もともとクレジットカードは、手持ちの現金が不足しているときでも、カード会社を通して後払いを約束することで、先にサービスを受けられる決済手段だったが、現在は「ポイントを貯めたい」「海外旅行で使いたい」など、さまざまな理由で利用されている。初めての1枚を選ぶ前に、まずはクレジットカードを利用するメリットを知っておこう。

現金管理の手間が減る

クレジットカードで払うということは、現金を使わないことでもある。すべての店でクレジットカードが使えるわけではないが、ATMで現金を下ろす回数は間違いなく減らせるし、財布に入れておくべき現金も少なくできる。

多額の現金を持ち歩くことには、盗難や紛失のリスクも伴う。現金をなくした場合、よほど運がよくない限り戻ってこないが、クレジットカードは(不正利用される可能性はゼロではないものの)すぐに利用停止の手続きをすれば再発行だけで済む。

特に海外では、多額の現金を持ち歩きたくないもの。かといって、所持金を気にしながらの旅はストレスになるし、万が一にも備えておきたい。できるだけクレジットカードで払えば、必要な現金は減らせるだろう。ちなみに海外でクレジットカードを利用する際は為替手数料が発生するが、ほとんどの場合は現金を両替する手数料よりも安い。

また、海外でホテルやレンタカーを利用する際は、追加料金が発生する可能性があるため、クレジットカードがないと多額のデポジット(保証金)を要求されることもある。クレジットカードは支払能力を証明するものでもあるのだ。

  • クレジットカード 初めて メリット

支払い時間の短縮

クレジットカードで支払う際には、基本的にサインまたは暗証番号の入力が必要となるが、コンビニやスーパーなど素早い会計が求められる店では、サインレス決済が導入されている場合も多い。たとえばセブン-イレブンでは1万円以下、ローソンとファミリーマートでは4,000円未満の買物はサインレスで支払い可能。ローソンはカードの読み取り操作も自分で行なう方式で、カードを店員に渡すことなく支払いができる。

クレジットカードで支払えば、小銭を探すことも、お釣りの受け渡しも必要なし。スピードだけで言えばSuicaなど非接触型電子マネーのほうが速いが、その場合でもチャージにクレジットカードを使うことで手間を減らすことができる。ネットショッピングの際も、代引きやコンビニ払いより、クレジットカード払いのほうが圧倒的に速いことは説明するまでもないだろう。

分割払いやキャッシングができる

クレジットカードは分割払いやボーナス払いが可能。分割払いは利用する店によって不可能な場合もあり、3回以上の分割は手数料がかかる。逆に言えば2回払いは手数料不要。ボーナス払いも手数料は不要となる。これらは買物ごとに指定する形だが、毎月の利用残高全体に対して、一定額ずつ返済していくのがリボ払い。こちらも手数料が発生するが、月々の支払い額を平準化できるメリットがある。

また、審査に通らなければ利用できないが、ATMなどで現金を引き出せるキャッシング機能もある。返済は1回払いまたはリボ払いとなり、こちらは基本的に1回払いでも手数料が必要。海外では現地通貨を引き出すことができ、返済までの期間にもよるが、両替よりも手数料が安くなる場合が多い。ただし、別途ATM利用料がかかるため、こまめに引き出すと効率が悪くなる。

分割払いもキャッシングも借金となるので、計画的に利用することが大切だ。

利用明細が発行される

クレジットカードは「いつ」「どこで」「いくら」使ったか、毎月利用明細が発行されるため、家計を管理しやすくなるメリットもある。ただし、何を買ったかまでは表示されず、どこで使ったかは文字数が入り切らなかったり、店名ではなく会社名で表記されたり、わかりにくい場合もある。

最近は紙の明細は発行せず、WEBで確認する形も増えているが、PDFやCSVでダウンロードできるカード会社が多いので、紙のように紛失や保管場所に困る悩みを抱えずに済むだろう。また、家計簿アプリなどで、明細を自動取り込みできる場合もある。

ここまではどのクレジットカードでも、ほぼ共通して利用できるメリットとなる。ここから先はカードによって程度の差が大きかったり、利用できなかったりするサービスとなるので、カード選びの際には注意してほしい。

