FXの大相場の数々を目撃してきたマネックス証券、マネックス・ユニバーシティ FX学長の吉田恒氏がお届けする「そうだったのか! FX大相場の真実」。今回は「オージーの変化」を解説します。

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前回ご紹介したように、オージー(豪ドル)円は、2008年のリーマン・ショック前、過去5年の平均値である5年MA(移動平均線)からのかい離率でみると、記録的な「上がり過ぎ」、つまり割高となっていました。

投資の基本は、割安圏で買って、割高になったら売るということです。例えばあなたが円より金利の高い外貨を買おうとする時、「今買って大丈夫か。もう少し下がったところで買った方がよいのではないか」と迷うかもしれません。別の言い方をすると、「今買うのは割高かもしれない。もう少し割安になってから買いたい」ということになるでしょう。

そういう意味では、5年MAからのかい離率を考慮すると、「リーマン・ショック」前に、記録的な割高圏となっていたオージー円は、「買う」のではなく、むしろ逆に「売る」タイミングだったのかもしれません。

しかし、これまで何度も述べてきたように、パリバ・ショックでもベアー・スターンズ・ショックでも、オージー円はすぐに不死鳥のごとく甦り、「夢の100円」に戻ってきました。これまで見てきたことからすると、それを支えた要因の一つが歴史的な原油相場の高騰でした。

大暴落で「割高」から「割安」へ一変したオージー

さて、ここまで読んで「待てよ」と思った読者もいるのではないでしょうか。「オージー高はバブルになっていた可能性があった。そうであるなら、それを支えた100ドルを大きく上回ったWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエイト)の5年MAからのかい離率はどうなっていたんだ!?」と、推理が膨らむ人も少なくないかもしれません。

では、実際にWTIの5年MAからのかい離率を見てみましょう。それを見ると、リーマン・ショック前、WTIが150ドル近くまで上昇した頃の同かい離率はプラス100%以上で、1990年以降では最高となっていました。まさに、原油相場も記録的な「上がり過ぎ」の可能性があったわけです。

  • 【図表】WTIの5年MAからのかい離率 (1990~2020年)(出所:リフィニティブ・データよりマネックス証券が作成)

    【図表】WTIの5年MAからのかい離率 (1990~2020年)(出所:リフィニティブ・データよりマネックス証券が作成)

以上のように見ると、行き過ぎたオージー高である「オージー・バブル」を、さらに行き過ぎた原油相場の上昇である「原油バブル」が支える、そんな状況がリーマン・ショック前にあったということになるでしょう。

そしてそんな2つのバブルがはじけた結果が、ほんの半年間で100ドル以上の原油相場の大暴落と、たった3カ月で1豪ドル=100円台から50円台へほとんど半分になるほどのオージー円大暴落をもたらしたということでしょう。

このような大暴落によって、原油相場も、そしてオージー円も、客観的評価が一変しました。5年MAからのかい離率などでみると、割高から割安へ大転換となったのでした。それが、前回書いたように、私が「オージー・ショックで自信を失っているFA(ファイナンシャル・アドバイザー)の人達に元気が出て、勇気がわくようなセミナーを」と依頼されたことに対し強調した点でした。

要するに、オージー円は近年なかったほどの割安圏で推移しているのだから、「むしろ投資の絶好のチャンスの可能性が出てきたのではないですか」ということです。どうでしょうか、この考え方に納得したら、投資アドバイスする上では何よりも、元気が出て、勇気がわくのではないでしょうか。

そして相場的にも、オージー円は、リーマン・ショック「最悪の日」、2008年10月24日に記録した1豪ドル=54円が底値となり、その後の1年で30円以上もの一段高となったのです。それには、私が当時過小評価していたことの影響があったのです。