前担当者の寅次郎がふらりと何処かへ逃げたおかげで、今回から私・さくらが当コラムを担当させて頂くことになりました。というわけで、早速ではありますが、業界で昨今"捨て枠"と囁かれる7月クールについて。2008年7月期もやはりパッと目を引く大作がないのが哀しいところです。数字が取れない夏クールだからこそ、いっそ大冒険してほしいところですが……。メインどころ17作品のうち、オリジナル作品はたったの6つ(シリーズものを除く)。相変わらず、コミック原作モノが5作品と、漫画の人気と発想に頼りすぎな印象。オリジナルものにも、ドラマ界においてヒット率の高い学園ドラマと医療ドラマの占める割合が高いことから分析しても、無難路線に走っている感が否めません。そんな鮮度に欠ける7月期ドラマですが、いくつか注目したい作品をピックアップしてご紹介します。

2008年7月放送スタート(一部作品は8月)の主な連続ドラマ

日時 放送局 タイトル 主なキャスト 内容
7月1日(火)22:00 フジテレビ系 モンスターペアレント 米倉涼子、平岡祐太、佐々木蔵之介ほか 教育委員会から派遣されたセレブ弁護士・高村樹季(米倉)が、モンスターペアレントたちが巻き起こすトラブルに対応していく姿を描く,
7月2日(水)21:00 テレビ朝日系 ゴンゾウ~伝説の刑事 内野聖陽、筒井道隆、本仮屋ユイカ、大塚寧々ほか ある事件が原因でPTSDに陥った元・検挙率ナンバーワン刑事・黒木俊英(内野)が、過去のトラウマと闘いながら、数々の難事件に立ち向かう姿を描く
7月3日(木)20:00 テレビ朝日系 その男、副署長 船越英一郎、田中美里、萬田久子ほか 京都を舞台に、捜査権のない副署長・池永清美(船越)が、独自の捜査で犯人を自首に導く風変わりなミステリーのシーズン2
7月3日(木)22:00 フジテレビ系 コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命- 山下智久、新垣結衣、戸田恵梨香、比嘉愛未、浅利陽介ほか 新医療システム「ドクターヘリ」が題材の医療ドラマ。藍沢耕作(山下智久)をはじめとするフライトドクター候補生4人の奮闘と葛藤を描く
7月4日(金)21:00 テレビ朝日系 ロト6で3億2千万円当てた男 反町隆史、中島知子、眞鍋かをり、豊原功補ほか 年収360万円のバツイチ会社員・立花悟(反町)は何気なく購入したロト6で1等に当せん。それを機に激変していく彼の人生を描くコメディー。原作はノンフィクション
7月4日(金)22:00 TBS系 魔王 大野智、生田斗真、劇団ひとりほか 連続殺人犯の弁護士・成瀬領(大野)と、刑事・芹沢直人(生田)を中心に展開するサスペンス。過去にコケ通しの韓流リメーク作品だが、本作で巻き返せるかは微妙…
7月6日(日)21:00 TBS系 Tomorrow 竹野内 豊、菅野美穂、緒川たまきほか 30億もの負債を抱えた市民病院の再建に挑む外科医・森山航平(竹野内)を中心に、地方医療の問題や人とのふれあいを描く。視聴率低迷の同枠のカンフル剤となるか!?
7月7日(月)20:00 TBS系 あんどーなつ 貫地谷しほり、國村隼、尾美としのり、風吹ジュンほか ふとしたことから和菓子職人の道を歩むことになったパティシエ志望の安藤奈津(貫地谷)を中心とした人情あふれる感動ドラマ
7月8日(火)21:00 フジテレビ系 シバトラ~童顔刑事・柴田竹虎~ 小池徹平、大後寿々花、塚地武雅、真矢みき、藤木直人ほか 小池徹平演じる超童顔刑事・柴田竹虎(通称・シバトラ)が仲間たちとともに、少年犯罪に立ち向かう。原作は同名タイトルの人気コミック
7月9日(水)22:00 日本テレビ系 正義の味方 志田未来、山田優ほか 悪魔のような姉・槇子(山田)にいじめ倒されながらも、前向きに生きる女子高生・中田容子(志田)の日々をコメディータッチで描く。志田のコメディエンヌぶりに期待
7月10日(木)21:00 テレビ朝日系 四つの嘘 永作博美、寺島しのぶ、羽田美智子、高島礼子ほか 41歳の女性4人のずるさ、醜さ、哀しさ、強さを描く辛口アラフォー・ドラマ。脚本は、同名原作小説を書いた大石静
7月12日(土)21:00 日本テレビ系 ヤスコとケンジ 松岡昌宏、広末涼子、多部未華子、大倉忠義ほか 元暴走族総長・ケンジ(松岡)と妹・ヤスコ(多部)の兄妹愛を描くホームコメディー。原作コミックの持ち味である登場キャラの突出した個性をきっちり表現できれば成功!?
7月15日(火)22:00 日本テレビ系 学校じゃ教えられない! 深田恭子、谷原章介ほか 舞台は新たに男子生徒を受け入れることになった名門女子高校。英語教師・相田舞(深田)が創設した社交ダンス部に所属する生徒たちの青春ラブストーリー
7月21日(月)21:00 フジテレビ系 太陽と海の教室 織田裕二、北川景子、岡田将生、北乃きい、山本裕典ほか 偏差値至上主義の有名進学校で、どこまでも真っ直ぐな熱血教師・櫻井朔太郎(織田)と生徒たちの交流を描く学園ドラマ。プロデューサーは、日本テレビ時代に『14才の母』などヒット作を生み出した村瀬健
7月25日(金)23:15 テレビ朝日ほか 打撃天使ルリ 菊川怜、遠藤雄弥、升毅ほか "人気コミックをドラマ化。右手に人力を超えた力を秘める""打撃人間""の小峰ルリ(菊川)が、悪と対峙していく。金曜ナイト枠と相性のよい菊川の三流演技が見もの!"
8月2日(土)19:56 TBS系 恋空 水沢エレナ、瀬戸康史ほか 壮絶な運命に翻弄される女子高生・美嘉の初恋を描く。映画版も大ヒットしたケータイ小説のドラマ版。陳腐なストーリー展開だけに、役者の演技にかかっているが……
8月2日(土)23:10 フジテレビ系 『33分探偵』 堂本剛、水川あさみ、高橋克実ほか ダメ~な探偵・鞍馬六郎(堂本)がさまざまな事件で延々とゆる~い推理を展開する脱力系コメディー。ともすれば、退屈になりかねない脱力系。演技と演出がカギ

