特別な資産家でない限り、親からの住宅取得資金の贈与が最も一般的な生前贈与のケースでしょう。住宅取得資金の贈与の特例には「住宅取得資金の非課税特例」「相続時精算課税制度における住宅取得資金贈与の特例」「贈与税の配偶者控除」の3種類があります。要件は少しずつ異なるので、下表でさまざまなポイントを比較チェックしましょう。

  • 住宅取得資金贈与の特例のそれぞれの特徴

    住宅取得資金贈与の特例のそれぞれの特徴

赤字のところが特出すべき部分です。配偶者控除は住宅取得資金だけではなく、住まいそのものの贈与も可能なのです。

現在30~40代の方の親や祖父母の代は、高度成長期に蓄財できた世代です。翻って、現在贈与を受けようとする世代の子どもたちは、親から贈与を受けられるでしょうか。今この記事を読まれている30~40代の方は、自身のお子さんやお孫さんに住宅取得資金の贈与はできるでしょうか。

「子どもには資産を残さない」という発想もありますが、親が「次世代の将来のリスクをできるだけ少なくしたい」と考えるのは当然です。「子どもが早くから自立できるよう、人生設計がしっかり立てられるように育てる」「受けた贈与だけに頼らない人生設計を考える」「次の代まで残せる住まいを建てる」など、できる工夫はいろいろあります。

日本の住まいの寿命は短すぎます。地震のないヨーロッパの石造りの住宅は、数百年の耐用年数を誇ります。グローバル化に伴い、世界の同世代と競争しなければならない日本の次世代は、一世代で必ず高額な住まいを取得しなければならないとしたら、著しく不利となるでしょう。

贈与はもらうだけでなく、いずれ贈与する側になるかもしれないことを併せて考えると、贈与の効果も増していくと思われます。

■ 筆者プロフィール: 佐藤章子

一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。