世間が大不況に見舞われる中、4月のドラマ界にはNHK総合の金曜22時枠が加わるなど、一見景気がよさげ。しかし、作品の内容をよく見てみると、心の交流を描くヒューマンドラマが結構多いことに気付きます。やっぱり物質的に豊かでなくなると、人は心の豊かさを求めるものなのでしょうか……? さらに、もうひとつ不況の影響といえば、賃金カットなどによる人々の労働意欲の低下。「もはや給料のためだけに働く時代は終わった!」と言わんばかりに、部下をまとめる理想の上司ドラマが2作品も放送されます。そして、不況といえば結婚市場も然り。そのあおりを受けて婚活ブームが到来している現在、当然のように婚活ドラマも登場することに! さまざまな不況と闘う人々にドラマ界は適切なエールを送れるのか!? そのあたりも検証すべく、全21作品の中から注目作品を5つご紹介します。

2009年4月放送スタートの主な連続ドラマ(一部ドラマは5月より放送スタート)

放送スタート日時 放送局 タイトル 主なキャスト 内容
4月2日(木)20:00 NHK総合 ゴーストフレンズ 福田沙紀、西島隆弘、片瀬那奈ほか 交通事故に遭ったことがキッカケで、ゴーストが見えるようになった女子高生のファンタジック・コメディー。主人公・明日香を演じる福田沙紀にとって、この作品が連続ドラマ初単独主演作となる。
4月3日(金)22:00 NHK総合 コンカツ・リカツ 桜井幸子、清水美沙、国生さゆり、松坂慶子ほか なりゆきでコンカツ=結婚活動を始めるハメになった七海(桜井)、夫に突然離婚を言い渡されてリカツ=離婚活動をせざるを得なくなった梨香子(清水)――2人の39歳女性の姿を中心に描く作品。徹底リサーチしたリアルな描写は必見!
4月11日(土)19:56 TBS系 ゴッドハンド輝 平岡祐太、水川あさみ、要潤、寺脇康文、渡部篤郎ほか 平岡祐太の連続ドラマ初主演作は、患者を死なせたことのない"絶対的天運"をもつ新米外科医・輝の成長を描く医療ドラマ。原作は山本航輝の同名タイトル人気コミック。
4月13日(月)20:00 TBS系 ハンチョウ~神南署安積班~ 佐々木蔵之介、中村俊介、塚地武雅ほか 尊敬できる上司・安積(佐々木)と部下たちが理想のチームワークで、さまざまな事件に挑む刑事ドラマ。単なる刑事モノとしてでなく、心温まる人間関係の描写に注目したいところ!
4月14日(火)21:00 フジテレビ系 アタシんちの男子 堀北真希、向井理、山本裕典ほか 血のつながらない変人イケメン男子と同居することになったホームレスの女の子・千里(堀北)のふれあいと絆を描くホームコメディー。スタッフは「花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス」チームということで、飽きさせない演出に期待!
4月14日(火)22:00 フジテレビ系 白い春 阿部寛、大橋のぞみ、吉高由里子ほか 出所したばかりの元ヤクザ・春男(阿部)と彼の娘・さち(大橋)の物語。自分の娘とは知らずに出会ったさちと交流することで、どうしようもない男・春男が変わっていく姿を描く。新たな役どころをどう演じるのか――阿部の実力が試される!?
4月15日(水)21:00 TBS系 夫婦道 武田鉄矢、高畑淳子ほか 武田鉄矢と高畑淳子が演じる夫婦を中心とした人気ホームドラマが復活! 王道の作風に加え、キャストも前回と同じということで、派手ではないが今クールでいちばん安心して見られるドラマかも……。
4月15日(水)21:00 テレビ朝日系 臨場 内野聖陽、松下由樹ほか ベストセラー作家・横山秀夫の人気小説をドラマ化。類稀なる見立ての目を持つ検視官・倉石(内野)が、事件の裏の裏まで徹底的に暴いていく。毎回徹底した役作りをする内野が、どんな倉石を作り上げてくるかに期待!
4月15日(水)22:00 日本テレビ系 アイシテル~海容~ 稲森いずみ、板谷由夏、山本太郎、佐野史郎、田中美佐子ほか 少年が少年を殺めるという事件を発端に、被害者と加害者の家族の葛藤、再生を描くヒューマンドラマ。あまりにも重すぎて、会社帰りの疲れた身には辛い作品かも……!? ただ、考えさせられる内容なので、一度は見てみるべき!
