昨年行われたコント日本一決定戦『キングオブコント2008』がDVD化され、発売中だ。全国で生放送された決勝ラウンドをはじめ、東京・大阪で行われた準決勝の模様、大会のドキュメントを収録した今作のリリースに合わせ、決勝で強烈なインパクトを残したファイナリスト・天竺鼠を直撃。結婚式のスピーチで自称? 大企業の社長がハチャメチャに暴走するコントを演じ、何だこいつらは!?と茶の間に衝撃を与えた彼ら。一体、何を考えているのか!?

決勝のコントは緊張しすぎて"新ネタ"に!?

左から、川原克己、瀬下豊

――昨年のキングオブコント(以下、KOC)を振り返って、決勝に臨んだお2人の心境は?

川原克己(以下、川原) : 「僕は緊張することってほとんどないんですけど、決勝はありえへんぐらい緊張してました」

瀬下豊(以下、瀬下) : 「人生で一番緊張しましたね。舞台に出る直前、暗転した瞬間に緊張しすぎてセリフが全部飛んでもうたんですよ。俺が何も言われへんかったら全部ぶち壊しや! ってが頭が真っ白。舞台が明るくなったらなんとか思い出せたけど」

川原 : 「僕はもうわけわからんようになりながら社長やってました。途中でネタは飛ぶし、ネタの順番はメチャクチャになるし、言うはずやないことまで言い出して、ほぼ新ネタにみたいになってました(笑)」

――"ほぼ新ネタ"になっていくコントを、瀬下さんはどう思ってたんですか?

瀬下 : 「流れを戻さなアカンのかなって思いましたけど、そのうち川原が自分で戻しましたからね。まぁ、こいつがコント中に予定してなかったこと言い出すのは、ようあることですし」

川原 : 「僕らは決勝でやった結婚式のコントを準決勝でもやってるんですけど、じつは準決勝の方が正しいっていうか本来の姿なんです。同じコントやのに、決勝で僕がわけわからんようになってすごく変わってるっていうところを、DVDで比較して見てもらうとおもしろいかもしれないです」

――今回のDVDでみなさんに見て欲しいところは?

川原 : 「KOCはいろんな芸人さんのコントが見られるところがいいですよね。僕も本番中、みなさんのネタがおもしろそうでめっちゃ見たかったんですけど、緊張してたし、それどころやなくてちゃんと見れなかったんで、家でゆっくりDVD見たいです。できれば横になりながら」

瀬下 : 「僕の"目の演技"もじっくり見て欲しいですね。決勝のコントはほとんどセリフがなくて、川原の後ろで立ってただけとか言われてますけど、ちゃんと目の演技とかでコントやっとるぞ! というところを」

川原 : 「コントいうてもいろんなタイプがあるんですよ。2人でかけ合いするやつもあるし、結婚式のコントみたいに僕がしゃべって瀬下が無言の演技で突っ込むみたいなのもある。前に『1人でしゃべってるのはピン芸や』みたいに言われて、さすがに僕も『わかってないわ』って言うたろかと思ったんです。でもまぁ、お互い何もプラスにならんと思って止めましたけどね」

瀬下 : 「川原は平和主義者なんで(笑)」

川原の"神様"と瀬下のすごい"アウトドア"

――KOCで川原さんの特異なキャラクターに興味を持たれた方も多いと思います。

川原 : 「優勝はともかく、『変なヤツがおる』っていう印象を与えられたらええなとは思ってましたね」

瀬下 : 「僕ら2人とも鹿児島出身で、高校からの友だちなんですけど、当時からこいつは変なヤツでおもろかったんですよ。大阪でコンビ組んでからしばらく一緒に住んでたときも『俺の縄張りに絶対入るな』みたいな変なこだわりがあって」

川原 : 「相方が自分の部屋に友だち呼んでどんだけ騒いでもええけど、絶対に俺の部屋には入れるなよと」

瀬下 : 「物がちょっと動いてただけで『誰か入ったやろ』って気づきよるんですよ。ゴミまで触るなって言いよる」

川原 : 「ゴミ1つにしてもここにないとアカンっていう定位置が僕なりにあるんでね」

瀬下 : 「ゴミぐらい捨てたらええやろ! あとこいつ、変な人形を神様にして祀ってたことあったんですけど、祀り方がおかしい。皿に盛り塩して、その上にグサッと人形が刺してあるんですよ(笑)。それを遊びに来た同期の芸人が倒したら、めっちゃキレて。平和主義者なんでめったに怒らないんですけどね~」

――神様ってどんな人形だったんですか?

