フィンランドというと、ほぼ100%の人が「ムーミン」、もしくは「マリメッコ」を思い浮かべるのではないだろうか。実際、わたしの周りでも「フィンランドに行くことになった」と伝えると皆が皆、口をそろえて言ってきたのが、その2つだった。

とはいえ、その魅力は、ムーミン、マリメッコだけに限らない。国連が毎年発表している幸福度ランキングで2年連続世界1位に輝き、昨年末には現職で世界最年少となる34歳の女性首相が誕生したことでも話題となったフィンランド。首都ヘルシンキと北海道の新千歳空港が直行便でつながったということで、実際に行って魅力や見どころを探ってみた。

  • 機内誌でフィンランドの国力を改めてチェック

マリメッコ尽くしの機体

新千歳空港とヘルシンキ・ヴァンター国際空港を結ぶフィンエアーの直行便が新規就航したのは2019年12月16日。新千歳空港からは月・金、ヘルシンキからは木・日の週2便ずつ飛んでいる。

今回の旅ではエコノミークラスではなく、ワンランク上のビジネスクラスを初体験させてもらったのだが、ビジネスクラスって、シートが広いだけじゃないのね。

  • 人生初のビジネスクラス

  • 2人分のスペースを独り占め

  • 足元もひろびろ

さすがはフィンランドのフラッグ・キャリア。国を代表するブランド「マリメッコ」とデザインパートナーシップを結んでいるそうで、機内ではテーブルウェアやファブリックにマリメッコのアイテムやカラフルなデザインが採用されている。また、不定期運航で、マリメッコのテキスタイルが塗装された特別な機体もあるという。

さらにビジネスクラスには、フィンエアーのためにデザインされたアメニティキットや枕、ブランケットが各シートに。広さだけでなく、プレミアム感あふれるアイテムに離陸する前からテンションが上がる。

  • 搭乗した特別塗装のA330型機はUNIKKO(ウニッコ)柄、A350型機はKIVET(キヴェット)柄が採用されている

  • クッション、アメニティ、スリッパなど、布製品がすべてマリメッコ

  • アメニティのスキンケア商品はスウェーデンのラ・ブルケット製

搭乗するやいなやウェルカムドリンクが運ばれ、離陸してベルト着用サインが消えると今度はおしぼりや食前酒のサービス。ほかにも水やチョコレートなどのお菓子をいつでも頼めて、ビジネスクラスで過ごす時間は、まさに至れり尽くせり。機内エンターテインメントも映画・ビデオだけで100プログラム以上あり、どれを見ようか悩んでいるだけで、いたずらに時間が過ぎていく。

  • 搭乗すると、まずはウェルカムドリンクでお出迎え

  • ブルーベリーとジンを合わせたフィンエアーのオリジナルカクテル

  • 機内で横になれるって素晴らしい

機上で本格ディナーを楽しむ

国際線の楽しみといえば、機内食も外せない。直行便では、食事は2回あり、なかでもビジネスクラスの夕食はコース仕立てになっていて、前菜とメインディッシュを数種類から選ぶことができる。メニューには写真が無いため文字で想像するしかないが、これまた選ぶのが悩ましい。

結局、魚でも肉でもなく、野菜のスープがメインディッシュになっているのが気になり、スウェーデン人シェフのトンミュ・ミュッルマキ(Tommy Myllymaki)氏が手掛けた看板メニュー、セロリのスープをチョイス。

ある意味、賭けのような気持ちで選んだが、その場で調理されたかのようなフレッシュな味わいで、調理済みの機内食とは思えないほどクオリティが高かった。さすがはビジネスクラス。

  • 2011年の「ボキューズ・ドール国際料理コンクール」で世界第2位に輝いたトンミュ・ミュッルマキ氏

  • しめじや魚卵、フライドオニオンがのったディナーの前菜、サーモンのタルタル

  • メインディッシュのブルーチーズとアーモンドが入ったセロリのスープ

  • デザートも本格的

  • 朝食には和食もある

陽が昇りきらない不思議な感覚

ヘルシンキまでのフライトは約9時間。ビジネスクラスは最初こそ緊張して落ち着かなかったものの、慣れてしまうと、そこからはセレブ気分。快適すぎて、あっという間に目的地に着いてしまう。到着までの残り時間を見て、飛行機にまだ乗っていたいと思ったのは生まれて初めての経験だった。

  • 離陸直後の北海道上空

  • 着陸直前のヘルシンキ上空、北海道と似てる?

新千歳空港を11時35分に出発し、到着するのは現地時間の14時10分。フィンランドは夏だと夜も陽が沈まない"白夜"になるが、冬はその逆で陽が昇らない"極夜"になる。そのため、夕方前に着いても薄暗い。

  • 白樺並木をバックにどんどん陽が暮れる

空港からヘルシンキ市街までは車で約40分。車窓を流れる白樺並木に「ここは北海道か?」と見紛うほど親近感を抱いているうちに、陽は刻一刻と落ちていく。宿泊先のホテルに着いたときには、まだ15時だというのに日没を迎えた不思議な光景が広がっていた。

クリスマスシーズンのヘルシンキを歩く

「もう暗いし……」とホテルに閉じこもっては編集部に怒られてしまうので、そのまま歩いて10分ほどの距離にあったヘルシンキ有数のショッピングストリート、アレクサンテリンカトゥ通りへ。

この通りには北欧最大級のデパートとして知られるストックマン百貨店があり、なかでもクリスマスシーズンのライトアップは大きな見どころになっている。

  • これでまだ15時

極夜に輝く無数のイルミネーションと、クリスマス仕様にデコレーションされたショーウインドウ。その美しさは圧巻で、観光客はもちろん、多くのビジネスマンの姿でも活気づいていた。

  • キラキラのイルミネーションで飾られたヘルシンキ中心部

  • 多くの人が行き交うアレクサンテリンカトゥ通り

  • ひときわ華やかなストックマン百貨店

  • クリスマス仕様のディスプレイには人だかりも

  • クリスマスを盛り上げる出店もある

  • 市内にはトナカイのイルミネーションや

  • 雪の結晶の形をしたイルミネーションも

  • 閉店後も電気が灯るショーウィンドウ

  • おかげで安心して夜道を歩くことができる

  • あの国民的キャラクターも街を明るく照らしてくれていた

極夜のフィンランドは、日没が早いだけでなく、朝も10時まで真っ暗闇だ。現地ガイドによると、白夜や極夜のあるフィンランドでは体内時計が狂いやすく、鬱になりやすい環境でもあるのだとか。そのため、フィンランドの人は「明るくても夜は寝る」、「暗くても朝は起きる」という規則正しい生活を心がけているそうだ。

  • まだ陽の昇らないなか出勤する朝8時の駅前

翌朝、早めに起きて散歩をしていると、出勤する女性が持つ折り畳み傘がふと目に入った。それは、マリメッコの中でも特に有名な赤い花柄の「ウニッコ」柄の傘だった。

日本では感じなかったが、陽の昇らないフィンランドで見た花は、漆黒の空間にひときわ映え、暗くてどんよりとしていたのがパッと華やかな気分になった。フィンランドの人たちにマリメッコが愛されている理由、それが少しだけ分かった気がした。

取材協力:フィンエアー、フィンランド政府観光局

筆者プロフィール: 児玉源太郎

1973年生まれ。友人とフリーペーパーを創刊したのを機にライターとなり、幅広い分野の制作物を手掛ける。近年はクリエイティブディレクターとしても活動。コミュニティFMの洋楽番組「週刊ウーロック」のDJも務める。