4月16日(木)22:00 フジテレビ系 BOSS 天海祐希、竹野内 豊、戸田恵梨香、玉山鉄二ほか 天海祐希が初の刑事役にチャレンジ! しかも、新設された特別犯罪対策室に配属されたオチこぼれ刑事たちをまとめ上げるボス役ということで、彼女のイメージにピッタリのハマリ役になる予感大。
4月17日(金)22:00 TBS系 スマイル 松本潤、新垣結衣、小池栄子、中井貴一ほか フィリピン人と日本人の親を持つビト(松本)、失語症の女子高生・花(新垣)の交流と、彼らの笑顔に隠された心の傷を描くヒューマンドラマ。タイトルだけ聞くと少々安っぽい(!?)イメージを抱いてしまうが、かなり深い内容のドラマになりそうだ。
4月17日(金)23:15 テレビ朝日ほか 名探偵の掟 松田翔太、香椎由宇、木村祐一ほか 推理モノのお約束をパロディー化した東野圭吾の問題作をドラマ化! 難事件に挑む主人公の探偵・天下一大五郎を演じるのは、いま上昇気流に乗っている松田翔太。連続ドラマ初主演ということで、彼の真の実力と人気が試される!?"
4月18日(土)21:00 NHK総合 遥かなる絆 鈴木杏、グレゴリー・ウォン、フービン、加藤健一ほか 城戸久枝の手記を映像化。中国残留孤児の父を持つ久枝(鈴木)が、父親が隠し続けていた真実を追い求めていく。国境を越えた親子の愛、中国残留孤児を取り巻く事実が胸に迫る一作。
4月18日(土)21:00 日本テレビ系 ザ・クイズショウ 櫻井翔、横山裕、松浦亜弥、真矢みきほか 生放送のクイズ番組で、解答者が手を染めた罪を暴いていくエンターテインメント・ドラマ。巧みな話術で解答者を追い詰めるMC・神山には、報道番組『NEWS ZERO』のキャスターも板についてきた櫻井翔をキャスティング!
4月19日(日)21:00 TBS系 ぼくの妹 オダギリジョー、長澤まさみほか 幼くして両親を亡くした兄妹の絆を描くホームドラマ。兄妹愛を軸に、ラブやサスペンスの要素も散りばめられている。出演作品選びにこだわりを持つオダギリが、『時効警察』以来久々に選んだテレビドラマということで、その内容に注目したい。
4月20日(月)21:00 フジテレビ系 婚カツ! 中居正広、上戸彩、佐藤隆太ほか 再就職の条件を満たすため、婚活に励む30代男性・雨宮邦之(中居)の姿を描くポップなドラマ。中居にとって11年ぶりの月9主演となる。また、上戸も月9初ヒロインということで、新鮮な顔ぶれに負けない"新鮮な内容"になってくれることを祈る!
4月23日(木)20:00 テレビ朝日系 京都地検の女 名取裕子、寺島進、益岡徹、渡辺いっけい、蟹江敬三ほか おなじみの『京都地検』の第5弾! 前作で島根県に異動となった検事・鶴丸あや(名取)が、再び京都地検に舞い戻り、主婦のカンをフル活動して事件解決に挑む。今回から新レギュラーとして演技派・寺島進も参加。作品の安定感が増しそう!
4月23日(木)21:00 テレビ朝日系 松本清張生誕100年スペシャル 夜光の階段 藤木直人、木村佳乃、夏川結衣 松本清張の生誕100年を記念しておくるサスペンス。女たちを虜にしながら頂点を目指す貪欲な美容師・道夫(藤木)の姿を描く、清張らしいドロドロ系ドラマだ。藤木がどれだけ""悪い男""ぶりを発揮できるかが、ドラマの勝敗のカギ!?
4月23日(木)23:58 日本テレビ系 LOVE GAME 釈由美子ほか 恋愛に関する究極の課題をクリアすれば1億円がもらえる"LOVE GAME"に参加した人たちが体験するラブサスペンスを描く、放送作家・安藤元一の初小説のドラマ版。『ライアーゲーム』の匂いがどことなくするのは気のせい……!?
4月25日(土)23:10 フジテレビ系 魔女裁判 生田斗真、加藤あいほか 裁判員に選ばれた青年(生田)が次々に事件に巻き込まれていく近未来クライム・サスペンス。裁判員制度導入によって起こりうることについて考えさせられる内容だ。生田の初単独主演作という点でも注目の一作。
5月23日(土)19:56 TBS系 MR. BRAIN 木村拓哉、綾瀬はるか、水嶋ヒロほか 警視庁科学警察研究所に務める元ホストの脳科学者・九十九龍介(木村)が難事件の解明に挑む本格ミステリー。『ROOKIES』終了後は視聴率的に苦戦を強いられている枠だけに、高視聴率王・木村の真価が問われる!?

