一説によると、日本人の「うつ」率は17.3%。これは約15人に1人が生涯に一度は「うつ」を経験するということなのだそうです。このようにメンタルの不調に対する社会の理解が進むにつれ、それを理由に会社を休職する人も増えています。心の不調や病は体のように目で見ることやデータで測ることが難しく、本人にしかわからない部分も多々あり、医師の診断書があれば、ブラック企業ならいざ知らず、会社側が休職にノーを言うことはできないと言っていいでしょう。
ゆっくり休んで心の健康を取り戻し、社会復帰する。これ自体は問題ありません。壊れてしまうまで無理をするより、むしろ適切な行動だと言えるでしょう。しかしながら困ったことに、この「病気の回復に努めるための」休職中に、不適切行動をやらかす社員がいるのも事実なのです。正直申し上げて、「もう無理です……」と今にも倒れそうな様子で診断書と休職願を提出した社員が、解放されてヒャッハーとばかりに遊んでいる姿をSNSに投稿なんていうのは、私たち調査員はもう驚きません(もちろん、それも会社から見れば、不適切行動ですが……)。しかしそんな調査員でも、言葉を失うケースがあります。
メンタル不調で自宅療養中のはずが、海外でキラキラしているのはなぜ⁈
インスタグラム、TikTok、LINEのタイムライン、Facebook、Twitter。病気で欠勤したり休職したりしている人が、そういったSNSに友人や彼氏彼女と楽しく遊んでいる姿をあげているというパターンは何度も見ました。場所は、繁華街であったり、誰かの家であったり、時にはアウトドアを郊外で楽しんでいることもあります。彼氏とTDRに旅行していた方、友人とダイビングしに沖縄の離島に行っていた方もいました。しかし、海外に出かけている、しかも長期となると、さすがに予想の範囲を大きく上回るのではないでしょうか。
人材派遣会社でアシスタントとして勤務していたOさんは、メンタルの不調を理由に休職を開始、上司や先輩からの連絡へのレスポンスもほぼないまま、数か月が経過していました。「本当に具合が悪くて、返信もできないのだろうか……」と思っていたところ、なんとOさんが東南アジアの某国で“沈没”(※)しているという情報が入ってきました。
※沈没とは、バックパッカーなどの旅行者が、一ヶ所に長期滞在しダラダラすることです。
確かに、メンタルの不調は感染症ではありませんから、休職中は外出してはいけないという決まりはありません。家でのんびり休むのも、旅先のホテルでダラダラするのも、何が違うと言われれば確かにそれはそうなんですが……さすがに海外となると、皆の頭の中には、「その国に身内でもいるの?」と疑問が湧いてきます。そして、OさんのSNSには、ルーフトップでカクテル、ホテルのアフタヌーンティー、プールサイドでブランチといったキラキラ投稿がいくつも並んでいたのです。その中には、テキパ(テキーラパーティー)や現地のクラブなど、派手な夜遊びを示唆するような投稿も。それを見た上司はOさんに「どういうことですか? もう体調は良いのでしょうか? いつ頃復職できそうか、目途を教えてもらえますか?」と連絡を入れました。ところがOさんからは2日後に、「まだ体調がすぐれないので、もう少し休職します。申し訳ありません。」とだけ返信がきたのです。
休職中に求職して、してはいけないバイトもしていた彼女のメンタルが強すぎる
調査の結果、Oさんには他にもいくつかのSNSアカウントがあり、いわゆる裏アカも持っていましたが、その裏アカの投稿やリプ欄のやりとりですべてが明白になりました。Oさんは以前から旅行でその国に何度も渡航しており、移住を希望していたのです。そのため現地で求職活動を行っており、調査報告時点では既に某社から内定が出ていました。
在職中に転職活動をすること自体は問題ありませんが、「休職」中に転職活動のために海外に行っていたとすれば事情が異なってきます。さらに3つの不適切行動も発見されました。
1.Oさんは業務上知りえた情報をコピペして私物化し、転職活動を行っていた。
2.転職が決まるまでの間、現地の日本人キャバクラで働いていた。不法就労の可能性。
3.そのキャバクラの顧客を相手にパパ活をしており、それが例のキラキラSNSの内容であった。
もともとOさんは金銭面や仕事の進め方においてもムダのない、「ちゃっかり」という言葉がぴったりなキャラクターではありましたが、「求人会社の休職中に求職しつつナイトワークで給料GET」という、大胆かつ抜け目のない行動には驚かされました。しかしそんなOさんもSNSの管理に関しては、実に脇が甘かったようです。