真価が問われる! 月9と織田裕二のブランド力 - 『太陽と海の教室』

ここ何年も視聴率が思うように取れず、ブランド力の低下が著しい月9。天下の木村拓哉を主演に据えた4月クール『CHANGE』でも、期待外れな結果に……。そこで、この枠に満を持して再登場するのが織田裕二です。とはいえ、織田自体もドラマでは2000年代に入ってから不発続き……。しかも今回は熱血教師役です。ドラマの熱血教師は役者の力量以前に、セリフ自体がもつ説得力が重要。どんなにクサかろうが視聴者を本能的に惹きつけるようなセリフが詰まった脚本かどうか――これが成功と失敗のターニングポイントとなるはず! 脚本の坂元裕二が『わたしたちの教科書』の時の力を出してくれることを祈るのみ。

さくらの期待度は……☆

個人的には熱血教師像よりも、深夜枠で力を見せた北川景子と北乃きいの演技に注目!

貫地谷投入で新しい客を呼べるか!? - 『あんどーなつ』

演技力も定評のある貫地谷しほり
(C)長谷川朗

月曜20時は『水戸黄門』をはじめ『浅草ふくまる旅館』など、安心して見られる役者が揃ってはいるけど、どうもフレッシュさに欠けるメイン・キャストばかり……という枠でした。が、この夏は一転して貫地谷しほりを投入! かといって、貫地谷しほりが派手かといえば疑問だけど、NHK朝の連続テレビ小説『ちりとてちん』以降の勢いは誰もが認めるところです。前クールの主演作『キミ犯人じゃないよね?』(テレビ朝日系)でも『ちりとて』(NHK総合)ファンを多く取り込んでいたし、貫地谷目当てで見る客も多いかも。彼女の演技はかなり水準が高いので、万が一脚本と演出が"?"だとしても、そこそこ見られる作品になりそう。

さくらの期待度は……☆☆☆

数字的にはキツいかもしれないけど、原作も心温まるイイ話なので、良作になる予感大。

深キョンと谷原章介の化学反応が楽しみ! - 『学校じゃ教えられない!』

定期的にドラマ主演している深田恭子。爆発的ヒット作に恵まれないが今回は?