リアルな婚活事情を知りたいなら視聴すべし! - 『コンカツ・リカツ』

NHK総合の新設枠に第1弾として投入された『コンカツ・リカツ』。枠のなじみの薄さ+地味な印象が否めないキャスティングから、うっかり視聴リストから外してしまう人も多いのではないでしょうか。だから、視聴率的にはあまり期待できないかもしれません。が! 内容はかなりオススメ。スタッフがいろんな婚活の場を取材しただけあって、とにかくネタも豊富で、登場人物のセリフも怖いくらいリアル(実際、周りで婚活中の友人らがよくしている会話も出てきて、思わずのけぞったほど…)。婚活用語も解説付きでバンバン飛び出すし、婚活中の人もそうでない人もかなり勉強になるはずです。もちろん、離婚を考えている人にとっても、リカツ指南になること請け合い! 「ドラマでは夢を見たいんだよ!」と言う人には無理にオススメしませんが、できれば後学および飲み会の会話のネタ収集のため見てほしいものです。

さくらの期待度は……☆☆☆

正統派女優・松坂慶子が演じる母親のとぼけた味わいにも注目してほしいです。ぜひ!

阿部ちゃんの火曜22時伝説は続くのか!? - 『白い春』

阿部寛と大橋のぞみの異色コンビで親子愛を

タイトルだけ見ると何のこっちゃ分かりませんが、元ヤクザのダメ男とその娘の"究極の親子愛"を描く作品です。主演の阿部寛といえば、過去に『アットホーム・ダッド』、『結婚できない男』とヒットを連発し、この枠との相性の良さを証明してきました。が、過去2作品はいずれもコメディーで、阿部ちゃん自身が演じた役もコメディー色満載。今回の超シリアスな作風や役柄とは正反対だったわけで……。一応、裏テーマには"『結婚できない男』のチームで毛色の違う新しい作品を作る"というのがあるようだけど、それが吉と出るか凶と出るか……。特に、初回は重苦しい空気が漂う内容。その重さたるや、『崖の上のポニョ』の大橋のぞみによる和み効果も太刀打ちできないほど!? 暗い内容に初回早々リタイアしそうになる視聴者も出そうな予感。次も見たいと思わせるエンディングの演出、次回予告を配すれば、何とかなるかもしれませんが、さて……?

さくらの期待度は……☆

大橋のぞみが『ポニョ』を歌ったら視聴率も上がるかも!? ま、たぶん実現しないけど……。

ダメ集団のボスは天海祐希のハマリ役になるかも…… - 『BOSS』

天海の"男っぷり"が光る?

