間が生活していくうえで避けることができない紫外線について説明していきたいと思います。

紫外線には3つの種類がある

一口に「紫外線(UV: ultravioletの略)」と言いますが、実は「UV-A(紫外線A波)」「UV-B(紫外線B波)」「UV-C(紫外線C波)」の3種類があります。このうちUV-Cはオゾン層で吸収されるため、地表にほとんど届かず、人体にはあまり影響を及ぼしません。日常生活で注意をしないといけないのはUV-AとUV-Bで、それぞれの特徴は以下の通りです。

UV-A

エネルギーは弱いが、ジワジワと肌の奥に浸透します。シミやシワ、たるみ、皮膚ガンの原因になります。

UV-B

エネルギーが強く、肌が赤くなる。紫外線防御の観点からは、UV-AとUV-Bを個別に捉えるのではなく、両方とも防御することが重要です。

とかく悪者にされてしまう紫外線ですが、農作物が成長するためには、太陽の光が重要です。「太陽の子」を意味するファラオのピラミッドで有名な古代エジプトでは、太陽を神として祀って信仰の対象とし、健康のために日光浴を推奨していたと伝わります。現代医学の祖・ヒポクラテスも、太陽の光と熱がケガや骨折の回復に重要であると考えていました。大昔の人々にとって、日光浴は健康維持に重要とされていたようです。

現代でも、海外のリゾート地で欧米旅行者が熱心に日焼けをする光景を目にした人がいるでしょう。昔、北欧などの高緯度地方では、冬場は日の当たる時間が短いため、「くる病(骨が発育しない病気)」が問題となりました。その予防を目的とした日光浴が奨励されてきた名残と言えるでしょう。

紫外線と骨の発育の関係性

農作物だけではなく、私たちにも紫外線は少なからずよい影響を与えているという側面があります。と言いますのも、紫外線には体内のビタミンDを活性化し、骨の形成を促進させるという働きがあるからです。

ビタミンDが足りないと、骨粗しょう症や骨折の原因につながります。かつて日本でも「日光浴は皮膚や骨を丈夫にする」と言われ、母子手帳などで推奨されていたことがあります(1998年以降、記載はありません)。実際には一日10~20分程度の日光を浴びていれば、ビタミンDは産生されます。

さらに飽食の現代では食事からの摂取も可能で、過度のダイエットや乱れた食生活をしていない限り、ビタミンDは欠乏しないと考えられています。たとえ日焼け止めを使用しても、塗りきれない部分は必ずあるので、現代では骨の形成に日光浴はそれほど重要視されていません。