毎年夏の時期に多くの日本人を悩ませる夏バテは、日中の高い気温や屋内外の寒暖差などで自律神経が乱れることが主因で起きると考えられている。体はだるくなり、食欲もあまりなく、どこに行っても暑くて億劫に感じる――。これらの症状を呈する夏バテのせいで、四季の中で夏が最も嫌いだという人もいるだろう。

ただ、夏バテに苦しむ人がいる一方で、夏場の体調不良とは全く無縁な人もいる。特に普段と変わりなく毎日を過ごせるとはなんともうらやましい限りだが、夏バテになりやすい人とそうでない人には、どのような差があるのだろうか。今回は、内分泌代謝専門医の山本咲医師に夏バテになりやすい人の特徴などをうかがった。

  • 夏バテがそのまま秋バテに移行してしまうケースもある

    夏バテがそのまま秋バテに移行してしまうケースもある

部屋にこもりがち・簡単な食事のみはNG

人によって個人差があるが、一般的に夏バテによって出現する症状には「冷え」「だるさ」「のぼせ」「頭痛」「めまい」「イライラ」「やる気が出ない」「食欲不振」「便秘」「下痢」「むくみ」などがある。「自分は夏バテに悩まされていない」と思っていても、夏頃に毎年のようにこれらの症状が出ていたら、「隠れ夏バテ状態」に陥っていると認識しておくべきだろう。

もともと体力がなかったり、自律神経が弱かったりする人が夏バテに陥りやすいとイメージする人もいるかもしれないが、山本医師は夏場の過ごし方が夏バテになりやすい人とそうでない人の分水嶺になると話す。

「例えば、『クーラーの効いた部屋にこもりがち』『涼しい屋内と暑い屋外の行き来など、急激な温度差にさらされる機会が多い』『冷えたジュースやビールといった飲み物や、アイスクリームなどの冷たいものをたくさん摂取する』『栄養バランスに偏りのある食事をしている』などの条件に該当する人は、夏バテを起こす危険があります。また、暑くて眠れずに睡眠不足になることや、十分な水分を摂取せずに脱水になることも体に負担をかけ、夏バテの原因になります」

暑さを避けるため、冷房の効いた部屋に一日中こもり、冷や麦やそうめんといった食べやすい冷たい麺料理だけを食べる――。こういった生活サイクルを毎日送っているようでは、夏バテに陥りやすくなる。

無理のない範囲での散歩や半身浴などで適度に汗をかいたり、食欲がない中でも栄養バランスに配慮した食事をしたりすることが、結果として夏バテになりにくい体づくりに寄与してくれると言えそうだ。

秋まで夏バテが続く? 秋バテの正体とは

温暖化が進む近年は、暦の上では秋となる9月に入っても30度を超すような日が珍しくない。そのため、夏バテならぬ「秋バテ」なる言葉を最近、見聞きする人もいるのではないだろうか。夏バテ同様、この秋バテも自律神経の乱れなどによる体の不調全般を指す。

「秋になっても夏バテが続いているかのような慢性的な諸症状、または夏バテの自覚がなくても、夏場に起きた自律神経の乱れや体力の低下が、季節の変わり目の急な温度や気圧、湿度の変化をきっかけに悪化してしまう症状を総称し、秋バテと呼んでいます。夏バテとの違いは出現する時期以外に特にないと思いますが、秋バテを防ぐには、夏バテを起こさないようにすることおよび、夏の体調不良を夏のうちにきちんと解消しておくことが大切です」

気圧や気温などの変化は、思った以上に私たちの心身に負担をかけ、場合によっては抑うつ状態になる人もいるとされている。「暑さ寒さも彼岸まで」と言われているが、季節が移ろいで行くときこそ、体調管理を怠らないようにしよう。

※写真と本文は関係ありません

取材協力: 山本咲(ヤマモト・サキ)

都内の大学病院で初期臨床研修後、同病院の糖尿病代謝内分泌内科医局に入局。糖尿病専門医、内分泌代謝専門医を取得。現在は神奈川県内の大学病院にて糖尿病代謝内分泌分野を中心とした内科診療に携わっている。En女医会所属。

En女医会とは
150人以上の女性医師(医科・歯科)が参加している会。さまざまな形でボランティア活動を行うことによって、女性の意識の向上と社会貢献の実現を目指している。会員が持つ医療知識や経験を活かして商品開発を行い、利益の一部を社会貢献に使用。また、健康や美容についてより良い情報を発信し、医療分野での啓発活動を積極的に行う。En女医会HPはこちら。