20世紀の文学界における最高傑作のひとつとされる『グレート・ギャツビー』。『華麗なるギャツビー』という邦題でも知られ、映画・舞台など様々な形で実写化されてきた。
5月から日生劇場で公演が行われる新たな『グレート・ギャツビー』は、主演:井上芳雄、脚本・演出:小池修一郎という、日本のミュージカル界を代表する2人ががっつりとタッグを組んだ新作となり、熱い注目を集めている。
今回は小池が同作にかける心境、主演・井上芳雄の印象、そして日本のミュージカルへの思いについて、3回にわたりお届けする。
念願叶った舞台を、もう一度新たに行う
――今回、井上芳雄さん主演で新たに『グレート・ギャツビー』を舞台化ということですが、どのような思いで臨まれているのでしょうか。
1991年の、宝塚歌劇団雪組公演(『華麗なるギャツビー』)がおかげさまで大変好評で、菊田一夫演劇賞をいただいて、世に認知されたという経緯があります。さらに2008年には日生劇場で、月組の選抜メンバーによって再演されました。今回は"一般版"を井上芳雄くん主演で作らないかというお話をいただいて、ちょっと「うわっ」と思って(笑)。
すごく名誉に思うと同時に、原作をすごく好きになった10代のころから、舞台でやりたい、宝塚でやりたいと考えて、一度念願が叶ったわけですね。それをもう一度やるというのはかなりエネルギーがいることだなと、月組版の時にすごく感じました。そこからまた新たなバージョンを作るということを考えると、この作品への憧れや思い入れを100%再現できるのか? という不安もあったんです。当たり前ですけど、最初にこの作品を「いい」と思った時から45年くらい経っちゃいましたからね。
また、井上くんと十数年ぶりに新作ができるのは嬉しいのですが、井上くんはもう現代演劇界でもみんなが認める俳優さんですから、そちらの戸惑いもありました。私が出会ったときは19歳の若者で、「ヨシオ、ヨシオ」と呼び捨てにしていたのに、今は37歳の偉い俳優になっているんですよ。東宝ミュージカルを屋台骨として支えてきているし、責任のある立場を全うしてきていて、ある種出会った頃とは別人なので、「どう接するべきか?」みたいな気持ちになる(笑)。
よく、新人の子達には「僕は君たちの小学校の最初の担任みたいなものです」と言っているんです。ミュージカルに初めて接するような子を、前向きに仕事に向かわせることが、大きな役割だったりもするんですよね。井上くんはもう大学院も卒業したくらいになっているので、小学校教師としては何を教えよう、という戸惑いも覚えるんですよ。つい、昔のようなつもりで話しても、「今更そんなこと言わないで」となるかもしれないと、非常に悩みます(笑)。未知であり、楽しみでもありますね。
――小池先生の手がけられる作品には、若い方もたくさん出られていますよね。
『1789 -バスティーユの恋人たち-』や『ロミオ&ジュリエット』でも、翻訳物ミュージカルにあまり出たことがない、といった人がけっこういました。日本でのミュージカルというのはもう一声、もうちょっとだけ人材が豊富になってくれたら、もっとお客様が盛り上がれると思うんです。ともかく次々に人材を補給、かつ競争してくれないと伸びないと思うんですよね。
――そういった「ミュージカルへの入り口」という意味での小学校教師役なんですか?
そうです。新人の方や、ミュージカルは初めてという方に、つまらないと思うのではなく、「なんとか、ここでもう一踏ん張りしよう」と思うようになって欲しいんですね。元々ミュージカルをやりたくて来ている人はいいんですが、少し戸惑いを持って演じている人も多いように感じるので。
※次回は主演・井上芳雄さんについてたっぷり語っていただきます(5月4日掲載)。