深田恭子が英語教師というのは、以前にも限りなく似た設定があったのでスルー。学園モノで青春ラブストーリーというジャンルもありきたりなのでスルー。女子高が男子生徒を受け入れることになったという基本設定や、一時期映画やバラエティーで脚光を浴びていた社交ダンスを題材のひとつに選んだのも、"いまさら感"があるのでスルーしましょう。ハッキリ言って、深キョンのドラマは永遠不変とも言える彼女独特の空気を楽しむのが勘所です。しかも、今回は受け演技が上手い谷原章介が2番手! 内容以前に、この組み合わせでどんな化学反応が起こるのかを楽しむべきだと思います。

さくらの注目度は……☆☆

頭を空っぽにして見たいドラマ。深い人間ドラマはあまり期待しない方がよさそう。

『相棒』に続く人気シリーズになれるか!? - 『ゴンゾウ~伝説の刑事』

ダメ男の内野聖陽。このギャップが吉と出るか?

いまや押しも押されぬ人気作『相棒』(テレビ朝日系)を抱える水曜21時枠に、久々の新シリーズが登場。しかも、プロデューサーは『相棒』の松本基弘! とくれば、おのずと期待度は高まります。内野聖陽演じるダメ刑事(でも実は捜査一課のエースだった男)の過去と、警察内部の人間をも巻き込む殺人事件を柱に、(女以上に)熾烈な男たちの駆け引きが展開される『ゴンゾウ~伝説の刑事』。人間ドラマとしてもなかなかよく出来た脚本なので、刑事ドラマ・ファンでなくても鑑賞に堪えうる作品です。あとは、内野聖陽が鋭さを内に秘めたダメ刑事を愛されるキャラとして演じてくれれば、作品にも弾みがつくはず。

さくらの注目度は……☆☆☆

作品の内容も然ることながら、内野のはだけた胸元フェロモンが気になる……。

ドロドロのアラフォー・ドラマは同世代の心を掴めるか!? -『四つの嘘』

永作博美が約6年ぶりの連ドラ主演ということで注目の『四つの嘘』。メイン女優にはほかに寺島しのぶ、羽田美智子、高島礼子……と、申し分ないキャスティングです。が! 懸念材料はアラフォー世代を描くドラマであるという点。というのも、前クールで同じくアラフォーを題材にした『Around 40~注文の多い女たち~』(TBS系)が同世代の支持を得てヒットしたばかりだから。あちらが"40女の軽~い愚痴ドラマ"なら、『四つの嘘』は"女の恐ろしさが渦巻くドラマ"。あまりにも現実的でシビアすぎて、同世代視聴者は敬遠する可能性も!? でも、個人的には『四つの嘘』の方がいろんな意味で勉強になるかと……。

さくらの注目度は……☆☆☆

意外とドロドロに憧れる『恋空』世代にウケるかも!? 永作の魔性の女ぶりにも期待!

冒頭でも書いたように、微妙なラインアップの7月期。ドラマ史に残る名作が生まれる可能性はゼロに近い(言い過ぎ?)ので、いっそのことまずはダラダラ一通り見て、迷作を探してみるのもアリかも。何も感動することだけがドラマの醍醐味ではないですから……。この7月期は軽い気持ちで、ドラマの新しい楽しみ方を見付けてみては?

著者プロフィール さくら

"ドラマを見てはセリフを覚え、友人とドラマごっこをする"という幼少期からの趣味が高じ、大学卒業後は流れ流れてエンタメ雑誌業界へ。テレビドラマなどの特集担当記者を経て、現在はフリーライター。テレビ番組を中心とした特集やインタビュー記事を手がける。