ポイントが貯まる

クレジットカードはショッピング利用額に応じてポイントが貯まる。その使い道はカードによって様々だが、現金相当に換算すると、一般的なもので0.5〜1%程度の還元を受けられる。たとえば還元率が1%のカードの場合、月5万円使った場合は500円相当、年間だと6,000円相当トクすることになる。年間100万円利用すれば、1万円相当のポイントが貯まる。

なかには還元率が2%前後に達するカードもあるが、高額な年会費が必要だったり、特定の条件を満たさなければいけなかったりする場合がほとんどなので、ライフスタイルに合わせた適切なカード選びが重要となる。なお、ポイントではなく、キャッシュバックや値引きを受けられるカードもある。

割引や優待が受けられる

クレジットカードが提携する店や施設を利用する際に、割引や優待を受けられることもある。たとえば、大手スーパーと提携したカードは特定日に利用すると5%オフ、百貨店と提携したカードは年間利用額などに応じて5〜10%オフなど、業種によって定番となっているサービスもある。

また、旅行関係は高額なカード利用が見込めるため、カード会社も優待に力を入れている分野。旅行パックやホテル、レンタカーの予約をはじめ、海外旅行時の手荷物宅配やWi-Fiレンタルの割引、免税店利用時の粗品プレゼントなど、幅広い優待が提供されている。人気観光地では、優待が受けられる店をまとめた冊子が用意されている場合もある。

保険機能がある

クレジットカードには保険機能がついていることも多く、そのなかでも代表的なものが旅行傷害保険とショッピング保険。旅行傷害保険は海外と国内で適用範囲が異なり、海外は事故による怪我や病気、携行品の盗難や破損、誤って他人を怪我させたり、他人のものを壊してしまったりした場合などに補償を受けられる。一方、国内は怪我のみが対象で、公共交通機関の搭乗中や宿泊を伴うツアー参加中、宿泊するホテルの火災・爆発時にしか補償されない。

どちらも自動付帯と利用付帯があり、自動付帯はカードを持っているだけで適用対象、利用付帯は所定の旅行代金をカードで支払った場合にのみ適用対象となる。また、カードによっては航空便の遅延や欠航が原因で生じた宿泊費や飲食費、手荷物遅延や紛失による衣類購入費などを補償してくれるものもある。

ショッピング保険は、カードで購入したものが対象期間中に偶然の事故で破損した場合、盗難に遭った場合などに補償を受けられるもの。ただし、購入したものの種類によっては補償を受けられない場合もあり、乗り物や食料品、携帯電話やノートパソコンなどは対象外となっているカードもある。

このほかにも、カードによっては自動車関係の保険、ゴルファー保険、犯罪被害保険などが付いている場合もある。また、オプションとして格安料金で保険機能を追加できるカードも多い。

付帯サービスがある

現代のクレジットカードには、もはや決済と関係ないサービスを付帯したものも増えている。特に多いのが、いざというときに使えると助かる生活サポート系のサービス。すべてのカードで使えるわけではないが、自動車のトラブルに対応するロードサービス、健康や介護などの悩みが相談できる医療ダイヤル、鍵の紛失や水まわりのトラブルに対応するホームアシスタンスなどがある。

ゴールドカードでは空港ラウンジが使えるサービス、プラチナカードでは予約代行などをしてくれるコンシェルジュが定番。このほかにも数え上げればキリがなくなるが、年会費が高いカードになるほど付帯サービスは充実していく。逆に言えば、付帯サービスが多いカードは年会費が高く、使わないサービスを付帯したカードを持つと、年会費を無駄に多く払うことになるので気をつけたい。

以上、現代におけるクレジットカードは、後払いで買物ができるだけでなく、上手に使えば様々なメリットが受けられる。一方で機能が多様化しているうえに、日本では1,000種類以上のカードが発行されているため、自分に最適な1枚を見つけるのは簡単ではない。次回からはカードの選び方について解説する。

■ 筆者プロフィール: タナカヒロシ(ライター・編集者)

普段は音楽やエンタメ関係の仕事が多いが、過去に勤めていた会社の都合でクレジットカード本を作ったことをきっかけに、クレジットカード、電子マネー、ポイントなどに詳しくなる。以降、定期的にクレジットカードのムック本を編集・執筆。3月8日発売の『最強クレジットカードガイド2017 本当にトクするカードの選び方・使い方=写真=』(角川SSCムック)では、編集統括および記事の大部分を執筆している。

題字イラスト: 菅原県