外科医でありながら、「オペ室より愛をこめて」などを執筆して漫画家としても活躍するさーたりさんによる連載「メディクショナリー」。言葉の意味は「medical」+「dictionary」ということで、さーたりさんが時にコミカルに、時に鋭く医療用語・略語を解説します。今回紹介するのは、胃薬にまつわる言葉です。
ドクターさーたりの解説
「胃が痛い」と病院に行くと、「じゃあ胃のお薬だしておきますね~」と処方される、いわゆる「胃薬」。そもそも胃痛の原因は一つではなく、どんな原因や症状かによって処方される薬も変わります。薬局で買える胃薬もたくさんあって何が何やら……という方も少なくないのではないでしょうか。
そこで、今回の「メディクショナリー」は(ちょっと独断と偏見も交えつつ)胃薬について紹介します。
健胃薬・消化薬
■健胃薬……「胃散」と呼ばれる粉薬で、さまざまな成分が配合されています。市販薬によくあるタイプです。効き目はマイルドなイメージ。昔ながらの薬が多く、薬価が安いものが大半です。SM散などが一例です。
■消化薬……消化酵素が配合されていて、消化不良時に使われます。慢性膵炎や膵臓の術後などにはたいへんお世話になります。エクセラーゼやベリチームなどが該当します。
消化管機能改善薬
胃の機能(動き)を改善する薬です。胃カメラをしても粘膜に異常がないけれど、症状がある場合などに処方します。ガスモチンやセレキノン、アコファイドなどが当てはまります。
消化性潰瘍治療薬
■攻撃因子抑制薬・胃液分泌抑制薬……胃液の分泌を抑制します。胃炎や胃潰瘍などに処方します。逆流性食道炎にも処方されます。PPI(プロトンポンプ阻害剤)やパリエット、タケプロン、H2ブロッカー(ヒスタミンH2拮抗薬)、ガスター、タガメットなどの種類があります。
制酸薬
胃酸を中和して胃粘膜を保護する薬です。マルファ、マーロックスなどが該当します。
そのほかに鎮痙剤や漢方などもあります。
以上、大変ざっくりとした説明なのですが、胃の薬は種類が多いうえに組み合わせて処方することも多く、症状や検査の結果などで処方する薬も変わってきます。
副作用も少ないですが、ないわけではありません。市販薬も多く販売されていますが、市販薬でも症状が変わらなければ消化器科を受診してくださいね!
参考文献: ポケット医薬品集(白文舎)
筆者プロフィール: さーたり
某大学病院勤務の消化器外科医。3児の母の生活、外科医の日常、漫画・アニメへの溢れる愛を描き散らしたブログ「腐女医が行く!!~外科医でママで、こっそりオタク~」を絶賛随時更新中。2016年5月にコミックエッセイ「腐女医の医者道! 」をKADOKAWAより上梓。また、Twitterもしており、アカウントは「@gogofujoy」。