近年は大規模な災害が日本各地で頻繁に起きている。2019年だけ見ても、10月の台風19号はいくつもの河川で氾濫を引き起こしたし、9月の台風15号では電柱の倒壊などが原因で1カ月以上もの停電生活を余儀なくされたエリアが出た。千葉県や福島県を震源地とするM6以上の地震も頻発し、九州での豪雨による災害が激甚災害に指定され、「命を守る行動を」が「新語・流行語大賞」にノミネートされた。
このような災害大国・日本では、いつ自分が大規模災害に見舞われるかわからない。いざ、大雨や地震などに遭遇した際に被害を最小限に食い止めるには、日頃からの備えが肝要となる。そこで今回、東京都墨田区にある本所防災館の担当者に各種災害への対策などについてうかがった。初回のテーマは「地震」だ。
地震発生時は下手に移動しない方がよい
地震はいつどんな場所でも起こりうる可能性があり、どこで遭遇してしまうかわからない。自宅や職場だけでなく、外にいるときや商業施設の中など、意外な場所で震災に遭う可能性もある。
地震の際は、家屋などの建物の倒壊による被害が最も怖い。ただ、現在では多くの施設で耐震化などが進められており、建物自体が倒壊するケースは比較的珍しいという。それもよりも、物が倒れてきたり落ちてきたりすることへの注意が必要となってくる。
「大きな地震だと、揺れてから移動するとかえって危ないケースもあります。今いる場所を見て、周りに落ちてくる物がなければ、その場にとどまった方がいいですね。地震が発生したら『完璧に安全な場所』は正直ないので、周りを見てより安全な方に避難するようにしましょう」(今村均館長)
では、地震が発生した際に具体的にどのような行動をとるべきなのだろうか。シチュエーションごとに以下にまとめた。
自宅にいた場合にとる行動
大きな家具や落下物から身を守るため、頭を保護しながら大きな家具から離れ、丈夫な机の下などに隠れる。その後、揺れが小さくなったり止まったりしたからといって、あわてて外に飛び出すのはNG。料理などで火を使用していたら、火元の確認をしてから避難路を確保するようにしたい。
屋外にいた場合にとる行動
屋外にいるときは、門や塀など頑丈そうに見える構造物でも倒壊の危険性がある。思わず寄りかかりそうになるが、なるべく周囲に何もない所で身を守るようにしたい。
オフィスにいた場合にとる行動
オフィスも自宅同様、棚などから頭上に物が落ちてくる可能性が高くなる。普段から、自宅やオフィスの中にも物が倒れてきたり、落ちてきたりしないような安全なスペースを確保しておくとよいだろう。
運転中の場合にとる行動
運転中の場合は、急ブレーキなどはせずに、ハザードをつけて速やかに路肩などに停車をするように。橋の上など倒壊の危険性があるエリアからはなるべく早く離れるようにしてほしい。
商業施設にいた場合にとる行動
ショッピングモールなどの施設にいる場合には、必ず見える場所に非常口の案内表示が出ているので、揺れが落ち着いたら表示に従って避難するようにしたい。この非常灯や誘導灯、非常案内などは設置が義務付けられているはずなので、落ち着いて行動するようにしよう。ちなみに、白地に緑色で掲示されているものが誘導案内で非常口の場所を指し示すもの、緑地に白色で掲示されているものは、まさにそこが非常口であることを示している。
また、ホテルなど初めて滞在する場所などでは、まず避難経路と非常口を確認しておくなどを心がけると、万一の際にも焦らずに行動できるはずだ。
揺れの質が異なる2つの大震災を疑似体験
本所防災館では、阪神淡路大震災や東日本大震災での揺れを疑似体験できる施設がある。どちらも大きな地震であることは変わりないが、その揺れ方には大きな違いがあった。まず、東日本大震災の方が揺れ時間が長く、横に揺れるような感覚が大きかった。阪神淡路大震災は揺れ時間は短めだが、下から突き上げるような揺れを感じられた。
ただ大きく揺れ始めると、どちらも立っていることはままならない。施設では地震がくるとわかっていたからこそ、すぐにテーブルの下に身を隠せたが、予告なく地震が来たときに同じように行動ができるかと聞かれたら、自信が持てないというのが正直な感想だ。
最近では、揺れる直前にスマートフォンで緊急地震速報が鳴り、大きな揺れを察知することも可能になっている。震源に近いほど揺れまでの時間は短くなってしまうが、たとえ数秒でもすぐに安全なところに身を隠すことが大切だ。
「緊急地震速報はシステム上、誤報が起こってしまうケースもあります。過去にもそのような事態はあったため楽観視してしまう人もいるかもしれませんが、警報音が鳴ったら必ず安全を確保することを心がけるようにしてください。大地震の際は、たとえ数秒であっても命を守る行動をとることを最優先としてください」
地震が来た時・来る前にすべきこと
テーブルの下に隠れる際は脚をしっかり握る
地震の際には落下物などから頭などを守るために、テーブルの下に身を隠すことが多いが、その際の姿勢も重要だ。床に手をついたりせず、テーブルの脚の比較的上の方をしっかりと握るようにしたほうがよい。床に手を置くと、テーブルの脚が地震で跳ね上がり、手が下敷きになってケガをする恐れがあるからだ。
「ウチはどっしりと重いテーブルだから問題ない」と思っていても、60㎏もの重さがあるテーブルですら跳ね上がる場合があるため、油断は禁物だ。
消火器の場所や扱いを確認しておく
地震の際は火事による被害も怖いが、現在のガス機器は地震を察知すると自動で止まる仕組みが普及しており、ストーブなども多くは安全装置がついている。揺れがおさまってから落ち着いて行動すれば、問題ないケースがほとんどなので、現代ではまず自分の安全確保に努める方がよいだろう。
万一、何かに引火して火の手が上がってしまったとしても、すぐに初期消火ができるように普段から消火器の場所や扱いを確認しておくとよいだろう。
大きな家具をあらかじめ固定しておく
「タンスや棚などが倒れてこないように器具で固定する」「戸棚などの扉にもストッパーをつける」「ガラス窓やガラス扉には飛散防止フィルムを貼っておく」などの事前対策を施しておけば、安全を確保しやすくなる。スーパーなどで購入できるものもあるため、有事に備えて準備しておこう。
家族間で集合場所を決めておく
さらに、家族が別々の場所で被災してしまったときのため、緊急時の連絡手段や地域の避難場所および避難経路を確認しておくことも重要だ。
いつ起こってもおかしくない地震。だからこそ、今のうちから地震への備えしておくようにしよう。