投資の初心者が知っておくべきこと、勘違いしやすいことを、できるだけ平易に解説しようと思います。為替レート、株価、金利など、過去の相場を知ることは投資判断に役立つはずです。今回は、米国株式相場の歴史を取り上げます。

  • 米国株式相場の歴史を知る(写真:マイナビニュース)

    米国株式相場の歴史を知る

長期投資で良好なパフォーマンスと言えば、米国株が思い浮かぶのではないでしょうか。米国株で最も有名な指標といえば、ダウ工業株30種平均です(以下、NYダウ)。

2000年以降、NYダウは日経平均の2倍のパフォーマンス

ブルームバーグによれば、NYダウは2000年末から今年7月8日までの18.5年間に約2.5倍になっており、年平均の上昇率は5.0%。これに配当を再投資していれば、トータルリターンは年7.6%でした。日経平均はそれぞれ1.5倍、2.4%、4.0%なので、NYダウは日経平均の2倍近いパフォーマンスでした。この間に米国の名目GDP(国内総生産)は約2倍になっており、日本の名目GDPはわずかに5%増えただけなので、日米の経済成長力の格差が株価のパフォーマンスの違いをほとんど説明していると言えそうです。

NYダウの仕組み

米国株式相場の歴史を詳しくみる前に、NYダウの仕組みについて解説しておきましょう。

NYダウは主要30銘柄の株価の平均です(※)。ただ、株式分割があっても連続性が保たれるように、30銘柄の株価の合計を割る除数を調整しています。つまり、最初の除数は30でしたが、組み入れ銘柄の株式分割が行われるたびに小さくなり、現在は0.15程度です。1銘柄の株価が1ドル変動するだけで、NYダウは7ドル(≒1÷0.15)近く変動するということです。また、銘柄の入れ替えによっても除数は変化します。

(※)これに対して、主要500銘柄で構成されるS&P500は時価総額を基にした指数として算出されます。

NYダウを構成する銘柄の株価が高いほど、存在感は大きくなります。たとえば、本稿執筆時点(7月30日)におけるボーイングの株価は約350ドルで、コカ・コーラは約50ドルでした。NYダウに占めるウェートはボーイングが約9%であるのに対して、コカ・コーラは1.3%しかありません。どちらの株価も1ドル変動した時のNYダウへ与える影響は約7ドルで同じです。一方で、同じ比率だけ変動した場合、NYダウへの影響は、ボーイングがコカ・コーラの7倍近くあります。

NYダウは30銘柄で米国を代表

米国の株価指数には、S&P500や、IT企業や新興企業を中心に3,000社以上が含まれるNASDAQ指数などもあります。それでも、NYダウが最も有名であり、たった30銘柄でも米国の経済状況や株価動向を正しく反映しているとされます。その理由の一つは、最新の経済情勢を反映するように絶えず銘柄の入れ替えが行われているため。1928年に30銘柄になった時から残っている企業は1-2社しかないようです。現在の30銘柄のうち、アップルなど12銘柄が2000年以降に組み入れられました。

NYダウは過去60年間に年6.4%上昇

さて、NYダウは1959年から現在までの約60年間でみても、年6.4%上昇しており、まさに長期の資産運用に適した金融商品と呼べそうです。ただし、米国株式のパフォーマンスが常に良好だったわけではありません。

17年間の「株式の死」

NYダウは1966年2月に初めて1,000ドルに限りなく接近しましたが、1,000ドルを明確に抜けたのは1983年になってからでした。この時期は「株式の死」と呼ばれ、NYダウは約17年間も足踏みを続けたのです。背景にあったのは、ベトナム戦争の泥沼化、米国経済の疲弊、二度の石油ショックやそれによる高インフレと高金利でした。

ブラックマンデー

1987年10月19日の株暴落は「ブラックマンデー(暗黒の月曜日)」と呼ばれ、世界大恐慌へとつながった1929年10月24日の「暗黒の木曜日」の再来が懸念されました。ブラックマンデーでは、NYダウの1日の下落幅は508ドルと、現在の株価変動からみればさほど大きくはありません。しかし、下落率は22.6%で、現在に至るまでダントツの1位です。これには、米国の「双子の赤字(財政赤字と経常赤字)」や国際協調の失敗が背景にあり、コンピュータによるプログラムトレーディングが下落に拍車をかけたとされています。

IT株バブル崩壊

2000年のIT株バブル崩壊では、IT株を多く含んだNASDAQ(ナスダック)指数が急落。2002年10月までの約2年半で同指数は8割近く下落しました。ほぼ同じ期間にNYダウも4割近く下落しており、決して浅い傷ではありませんでした。

リーマンショック

2008年9月のリーマンブラザースの破たんに端を発した金融危機、いわゆるリーマンショックでは、NYダウが40%超下落しました。もっとも、「100年に一度の経済危機」と形容された割には、米国だけでなく多くの国が大胆な危機対策を打ち出したこともあって、ショックからわずか半年後にNYダウは底を打ちました(ただし、ショック前の高値は2007年10月であり、そこから1年5カ月後に底打ちするまで50%超下落しました)。

2015年のチャイナショック以降

その後、2015年8月のチャイナショック(中国人民元の切り下げ)、2016年初の2度目のチャイナショック(人民元安)、2018年初の米長期金利の大幅上昇、2018年末の景気減速懸念などを背景として、NYダウは調整局面を迎えました。

ただ、その度にNYダウは比較的短期間で反発し、ごく最近に高値を更新するに至っています。こと米株に関しては、「下がったら目をつぶって買う」の投資方針が機能してきました。もちろん、それは単なる結果論であって、今後も同じ投資方針が機能するとは限りません。

  • NYダウの推移

    NYダウの推移

執筆者プロフィール : 西田 明弘(にしだ あきひろ)

マネースクエア 市場調査室 チーフエコノミスト。1984年、日興リサーチセンターに入社。米ブルッキングス研究所、三菱UFJモルガン・スタンレー証券などを経て、 2012年にマネースクウェア・ジャパン(現マネースクエア)入社。「投資家教育(アカデミア)」に力を入れている同社のWEBサイトで多数のレポートを配信(一部は口座をお持ちの方限定で公開)する他、投資家のための動画配信サイト「M2TV」でマーケットを日々解説。