調査をしていると、様々な人間模様に出会います。また企業だけでなく社会の現実と言いましょうか、人の裏の顔というものを見る機会が多く、満員電車の中で、「この人たちも〇〇してるのかもしれない」と考えてしまうことがあります。

調査で“ついでに”不倫が出てくることは日常茶飯事

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たとえば「不倫」というのは当事者たちにとっては大事件であり、特に配偶者の浮気を知った夫または妻にとっては青天の霹靂です。ショックで頭が真っ白になったと言い、「まさか、自分がこんな目に遭うなんて」と感慨深げにおっしゃる方が多いです。ところが、調査員にとっては、不倫はまったく珍しくありません。こんなに世の中には不倫、あるいはダブル不倫をしている人が多いのかというのが感想です。他の件で調査対象になっても、調べると不倫していることが「ついでに」出てきたりすることは割と日常茶飯事なのです。

しかしそんな調査員でも今回は驚きました。女性社員Aさんによる情報漏洩の疑いは、なんと片手に余る数の男性との社内不倫、彼女自身の経歴詐称、そして魔性の経歴を明らかにしたのです。

課長と先輩社員に隣の課のエースまで!? “魔性の女”に転がされた社員たち

ことの発端は、社内で開催された新事業案コンペでした。最近営業成績が思わしくない営業4課のあるチームが、全員一丸となり、素晴らしいアイデアを練り上げました。何度も何度も計画を練り直し、残業を厭わず作り上げた、いわば血と汗と涙の結晶。ところがあろうことか、ほぼそっくりそのまま同じ企画が、さらにブラッシュアップされた形で、隣の営業3課のあるチームから発表されたのです。誰かがスパイ行為を行ったことは、間違いありません。震えながら詰め寄る4課の社員と3課の社員の間で一触即発の空気が流れました。

その場はなんとか収めたものの、営業4課のそのチームはすっかり意気消沈し、何とも後味の悪いコンペとなってしまいました。営業3課は営業成績もダントツで、将来の幹部候補と期待される営業部のエースがいます。そのため、4課の課長としては大ごとにしたくない様子でした。しかしこれは倫理上、見逃すわけにいかない行為です。誰がどうやってデータを盗んだのか。チームの主要メンバーは、密かに調べ始めました。そこで浮上してきたのが、営業4課の女性社員Aさんです。

Aさんは男女関係の噂も多く、Aさんをめぐって男性社員同士が社員食堂で喧嘩になったこともあったとか。そのAさんが、3課の件のエース社員(既婚)と不倫しているようだという情報が、Aさんの先輩にあたるチームメンバーから入ったのです。

当初は煮え切らない態度の課長でしたが、Aさんが不倫相手に情報漏洩したのではないかという話を聞き、重い腰をあげました。なぜなら、4課では半年前にも「重要な書類」が消失するという事件があり、その結果、大きなプロジェクトが4課から3課に移管されたことがあったのです。

各方法により調査を行った結果判明したのは、何ともお粗末な話でした。Aさんは男性の心をつかむテクニックを駆使し、8人の男性と交際していました。その中には3課のエース社員のみならず、「Aさんとエース社員が怪しい」と密告した先輩社員、さらに4課の課長もいたのです。もちろん全員既婚者ですから、Aさんとは不倫関係になります。全員、同じ穴の何とやら……。それにしても、男性全員、自分が唯一の本命だと思っており、事実を知り衝撃を受けていたというのですから、何ともおめでたいというべきでしょうか。

退職理由を隠すために経歴詐称、その理由もやはり……

調査過程で、「ついでに」明らかになったことは、8股不倫だけではありません。Aさんは数年前に紹介予定派遣で入社してきましたが、経歴詐称していたことも発覚しました。経歴詐称自体はそれほど悪質なものではなく、①2社(B社、C社)が省かれていた、②その省いた時期が長いブランクにならないよう、前後の職歴について退社、入社の時期を改ざんし眺めにていた というものです。しかしながら、当時の同僚やフォロワーまで辿るといった徹底したSNS調査をした結果、その改ざん理由が、やはり社内不倫であったことがわかったのです。

Aさんは、以前の職場でも複数の男性と社内不倫していました。B社だけでなく他の職場で働いていたときも、不倫していたことはSNSから読み取れましたが、いわゆるイケメンが多いとされる業界のB社では、奔放に複数の既婚男性と浮名を流すだけでなく、相当本気になってしまったようで、相手の配偶者が会社に訴える、弁護士が会社に訪ねてくるといった修羅場を経験しています。それが理由で、相手の男性もAさんも自主退職という形ではありますが、職場を追われてしまったのです。

さらに短期間アルバイトとして働いていたC社の時には、Aさんを巡るさや当てがこじれて、なんと男性間で暴行、傷害事件に発展していたのです。しかも職場でです。Aさんが気まずい立場になったことは想像に難くなく、そのあとしばらくして退職しています。

これだけのことがあれば、もう不倫はやめよう、少なくとも多数並行しての不倫はやめようとなりそうなものですが、そうならないどころか、魔性の女「ヤマタノオロチ」に進化してしまったAさん。同じ部署の中で複数の男性と付き合っていながら、相手の男性は気付いていなかったというのですから、開いた口がふさがりません。ここまでくると、魔性の女の“業”を感じます。

今回は、社内コンペという舞台が事件の発端でしたが、これが社外であればどうでしょう。取引先、競合他社の営業マンが来訪することは少なくなく、実際、調査員の姪も、出入り業者の営業マンと恋愛結婚の上結婚いたしました。Aさんが自社の社員で、社内の機密事項や顧客情報を社外に漏洩していたら……と考えると、ゾッとする経営者や管理職の方は少なくないのではないでしょうか。

芋づる式に次々と明るみに出た、魔性の女性社員の問題行動、嘘、黒歴史。このように一つの疑惑や問題行動から、調査を経て、次々ともっとリスクが高い事実が飛び出してくることは少なくありません。