結局というか、やはりというか、レバレッジ規制は当初の予定通りに施行されることになった。

経過措置が設けられているので、この1年間はレバレッジ規制が課せられることはない。施行は来年8月1日で、その日を起点にして、証拠金率は2%が適用される。つまり、最大レバレッジは50倍までということだ。そして、2011年8月1日からは、証拠金率は5%になり、最大レバレッジは25倍までしか認められないことになる。

改めて警鐘を促しておきたい。これからFXを始めるという人は、くれぐれも慎重にFX会社を選ぶこと。恐らく、FXのレバレッジ規制をはじめ、いろいろな規制が行われることにともなって、なかには「最後の荒稼ぎ」を考えるFX会社が出てこないとも限らないからだ。 では、どういう観点からFX会社を選べばよいのか。

まずは、会社の健全性を把握するようにしよう。ポイントは自己資本比率規制の数字だ。基本的に、この数字が140%を割り込むと、その時点で金融庁に届出を行う必要が生じてくる。さらに、120%を割り込むと、金融庁からの業務改善命令が出され、100%を割り込むと、3カ月以下の業務停止命令もしくは登録取り消し命令が発令される。したがって、自己資本比率規制できっかからないよう、出来るだけ自己資本比率が140%を大きく上回っているFX会社に口座を開くことが肝要だ。

自己資本比率が小さいFX会社は、いつ業務停止命令を下されてもおかしくない。しかし、今、3カ月にも及ぶ業務停止命令を受けたら、それが引き金になって、簡単に倒産してしまうようなFX会社もかなりの数に上る。

各社の自己資本比率については、FX関連のサイトなどを通じて情報を入手することができる。各社とも3カ月ごとに公表しているので、過去の推移も含めてチェックしてほしい。特に、過去数回にわたって、自己資本比率が低下傾向をたどっているようなFX会社には要注意だ。絶対的な水準でも、やはり150%前後まで落ち込んでいるようなところとは、なるべく付き合わないことをお勧めする。

自己資本比率をチェックしたら、信託保全をしているかどうかをチェックしたいところだが、一応、現段階では信託保全が義務化されているため、この点について改めてチェックする必要はないだろう。ただし、信託保全先については、ちょっと考えてみる必要はありそうだ。

今回の信託保全の義務化をめぐっては、さまざまな混乱が生じた。顧客からの預かり資産が少ないFX会社のなかに、顧客資産の受託を引き受けてもらえないところがあった。確かに、金融機関の側からすれば、1億円、2億円規模の顧客資産を引き受けたとしても、それによって得られる手数料はごくわずかに過ぎない。手間ばかりかかり、手数料が少ないというのでは、ビジネス上は成り立たない話だ。逆の見方をすれば、著名な金融機関に信託引き受けをしてもらっているFX会社は、それなりに顧客の預かり資産も多く、多少は安心感につながるという見方もできる。

経営面での良し悪しを判断する場合は、上記のように、自己資本比率と信託保全先の2点をチェックしておけば、十分だろう。特に、これから1~2年で業界の再編・淘汰が加速すると思われるFX業界だけに、まずは安定した経営を持続できるかという点が、FX会社を選ぶうえで、最もプライオリティが高くなる。

加えて、サービスの内容が顧客の側をきちっと見ているかどうかにも留意しておきたい。これは、実際に取引してみなければ見えてこないところだが、頻繁にレートがスリップするようなFX会社は、本当の意味で顧客の側に立ったサービスを提供しているとは、到底思えない。

これは、実際に成行注文を入れた時のレートと実際の約定レートにどれだけの開きがあるのかをチェックすれば分かる。それも、時々であれば、システムの不調によってそうなったと解釈することもできるが、取引の都度、同じことが発生するようだと、完全に故意で行っていると判断せざるを得ない。このようなFX会社とも、付き合わない方が無難だ。

レバレッジ規制をはじめとした各種の規制強化によって、FXは本当の意味で信用力が問われる時代に入ってきた。ここ1~2年のように、極小のスプレッドと手数料を武器にして、どんどん口座数を増やしていくというビジネスモデルそのものは、もはや成り立たないだろう。

もちろん、ここ1年での荒稼ぎを考えているFX会社は別だが、いずれにしても、そのような方法で稼げるのは、これから1年間だけだ。ビジネスの長続きはしないのだから、この局面で、なおハイレバレッジ、低スプレッド、手数料無料という三種の神器を振りかざすようなFX会社があったとしても、そこへはなるべく近づかないことをお勧めする。

今は良くても、それが長続きしないのであれば、大した意味は持たないからだ。規制強化時代のFX会社の選び方は、これらを考慮に入れた上で行うと良いだろう。

執筆者紹介 : 鈴木雅光氏(JOYnt代表)

主な略歴 : 1989年4月 大学卒業後、岡三証券株式会社入社。支店営業を担当。 1991年4月 同社を退社し、公社債新聞社入社。投資信託、株式、転換社債、起債関係の取材に従事。 1992年6月 同社を退社し、金融データシステム入社。投資信託のデータベースを活用した雑誌への寄稿、単行本執筆、テレビ解説を中心に活動。2004年9月 同社を退社し、JOYntを設立。雑誌への寄稿や単行本執筆のほか、各種プロデュース業を展開。