天海祐希が初の刑事役……というのは結構どうでもいいんですが、落ちこぼれ刑事たちをまとめるボス役という点は注目に値します。あの美貌、あの体格があれば、ボスの風格は十分! 万が一、役作りが少々マズかったとしても、全然OKでしょう。しかも今回は脚本家も演出家も、天海のテレビドラマ出世作『離婚弁護士』と同じ! あのときと同じように、天海を上手く料理することができれば、新たなハマリ役となるはずです。もちろん、そのためにはダメ刑事たちの演技も重要。温水洋一は問題ないとして(笑)、戸田恵梨香や溝端淳平ら若手がどれだけダメっぷりを出せるか!? そのさじ加減によって、天海の引き立ち方とボスとしての魅力が変わってくるかと……。

さくらの期待度は……☆☆☆

いずれにせよ、抜け目ない作品には仕上がることでしょう。美人に目のない天海の同僚を演じる竹野内 豊にも頑張ってほしいところ。

松潤の演技力にすべては懸かっている!? - 『スマイル』

新垣結衣は失声症の少女を熱演

いや~、松本潤がフィリピン人と日本人の間に生まれた子の役ですか……。まず、ビジュアル的には何の問題もなさそうです。そして、このドラマのキーとなる笑顔。こちらも、アイドル歴の長い彼のことですから、難なくクリアすることでしょう。実はオンエア前の懸念材料といえば、やや陳腐なタイトルだけだったりするのですが、敢えて他に挙げるとすればオリジナル作品であるという点。松潤は過去に『ごくせん』、『きみはペット』、『花より男子』、『バンビ~ノ!』などでヒットを飛ばしてきましたが、どれも原作ありきの作品でした。でも、今回は完全なオリジナル・キャラクター。ゼロの状態から彼がどれだけ傷を隠し持った深みのあるキャラクターを作れるのか!? その出来次第で、ヒューマンドラマとしての完成度も変わってくるはずです。頑張れ、松潤!

さくらの期待度は……☆☆

メインキャストが飛ぶ鳥を落とす勢いの松潤に新垣結衣だから、何だかんだ言って視聴率は取りそう。

キムタクの実力が20時台で通用するのか見もの! - 『MR. BRAIN』

木村の相手役には綾瀬はるか。キャスティングは申し分ないが……

最後は変則的に5月スタートとなる『MR. BRAIN』。というわけで、こちらは不況とは何の関係もなさそうなドラマですが、変則的にご紹介します。まずは木村拓哉が1年ぶりの連続ドラマで、またも5月スタート作品に出ることでビックリ! しかも、この枠を選んだことに二度ビックリ!! 脳科学者という役柄だけでなく、放送枠すらも新しいものにCHANGE……もとい、チャレンジしてやるぜ!――という気概が伝わってきそうな勢いです。そんなキムタク、悲しいかな、いつも話題になるのは役柄以上に視聴率のこと。なんせ、彼はこれまで数々の高視聴率伝説を築き上げてきた男! 作品の内容がちょっと「?」でも、視聴率では多大なる成果を上げてきました。今回もちゃんと数字を上げられれば、「テレビタレントイメージ調査」圏外落ちの汚名も返上できるのですが……。しかし、放送される土曜夜は在宅率の低い時間帯。今回ばかりはちょっと数字が読めません……。

さくらの期待度は……☆☆

ただし、綾瀬はるかや水嶋ヒロの人気も手伝って、少なくとも最低合格ラインの視聴率は取るのでは?

お金がなければ外出も億劫。そんな時は家でテレビを見るのがいちばん安あがり! 4月クールはお気に入りのドラマを見つけて、不況に対する不安を吹き飛ばして前進できるようなパワーを蓄えてみては? そのパワーが世の中を明るい方向に向かわせるかもしれません……なんてのはちょっと大げさですかねぇ。

さくら

"ドラマを見てはセリフを覚え、友人とドラマごっこをする"という幼少期からの趣味が高じ、大学卒業後は流れ流れてエンタメ雑誌業界へ。テレビドラマなどの特集担当記者を経て、現在はフリーライター。テレビ番組を中心とした特集やインタビュー記事を手がける。