こんにちは、人事・戦略コンサルタントの松本利明です。私はPwC、マーサー、アクセンチュアなどの外資系大手のコンサルティング会社で24年以上、600社を超える企業の人事コンサルティングをしてきました。

その経験から就職活動の現場をみると、「就活のセオリー」と言われている内容には、実はドツボにはまってしまうものもあるのです。

この連載では「人事の『裏』」を知り尽くした視点から、本当に使える就活のコツを解説します。

  • 就活で差をつける「本当」のポイントは?

就活で「強み」をPRしても逆効果?

就活の教科書には必ず書いてあるでしょう「自分の『強み』を明確にして書類や面接でPRしましょう。そのために、自己分析を綿密に行いましょう」と言われていますが、あなたは同級生やライバルを出し抜くほどの強みが見つからず、途方に暮れていませんか?

そう、大学時代に、人とは違う凄い経験を積めるのはごく少数。ゼミ、アルバイトを含め、ほとんど同じような経験となるため、「強み」も似通ってしまうのは、当たり前のことです。特にコロナ禍の自粛がその傾向をより強めています。

ご安心ください。「強み」のベクトルを逆視点にすればいいのです。普通は「あなた」→「あなたの強み」→「面接官」のベクトルで、「あなたが考えるあなたの強み」を面接官にPRし、面接官が合否を考える。

そこで面接官の立場で考えてみましょう。大事なことですが、人事担当者はあなた以外にも、たくさんの学生を面接します。毎日、大量の就活生の「似たような強み」でガンガンPRされたら、あなたが面接官ならどう感じますか?結構しんどいと思いますよね?

面接官が欲しい「判断材料」とは

もし、自分が面接官であれば、相手が何を伝えてくれたら合格を出しやすいですか? そう、「我が社に合いそうで、一緒に働きたい」という判断材料が欲しいですよね。

「私はリーダーシップがあって……」「協調性が……」などのぐいぐい系の自己PRばかり受けたら、面接官の頭の中はどうなるか? 逆の視点で考えればすぐ分かります。

そう、面接官自身や人事が考えた「優先すべき軸」に置き換えながら判断しますよね。当然、脳に大きな負荷がかかり、疲れます。では、どうするのが正解かというと、「面接官が考えていそうな順番」に並び替えて伝える、替えればよいのです。

面接の正解は2つある

ここでの正解は2つあります。客観的に正しいこと。もう1つは相手の主観(優先順・判断基準)に沿って正しいことです。

ビジネスの世界では、後者の「相手の主観(優先順・判断基準)に沿って正しいこと」が優先されますが、就活生でこの事実を知っている人はごく少数。

やることは簡単です。自分が面接官であれば、「どんな優先順で、どんな基準でYes/Noを判断しているのだろうか?」の予測をたて、その順番に沿って自己PRすればいいのです。

もし、その予測が外れたら? ご安心ください。例えハズレでも、相手の立場で真剣に考えて伝えれば、その人の心に残ります。「我が社や私のことを思って、考えて話してくれたな」という誠意は確実に伝わるのです。結果、たったこれだけでも、その他大勢から抜け出し、好印象を与え、相手の記憶に残るのです。

プラス、人には「返報性の原理」があります。これは、相手が与えてくれたら、お返ししなくてはいけないという心理メカニズム。「面接官である自分が『判断しやすい順番』を意識して伝えてくれた」と思われたら、あなたに対しても「面接官が判断しやすい順番で、質問してあげよう」という心理が働き、他よりも有利になるのです。

このように優先順位をクリアしたら、次は面接官の「判断基準のクリア」です。これも、逆視点でみると簡単にコツがつかます。次回はそれを解説します。