京浜東北線と横浜線が乗り入れる東神奈川駅。そのホームで営業し続ける「日栄軒」は、創業が大正7(1918)年という立ち食いそば屋の老舗中の老舗だ。

  • 東神奈川駅で創業100年となる「日栄軒」

    東神奈川駅で創業100年となる「日栄軒」

大正7年と言えば、松下電気(現: パナソニック)が創業し、児童雑誌の「赤い鳥」が創刊され、また、第1次世界大戦が終結した年でもあり、今年でちょうど開業100周年となる。横浜線の前身となる東神奈川=八王子間を結ぶ横浜鉄道が開業したのが明治41(1908)年、そして国有化されたのが大正6(1917)年と、国有化の翌年に日栄軒は営業を始めたことになる。

鰹節屋ブレンドの出汁を思う存分

現在、駅ナカの立ち食いそば屋はJRや私鉄に関わらずチェーン店での展開が多く、独立経営の店舗は数少なくなっている。そんな状況の中、日栄軒はチェーン展開ではなく独立して経営を続けており、チェーン店にありがちな味の均一化とは一線を画すこだわりの出汁を提供している。

  • 味のある手書きのメニューが店内に並ぶ

    味のある手書きのメニューが店内に並ぶ

  • 券売機でチケットを購入してカウンターへ。そばとうどんがメニューの中心

    券売機でチケットを購入してカウンターへ。そばとうどんがメニューの中心

今回、注文したのは"おすすめ商品"として写真付きで紹介されていた「山菜そば」(390円)。ワラビやゼンマイ、ナメコなどの山菜とネギが乗ったシンプルなメニューだ。

  • 「山菜そば」(390円)。出汁の風味を楽しみたいなら、冷やしもオススメ

    「山菜そば」(390円)。出汁の風味を楽しみたいなら、冷やしもオススメ

そばが目の前に運ばれた瞬間、さっとカツオの風味が香る。聞けばこの出汁、鰹節屋に独自にブレンドしてもらった特注品なんだとか。つゆはとにかく風味が豊かで味が濃い。そばをすすった時に、出汁の深みが口に広がってくる。元々、駅周辺は肉体労働者が多く集まる場所で、仕事で汗をかいた塩分補給のために濃い味付けが好まれたという。その名残で、つゆの味付けが濃いのだという。

  • 創業は大正7(1918)年。長きに渡り、昔と変わらぬ味を提供

    創業は大正7(1918)年。長きに渡り、昔と変わらぬ味を提供

朝、仕事前に立ち寄り、飲んだ後の〆は必ずそば! という常連も多く、閉店ギリギリまで客足が絶えないという。だんだんと数が減っていく駅ナカの立ち食いそば。100年変わらぬ味が、この先100年もこの場所で変わらぬ味であってほしいものだ。

※価格は税込