「初心者やオジサン御用達のピンクナンバー」とナメられていたのは昭和の話。今や125ccクラスのバイクは街中にたくさん走っています。その中でもスクーターはとても多く、セカンドバイクとして所有している人も少なくありません。
今回は、「一度買ったら手放せない」といわれる125ccスクーターの魅力を紹介します。
■ブームの火付け役は「通勤快速」と呼ばれたあのモデルから
現在は大人気の125ccスクーターですが、80年代は若者から「初心者やオジサン御用達のピンクナンバー」と格下に見られていたカテゴリーのバイクでした。それを一変させたのが、1991年に登場したスズキ「アドレスV100」です。
少しバイクに詳しい人なら「通勤快速」と呼ばれたこのスクーターを知っていると思いますが、車体も大きくエンジン特性もおだやかだった従来の125ccスクーターに対し、「アドレスV100」は50ccベースのコンパクトな車体に100ccの強力な2ストロークエンジンを搭載した機動性の高いモデルでした。
“俊敏でスポーティ”という新しい125ccスクーターのコンセプトはエンジンが4ストローク化した2000年代に入っても変わらず、「V100」の後継機「アドレスV125」も「二代目・通勤快速」として人気を博します。さらに少しボディが大きく高級装備のヤマハ「シグナスX」もライバルモデルとして大ヒットしました。
現在は従来のフラットステップ型スクーター以外にも、ホンダ「PCX」のようなスポーツタイプや高速道路の走行が可能な150ccクラスの人気が高まっていますが、その理由はコストパフォーマンスや利便性の高さだけではないようです。
■税金はこんなに安い! 重量税も不要
125ccは維持費が安いといわれますが、その一つが毎年納付する軽自動車税です。軽自動車税はすべてのバイクにかかる税金で、その納付額は排気量によって異なります。原付は50cc以下の「一種」と50cc超~125cc以下の「二種」に分かれますが、軽自動車税では90ccを境に区分されています。
具体的な納付金額は、50cc以下と50cc超~90cc以下が2,000円、90cc超~125cc以下が2,400円です。対して軽二輪車となる125cc超~250cc以下は3,600円、小型二輪車は6,000円になります。(2023年5月)
また、125cc以上のバイクには重量税がかかります。125cc超~250cc以下は届け出時、つまり新規登録時の4,900円ですが、250cc超のバイクでは、車検時に2年分を納付しなければなりません。納付額は新規登録からの経過年数によって3,800円(登録後12年)、4,600円(登録後13~17年)、5,000円(登録後18年以上)まで差があります。
■自動車保険に付帯できる「ファミリーバイク特約」
バイクにかける保険は強制の「自賠責保険」と「任意保険」があります。「自賠責保険」の金額は125cc以下(原付)、126~250cc以下(軽二輪)、250cc超(小型二輪)で分類され、契約期間が長いほど割引率が上がりますが、原付が6,910円(12カ月)/8,560円(24カ月)/10,170円(36カ月)、軽二輪(126~250cc)は7,100円/8,920円/10,710円、小型二輪自動車(251cc以上)は7,010円/8,760円/10,490円と、それほど大きな差はありません。(2023年5月現在・離島と沖縄県を除く)
任意保険は事故の場合に備えた保険で、自賠責保険ではカバーできない補償に備えるものです。バイクは事故のリスクが高いので加入しておきたいですが、近場しか走らない125ccに「バイク保険」は高いと考える方もいるはずです。
125ccの場合、自家用車に任意保険を加入している人なら「ファミリーバイク特約」を付帯できます。「バイク保険」より安く、125cc以下であれば何台も所有していても、他人から借りた車両でも適用されるというものです。
ただし「バイク保険」より補償範囲が狭く、ロードサービスが使えないといったデメリットもあります。事故の有無にかかわらず等級に変動はないのですが、料金は一律のため、「バイク保険」に長期間加入して無事故で割引率が高くなると割安感は逆転します。
■車両価格やメンテ費用、そのほかの魅力は?
125ccスクーターの新車価格は約25~35万円ほどで、中古車になると安いモデルもたくさんあります。このほか自賠責保険料や、登録代行・点検整備などの諸費用がかかります。諸費用は購入店によって差がありますが、相場は2~4万円ほどでしょう。
実燃費は30~60km/Lで、消耗部品は3,000~5,000kmで交換するエンジンオイルが約1.0L、前後タイヤは10~14インチです。銘柄や乗り方にもよりますが普通のバイクよりだいぶ安く済むでしょう。そのほか、1~2万kmで行う駆動系の整備に1.5~3万円ほどかかるはずです。
機械なのでメンテナンスのための費用はかかりますが、それでも50ccの原付より少し多い程度です。また、メインの大事なバイクやクルマの消耗を抑え、ガソリン代も節約できるというメリットもあります。
ただ、便利なセカンドバイクとして購入したはずなのに、予想以上の動力性能と使い勝手の良さに魅了されてしまう人も少なくありません。さまざまなパーツが手軽な価格で入手できるのもカスタム好きのライダーにはたまらないようです。
また、最近は125ccと共通の車体を持つ150ccクラスの人気も高まっています。上限いっぱいの250ccではなく、あえて125ccサイズを選ぶのは『これで高速に乗れたら文句なしだな』と感じたユーザーが多かったためでしょう。
■「原付二種」なのに「原付」じゃない? ライダーを惑わす標識
50ccの最高速度は30km/h、二人乗りの禁止や指定された交差点での二段階右折の規制があることはよく知られています。街中を走るには厄介ですが、125ccでは適用されません。高速道路をはじめとした自動車専用道路などの走行はできませんが、法定速度はほかの車両と同じです。
わずらわしい50ccのルールに縛られず、機動性を活かして市街地を走れるのは125ccの長所ですが、乗り始めて間もないライダーを混乱させるものがあります。それは「原付走行禁止」といった標識です。125ccは50ccのような30km/h制限や二段階右折は必要ないと知っていても「原付二種」ですから、疑問を感じるのも当然です。結論からいえば、道路標識の「原付」は125ccには該当しません。
その理由は「道路運送車両法」と「道路交通法」という二つの法律で125ccの名称が異なっているからです。少しややこしいのですが、50ccは道路運送車両法では「原付一種」、道路交通法では「原付」です。これに対して125ccは道路運送車両法では「原付二種」ですが、道路交通法では「小型二輪車」に区分されます。
つまり、道路の規制標識は道路交通法で定められたものであるため、「原付」は50ccのみを示しているというわけです。