川原 : 「オッサンがただ手を広げてるだけみたいな小さい人形(笑)。すごく気に入って大事にしとったんです」

瀬下 : 「で、同期の芸人が集まって旅行したとき、その人形がワゴンセールで大量に売られてるのを発見してもうて。みんな神様のことは知っとったから、一斉に川原を見たらすごい顔しとる(笑)」

川原 : 「もうガッカリです。家に帰ったらすぐ塩から抜いて、手の上でコロコロ転がしてやりましたわ!」

――では、川原さんから見た瀬下さんはどんな人?

川原 : 「僕とは真逆。正反対過ぎて、何やられても腹立たへんのが相方としていいんでしょうね。たとえば僕はインドアなんですけど、瀬下はアウトドア。僕は高校のとき、みんなで国語辞典を回し読みして笑うみたいな、インドアの中でもトップクラスの遊びをしとったんです。こいつはヤンキーやったんで、ジャンケンで負けたヤツのバイクを壊すとか、車を燃やすとかいうトップクラスのアウトドアの遊びばっかりやっとって」

瀬下 : 「やってへんわ! しかもアウトドアって、普通はキャンプとかすることやろ」

川原 : 「外で遊ぶこと=アウトドアなんちゃうの?」

瀬下 : 「それやったら、暴走族とかみんなアウトドアやん。完全に履き違えとる(笑)」

オリラジ藤森に東京進出を勧められるも……

――コントはどのようにして作るんですか?

瀬下 : 「川原が100%作りますね」

川原 : 「僕は台本を書かないんで、口で言うて瀬下に内容を全部を伝えます。しかも、本番の前日とか当日にならないとネタが作れないんで、相方は覚えるの大変やと思いますね。本番直前に舞台の袖でセリフとか流れを急に変えることもあります。舞台袖に近づくにつれて、どうしたらおもしろくなるかが僕の中で明らかになってくるんでね」

――急に変えられると瀬下さんは戸惑いませんか?

瀬下 : 「最初はテンパってましたけど、今はもう慣れましたね。さっきも言いましたけど、相方がコント中に予定外のことやり出すことはしょっちゅうやし。でも、変えたところが確かにウケるんです。おもろいし、変えることについては僕も賛成ですね」

川原 : 「あと、同じコントでも次にやるときにまったく同じことをやれないんですよ。同じことをするのが苦手っていうか、恥ずかしいっていうか」

瀬下 : 「だからやるたびに変わって、だんだん違うコントになっていくっていう(笑)」

川原 : 「この前と全然ちゃうやん! ってところも楽しんでもらえればええなと思うんですけど」

――では最後に、今後の天竺鼠の目標は?

川原 : 「やっぱりコントをやっていきたいですね。新しいタイプのいろんなコントを試していきたい。今年のKOCの決勝にも出たいと思ってますし、去年の決勝でやったものとはまったく違うコントを見せられたらええなと」

瀬下 : 「KOCは僕らのええ目標になってます。去年の決勝に出られたことが自信にもなりましたしね」

――現在は大阪を拠点とした活動ですが、東京進出は考えていますか?

川原 : 「そういう流れになれば、東京も行きたいとは思ってるんですけど……僕があまのじゃくなんでね。東京に行けと言われたら『絶対行かん!』、行くなと言われたら『今すぐにでも行ったるわ!』って思うし(笑)。この前、仕事で一緒になったオリエンタルラジオの藤森に『東京に来てくださいよ』って言われたんですよ。そこでまぁ『行こうかな』とか言うたらよかったんですけど……」

瀬下 : 「そこでどう言うたん?」

川原 : 「何でそんなこと言われなアカンねん! って思って、『お前が大阪に来い!』と」

瀬下 : 「わけがわからんわ。しかも何でケンカ腰やねん(笑)」

やはり一筋縄ではいかない相当な"変わり者"だった川原、そんな相方を心底おもしろがりながら、突っ込みのジャブを入れる瀬下。泉の如く湧き出すシュールなアイデアを詰め込んだ2人のコントは、KOC決勝進出に続き、今年はダウンタウンやナインティナインを輩出した若手お笑い芸人の登竜門『ABCお笑い新人グランプリ』で最優秀新人賞を獲得するなど高い評価を受けている。波に乗る彼らは、新しい発想のコントでKOCのみならず、今後のお笑い界に激震を起こしてくれそうだ。

『キングオブコント2008』(5,980円 販売元:よしもとアール・アンド・シー)は現在発売中。購入はこちらから。

天竺鼠(てんじくねずみ)

●川原克己 1980年1月21日生まれ。鹿児島県出身。A型。●瀬下豊 1979年7月29日生まれ。鹿児島県出身。A型。ともにNSC26期生。鹿児島で高校時代の友人同士だった2人が大阪で再会し、2003年にコンビを結成。大阪・baseよしもとを拠点に活動するほか、川原がナスビの被り物をして披露するピン芸で『あらびき団』(TBSほか)などに出演している。2009年 第30回『ABCお笑い新人グランプリ』優秀新人賞を獲得した。