相互直通運転は都会だけではない。JR伊東線と伊豆急行線は、温泉街の熱海と伊豆半島先端の下田を結ぶ。途中の伊東駅が境界線だけど、熱海駅から伊豆急下田駅まで、特急列車も普通列車も直通運転。まるで一体的な運用になっている。全線単線ながら特急列車が走り、展望車両「リゾート21」が普通列車として運行されている。列車ダイヤを色分けして、特急列車と「リゾート21」の追い越しや列車交換の様子を探ってみよう。
今回は「JTB時刻表」6月号を参考とし、列車ダイヤ描画ソフト「OuDia」に時刻データを入力した。「JTB時刻表」も伊東線と伊豆急行線を一体的にとらえて同じページに掲載している。しかし、ライバルの「JR時刻表」は東海道本線東京~熱海間のページにぶら下がる形で掲載。東京から伊豆へ行く場合に便利だけど、伊豆急行の時刻は主要駅のみ。巻末の社線ページにも掲載されていなかった。両者の時刻表を比べると、意外と違いがあるものだ。
伊東線・伊豆急行線は休日に特急列車が増える。普通列車は伊豆急行線内で休日に夕方の1往復が減るだけだ。そこで、平日ダイヤに土休日運行、夏の臨時特急を描き加えた。夏休みの休日は、このダイヤのほぼすべての列車が走ると考えて良い。
赤い実線が特急「踊り子」だ。東京駅と伊豆急下田駅を結んでいる。赤い点線は「スーパービュー踊り子号」だ。こちらは東京行と湘南新宿ライン経由がある。オレンジ色は臨時特急で、実線は「踊り子号」、点線は「スーパービュー踊り子号」となる。青い線は普通列車で、伊豆急行の観光車両「リゾート21」を使用する列車だ。普通運賃だけで先頭車は展望席、中間車は海に向いた座席となる。とってもお得だ。
行楽シーズンの日中は特急だらけ。東京駅を午前中から夕方にかけて出発し、午後から夜にかけて東京駅に戻ってくる。旅行客の需要に合わせると、伊豆急行線内はちょうど日中の発着となる。普通列車は早朝から深夜まで、ほぼ等間隔で走る。通勤通学時間帯の増発はない。ただし、日中は特急が増えるため、普通列車の運行は減る。日中に比較すると朝夕の普通列車が多いともいえる。時間帯によって普通列車と特急列車の棲み分けができている。単線で列車のすれ違い設備を考えると、これ以上の増発は難しそうだ。
全線単線で運行本数が多い。さて、特急列車が普通列車を追い越す場面はあるだろうか? 日中の下り列車を見ると、追い越しは設定されていない。普通列車が少ない時間帯は、伊東発伊豆高原行の普通列車を設定し、運行間隔を維持している。
同じ時間帯の上り列車を見ると、伊豆高原駅で休日運転の「踊り子」、毎日運行の「スーパービュー踊り子」、臨時「スーパービュー踊り子」の追い越しがあった。追い越す列車に乗るなら「スーパービュー踊り子」がおすすめだ。使用車両の251系は先頭車が展望車両で、伊豆急下田方面がグリーン車、東京・新宿方面が普通車指定席。上り先頭車は下り先頭車に比べて低料金で、しかも伊豆高原駅で追い越しを見られる。
すれ違う列車を楽しみたいなら、青い線の「リゾート21」車両がおすすめ。線をたどってみると、熱海駅12時27分発と13時40分発、伊豆急下田駅発11時47分発と14時49分発に乗れば、「踊り子」「スーパービュー踊り子」「リゾート21」のすべてとすれ違う。
ただし、風景も含めたおすすめは熱海発伊豆急下田行のほうだ。海に向かって走るから、前方に水平線が見える区間がある。列車ダイヤを携えて、夏の海の車窓とリゾート列車を楽しもう。