今年の台風19号は全国で多大なる被害をもたらしました。亡くなられた方やケガを負われた方も多く、少しの配慮で命を守ることができたかもしれないことを考えると、住まいに関する災害知識は不可欠だと改めて思います。

  • 災害大国ニッポンの家探し - これから家を買う前に知っておくべきこと

    災害大国の日本で、これから家を買う前に知っておくべきこと

FPの資格を取得してから、新聞を中心に災害関連の記事を切り抜いて保存するようにしています。見返してみると、その中には今回の集中豪雨の被害と同じ内容の記事も数多いほか、東日本大震災の被害を数年前に的確に想定したした記事もありました。災害大国の日本において、災害は決して対岸の火事ではなく、自分の身にも起こり得ることと自覚し、日ごろから防災について考える習慣が必要です。今回は、自分の身を守るための"城"とも言える"住まい選び"について、防災の観点から考えてみたいと思います。

住まいは生命と財産を守る器でなければならない

「生命と財産を守る器」、住まいの役割はこれにつきます。命と財産を守れない住まいは意味がありません。災害大国と言える日本では、どんなに安全と思われる地域でも、どんなに丈夫な住まいであっても、自然の猛威によって多大なる被害を受ける場合もあります。それでもできる限りの配慮でリスクを最小限にすることが、何よりも考えなければならないことなのです。

しかし実際には、新しく住まいを購入する際に、その土地のハザードマップを確認する人はどれほどいるでしょうか。ほとんどいないのではないかと思います。また、そもそもハザードマップすら万全ではありません。東日本大震災では、ハザードマップの外側に亡くなわれた方が集中してしまいました。「ハザードマップの外は安全」と思いこみ、ハザードマップが被害を大きく可能性すら考えられるのです。

東京都の東側は広大な利根川水系です。本格的に利根川水系の各川が氾濫したら、最大3~4階までもが浸水し、その状態が1~2週間続くと予測されています。5階以上しか安全ではないということになります。災害が年々大規模化していることを考えれば、ハザードマップ以上の災害も想定しなければならないでしょう。また今回の豪雨で西側の多摩川水系で氾濫が発生したことは記憶に新しいと思います。

災害には段階があります。水害を例にすれば、河川の広域氾濫もあれば、下水管から水があふれる内水という浸水もあります。私の住む場所も利根川水系ですので、洪水の危険はあります。しかし土地は内水回避のために土盛りが施されています。しかし、周囲のマンション群は後から建築されているにも関わらず、そのような配慮すらされていません。

住まいの購入を検討する際には最低限ハザードマップを確認し、インターネットで過去の災害を検索してみてください。地域の弱点が被害状況から読み取れるはずです。

住まいは災害で失ってはならない資産である

前述したように、住まいの役割は「生命と財産を守る器」ですが、同時に住まいは多大な資金を投与して獲得した"資産"でもあります。その資産が災害に対して脆弱な環境にあったり、脆弱な構造であったりして良いわけがありません。ほとんどが住宅ローンを借り入れているはずなので、住まいを失ったり損傷したりすれば、ローンだけが残るという最悪の事態も考えられます。数千万円の資産を守るために、購入前に災害チェックは是非行ってください。

また、"住まい選びはふるさと選び"でもあるということも考えてほしいです。東京を例にすると、周りの同年代の友人や同僚で「東京生まれ」「東京育ち」の方はどれぐらいいるでしょうか。「東京生まれ」だとしても、そのご両親はどうでしょうか。それほど多くはないでしょう。つまり、地方から移り住んできた方には「東京が故郷になる」という意識は低いように思います。

しかし、新しく住まいを購入するということは、その地域が自分の子どもたちにとって、まぎれもなく故郷になることを意味します。親は子どもの安全を確保すると共に、安全な故郷を与えなければなりません。子どもたちにとって近所の友人たちとともに成長し、その地域に根差して生きていくというのは幸せなことだと思います。グローバル化の時代ですので、同じ地域に住み続けるかどうかは誰にも分りませんが、少なくとも故郷になりうる環境は与えるべきだとは思います。

災害の種類と対策

災害には下図のようにさまざまな種類があります。社会環境が自然災害を誘発することもあり、自然災害が発生した際に「これは人災だ」という報道もよく見られます。

  • 災害の種類

しかし、災害の要因や対策の責務がすべて施政者にあるという考えを続けていると、肝心な自分で自分を守るための対策が遅れ、災害被害を大きくしかねません。基本的に自分の身を守るのは自分でしかありません。自分の命を自治体職員に任せて良いわけがありません。自治体の対策は重要ですが、自分でできる対策を万全にすることが何よりも大切なのです。